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「緑青」とは緑色の錆(さび)のこと
「緑青(ろくしょう)」は、銅合金に発生する錆(さび)の一種です。「ろくしょう」と読み、漢字の通り青緑色の錆を表します。
また、緑青は人体に害のない錆だといわれています。まずは、緑青が発生する理由や安全性などについてみていきましょう。
ろく‐しょう〔‐シヤウ〕
出典:小学館 デジタル大辞泉
銅または銅合金の表面に生じる緑色のさび。空気中の水分と二酸化炭素の作用により生じるものは塩基性炭酸銅CuCO3・Cu(OH)2で、古くから緑色顔料として利用。硫黄化合物を含む環境下では、その酸化物がさらに酸化された塩基性硫酸銅CuSO4・3Cu(OH)2を生じる。石緑 (せきろく) 。あおさび。銅青。
緑青が発生する理由
緑青は、銅が長期間大気にさらされることで自然に生じるものです。
銅が空気中の水分や二酸化炭素に反応すると、「酸化銅」と呼ばれる赤褐色の錆が表面にできあがります。さらに時間が経過すると、酸化銅の上を青緑色の緑青が覆っていきます。
鉄に生じる赤錆は内部をボロボロに腐食しますが、緑青はそのようなことはないのだとか。銅の表面に硬く付着し、内部の腐食を防ぐ役割をもつといわれています。
緑青は毒性がない錆
昭和の時代、緑青には毒性があるといわれていました。現代は研究が進み、緑青は毒性がなくほぼ無害であることが判明しているようです。
ただし、緑青が付着した調理器具をそのまま使用するのはおすすめしません。緑青が食べ物に移ったり、不快な金属臭を感じたりする可能性があるためです。
銅製の調理器具は熱伝導に優れ、正しく手入れすれば長持ちするといわれています。傷をつけると緑青の原因となるため、洗う際はスポンジでやさしく汚れを落とし、水分をしっかり拭き取ってから保管しましょう。
参考:社団法人 日本食品衛生協会「緑青(塩基性炭酸銅)の毒性」
緑青の落とし方
発生して間もない緑青は、やわらかい布で拭き取るだけで落ちる場合があります。
時間が経って固着しているときや、軽く拭くだけでは落としきれないときは、以下の方法を試してみてください。

酢と塩を使った緑青の落とし方
まず、酢と塩を1:1の割合で混ぜ合わせます。塩が完全に溶けるまでかき混ぜたら、液体を布にふくませ、緑青を拭き取りましょう。
緑青がしっかりと付着しているものや、アクセサリーのような小さなものは、液体に直接漬け込むのも一つの方法です。
緑青が落ちたら中性洗剤でやさしく洗い、水分を拭き取り、しっかりと乾かします。
重曹を使った緑青の落とし方
重曹の粒子には、研磨作用があるといわれています。また、粒子がやわらかく物を傷つけにくいことが特徴です。
緑青を落とす際は、重曹と水を1:2〜1:4の割合で混ぜ合わせます。ペーストができたらスポンジや歯ブラシを使って、緑青部分をやさしく磨きましょう。磨いた後は水で洗い流すor水拭きし、水分をしっかりと拭き取ってから乾かします。
ただし、製品によっては微細な傷がつく可能性があります。そのため、多少の傷は気にならない製品や、酢のにおいが気になる場合などに試してみるのがおすすめです。
悪いことばかりじゃない? 緑青の魅力
緑青の発生は、悪いことばかりではありません。見た目は変化するものの、銅の表面を覆う緑青は内部の腐食を防いでくれるとされています。
また、時間をかけて赤褐色を緑色へと変化させる緑青は、ときに高く評価されることも。ここでは、緑青の魅力について探っていきましょう。

金属の腐食が防げる
緑青は、金属の表面を覆うように発生し、金属と空気との接触を遮断します。そのため、金属と空気中の成分の接触による腐食の心配がないのだとか。
国内外の歴史ある銅像も、緑青によって当時の姿が守られています。日本の「鎌倉大仏」や、アメリカの「自由の女神像」がその一例です。
完成当初、鎌倉大仏は金箔で覆われ、黄金色に輝いていたといわれています。また、自由の女神像は光沢のある銅色だったようです。
いずれも年月とともに緑色へと変化したものの、緑青のはたらきもあり、現代も当時の姿を保っています。
年月がもたらす美しい風合いが楽しめる
緑青の独特な風合いは、ときに美術品の価値を高める一助に。緑青があることで、アンティークとしての存在感が増すこともあるでしょう。
また、現代は「青銅仕上(緑青仕上)」と呼ばれる塗装技術が存在します。これは、人工的に短期間で緑青を発生させ、艶消しのクリア塗装を施す手法です。
自然がもたらす変化を手をかけて再現していることからも、緑青の美しさが世の中で認められていることがわかるといえるでしょう。
2025年の流行色は「ホライゾングリーン」
2025年の流行色は、青みを帯びた緑色「ホライゾングリーン」です。前年の12月「一般社団法人 日本流行色協会(JAFCA)」より発表されました。

ホライゾングリーンは、深い森の樹木や豊かな海など、壮大な自然を思わせるカラーです。選定の背景には昨今の世界情勢が関係しているとされます。
自然災害や紛争など、近年は人々に不安をもたらす事象が多々発生しています。混沌とした世を冷静なまなざしで見つめ、その先にある希望を感じてほしいという思いから、今回のカラーは選ばれました。
また、日本にはホライゾングリーンと似たトーンの「緑青色(ろくしょういろ)」が古くから存在します。緑青色もまた、自然の木々や空を思わせる色です。幸運や平和を象徴する色として、奈良時代から仏像や仏画に用いられてきました。
2025年は、ネイルのトレンドカラーにも青みを帯びた緑色が挙げられています。
グリーンの濃淡でまとめてさわやかに、ピンクやブラウンをあわせて華やかになど、ぜひ流行色を取り入れたファッションを楽しんでみてください。
自然の色「緑青色」を生活に取り入れてみよう
緑青は銅に発生し、金属の腐食を防ぎます。体に害はありませんが、アクセサリーや調理器具などに発生した場合は、早めのお手入れがおすすめです。酢や塩、重曹などを使えば、きれいな状態のキープに期待もできます。
また、自然がもたらす緑青色は、ときに美術的な価値を有すことも。2025年は、青みを帯びた緑色「ホライゾングリーン」が流行色に選ばれました。
日本では、幸運や平和の象徴として古くから緑青色が用いられています。緑青の意味や発生理由などを押さえ、自然の色である緑青色を生活に取り入れてみるのもよいでしょう。
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