芒種(ぼうしゅ)とは二十四節気の1つ
芒種(ぼうしゅ)とは1年を24に分けた二十四節気のひとつです。1つの節気は約15日から成るため、芒種も約15日間を指します。
芒種は立春から数えて9番目の節気です。なお、二十四節気は立春、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨、立夏、小満、芒種、夏至と続き、旧暦の年末である大寒で終わります。年によっても異なりますが、芒種は6月6日ごろから始まり、21日ごろに終わって、翌日が夏至となります。
芒種の初候・次候・末候
二十四節気は、3つの「候」に分けられます。早い順に初候、次候、末候と呼び、それぞれ約5日から成ります。ひとつの節気に3つの候があるため、候は全部で72です。これを七十二候と呼び、より細かな季節区分として用います。
候にはすべてその時期を表す名前がつけられています。芒種の初候は「螳螂生(かまきりしょうず)」、次候は「腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)」、末候は「梅子黄(うめのみきばむ)」です。カマキリの子やホタルが生まれる、梅の実が色づくなど、初夏らしい生命力にあふれた時期が続きます。
芒種の由来
芒種の「芒」は「ノギ」と読み、イネ科の植物に見られる針状の突起を指します。米などのノギのある植物の種をまく時期という意味から、「芒種」と名前がついたとされています。
実際に芒種の頃は、田植えで忙しくなる時期です。また、同じくノギのある麦に関しては収穫の時期でもあります。農業を営む方にとっては、作業量が多く、身体的にも疲労が重なる時期といえます。
芒種の行事
芒種は田植えの時期のため、全国各地で豊作を祈願する祭りがおこなわれます。たとえば、伊勢神宮の別宮である「伊雑宮(いざわのみや)」では、「磯部の御神田(いそべのおみた)」と呼ばれる豊作祈願の神事が実施されます。
ほかにも、京都伏見稲荷大社では「御田舞(おんだまい)」、同じく京都の下賀茂神社では「御田植祭(おたうえまつり)」、大阪の住吉大社では「御田植神事(おたうえしんじ)」などが有名です。ぜひ地域の豊作祈願のお祭りもチェックしてみましょう。
また、芒種が始まる時期とも重なる行事として「稽古始め」が揚げられます。稽古始めとは、6歳の6月6日にお稽古を始めると上達しやすいという言い伝えのことです。日本舞踊などでは、現在でも6歳で入門し、芸事の上達を願うことがあります。
芒種の頃に見頃を迎える花
アジサイは、芒種の頃に見頃を迎える花です。アジサイは雨に濡れるとより一層風情が出て美しくなりますが、芒種の頃は梅雨時期でもあるため、いつも以上に趣のある様子を楽しめます。
アジサイの特徴として、土壌によって花の色が変わることが挙げられるでしょう。同じ株のアジサイでも、土に含まれる成分によって淡い水色から濃い紅色、赤紫などの多彩な色に変化します。なお、ハイカラな印象のあるアジサイですが、歴史は古く、万葉集にも名前が出てくる日本古来の植物です。
また、芒種の頃は、キキョウも見頃を迎えます。キキョウは見頃の時期が長く、芒種から秋までつややかな紫色の花を咲かせます。キキョウも歴史が古く、万葉集の時代から歌にも詠まれてきました。秋の七草のひとつともされ、日本の夏から秋を彩る美しく可憐な花として知られています。
芒種の頃に味わいたい食べ物
芒種の頃は、花々だけでなく野菜や魚なども旬を迎えます。おいしくなる食べ物や季節感あふれるお菓子を紹介します。
トマト
トマトといえば夏野菜のひとつで、7月~8月に収穫量が増え、スーパーなどでも大玉のものが並ぶようになります。しかし、味に注目すると、芒種の頃がおいしいというのが定説です。大振りすぎない実には濃厚な味がつまり、スライスするだけでも、まるでフルーツのような芳醇な果汁があふれ出します。
トマトはそのまま食べてもおいしい野菜です。一口大に切ってガラスの器に盛り付ければ、それだけでも簡単で見た目の美しいオードブルになります。ひと手間加えるのであれば、オリーブオイルを垂らすのもおすすめです。色鮮やかなグリーンがまぶしいエキストラバージンオリーブオイルなら、トマトの赤色とのコントラストがキレイに映えるでしょう。
また、果肉が固めのときは、三温糖などの砂糖を少しかけるのもおすすめです。ふんわりとしたやさしい味わいになり、トマト特有の青臭さを抑えられます。
キス
くせのない白身魚として人気のキスも、芒種の頃に旬を迎える魚です。新鮮なキスは身に透明感があり、マリネやてんぷら、塩焼きなどどんな調理法でもおいしく食べられます。
旬のキスを味わうなら、淡白な味わいを酢の酸味で補うマリネがおすすめです。キスに軽く塩コショウを振り、片栗粉でまぶしてから、170度程度の中火で揚げましょう。あまり油の温度が高くなると、キスの白い色が映えません。
油をしっかりと切ってから、千切りした玉ねぎとニンジンに、酢とサラダ油、砂糖が5:2:1になるように合わせたマリネ液に漬け込みましょう。味が馴染んだらできあがりです。
アジサイの和菓子
芒種の頃になると、和菓子店ではアジサイの生菓子が販売されます。淡い紫や青に色付けしたゼリーを7mmほどの立方体に切り、練りきりの周りに押し固めたものや、栗きんとんを青く色づけして飾り付けたものなど、和菓子店ごとの工夫が披露されます。ぜひ新茶とともに味わってみてください。
美しい季節を楽しもう
芒種の時期は、梅雨の時期とも重なるため、気持ちもブルーになってしまうことがあります。しかし、花や野菜、虫たちに目を向ければ、夏の始まりとともに生命力が高まり、美しさに輝いている時期でもあります。
この時期にしか楽しめないアジサイやキキョウを見に、少し足を伸ばしてみるのもよいかもしれません。美しい芒種の時期を楽しみ尽くしてください。
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