目次Contents
この記事のサマリー
・「郷に入っては郷に従え」の意味は、「その土地や集団に入ったなら、その土地の習慣やルールに従うべき」。
・英語で対応する言葉は “When in Rome, do as the Romans do.”。
・「従え」と他人に押しつける使い方はNG。自分の姿勢を語るときに使うのがマナー。
「郷に入(い)っては郷に従え」、一度は耳にしたことがあるこのことわざ。けれど、いざ意味や由来を聞かれると「なんとなくわかるけど…」と答えに詰まってしまう人も少なくないのでは?
実はこの言葉、ただの古めかしい表現ではなく、現代の職場やグローバルな環境でも役立つ「柔軟性」と「共感力」の象徴でもあります。
この記事では、語源から実用的な使い方、英語での表現方法まで、知っておくと自信が持てる知識をまるごと解説。SNSや日常会話でも気の利いた表現として活用できるよう、例文や言い換え表現も豊富に紹介します。ぜひ保存版として活用してください。
「郷に入っては郷に従え」とは? 意味と由来まで丁寧に解説
このことわざ、よく聞くけれど実は正しく説明できない… そんな人も多いはず。まずは意味・由来を確認し、正確な理解を深めましょう。
意味と使い方を簡単に解説
「郷に入っては郷に従え」とは、その土地や集団に入ったなら、その土地の習慣やルールに従うべきだという意味です。辞書では次のように説明しています。
郷(ごう)に入(い)っては郷(ごう)に従(したが)え
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
その土地に住むにはそこの風俗・習慣に従うのが処世の術である。
[補説]「郷に入(い)りては」の音便化であるから、「はいっては」とは読まない。また、「郷に行っては郷に従え」とは書かない。
例えば、転職先の会社や海外旅行先で、その場のマナーやルールに柔軟に合わせることが求められる場面でよく使われます。
筆者自身、新卒で入社した企業で「郷に入っては郷に従え」と言われ、戸惑った経験があります。当時は「自分のやり方を変えろってこと…?」と反発心を覚えたものの、よく考えれば相手を尊重する姿勢を示すための、大切な価値観だと後に気づきました。
ただし、誤解されがちなのが「何でも周囲に合わせればいい」という意味ではない点。適応する力と、自分の軸をどう両立するかがこのことわざの奥深さです。
由来は?
「郷に入っては郷に従え」の語源としては、『荘子‐山水』の「入其俗従其俗」などの表現が入ってきたものだとされています。その後、寺子屋で使われた「童子教(どうじきょう、教科書のこと)」によって広く知られるようになったそうです。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)

英語表現は?
「郷に入っては郷に従え」は、英語で“When in Rome, do as the Romans do.”(ローマにいるときは、ローマ人のするようにせよ)と表現されます。
この言葉は、4世紀に活躍したミラノの司教アンブロジウスが説いた教えに由来するとされています。当時、キリスト教会では、ミラノでは金曜日、ローマでは土曜日を安息日にしていました。どちらにすべきか問題となったときに、ミラノの司教の聖アンブロシウスが答えた書簡の言葉に由来します。
新しい土地や文化に身を置くときは、その地の習慣に敬意を払い、柔軟に適応することの大切さを示しています。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)

現代の職場やSNSでどう使う? 実用シーン別の活用例
このことわざ、現代社会ではどう活用できるでしょう? 職場・学校・SNSなど、リアルなシーン別に「使いどき」を紹介します。
仕事・職場での使用例|新しい部署・転職先で
例えば、異動や転職で新しい職場に入ったとき。これまでのやり方や常識が通用しない場面に戸惑うこともあるでしょう。そんなとき、「郷に入っては郷に従え」ということわざは、「まずはその場所のルールや空気感に耳を傾ける姿勢」を示すために有効です。
例:「前職では全員チャットでやりとりしてたんだけど、今の職場は電話が基本。郷に入っては郷に従え、でまずは慣れていくことにした」
SNS投稿に活かせる「小粋な引用例」
SNSでは、ことわざを「自分の気づき」や「日々の学び」に添える形で使うと知的で好感度の高い投稿になります。例えば、旅先での文化の違いや、初めてのイベント参加時など、軽やかに引用してみるのはいかがでしょう。
例:「オンライン会議、既存のメンバーがカメラオフならこちらもオフにするのが暗黙の了解。こういうときこそ『郷に入っては郷に従え』だなあ。」

「郷に入っては郷に従え」に関するFAQ
ここでは、「郷に入っては郷に従え」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1:このことわざはどんな場面で使えばいいの?
A:新しい環境や集団に入ったときに、その土地や組織の文化に合わせるべきだと伝えたい場面で使います。
Q2:NGな使い方は?
A:「郷に入っては郷に従え」を相手に押しつける形で使うのはNGです。
例えば、新しく入ってきた人に「うちのやり方に従えよ」というような場面では、上から目線で支配的に響くことがあり、トラブルの原因にもなり得ます。
あくまで自分の姿勢として使うことがマナー。相手に配慮を促す場合は、もっと丁寧な言い回しを選びましょう。
最後に
大切なのは、ただ従うのではなく、相手の文化や背景に敬意を払いながら、自分自身の考え方や振る舞いを少しずつチューニングしていくこと。そうすることで、新しい場所でも自然体でなじみ、心地よい人間関係を築いていくことができるはずです。
言葉の意味を知るだけでなく、どのように使うかまでを意識することで、日常のコミュニケーションはもっと豊かに、そして知的に変わるのかもしれませんね。
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