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「せっかく転職できたから、自分の知見で会社に貢献したい」。新しい環境に置かれた際、今まで自分がやってきたことを活かしたい、そう思う方も多くいらっしゃると思います。はやる気持ちは理解できますが、まずは、郷に入っては郷に従え。その場のやり方を尊重しましょう。今回は、その意味や読み方、英語表現を紹介します。
郷に入っては郷に従えの意味や読み方は?
郷に入っては郷に従えは、よその土地へ行ったら、その土地の風習を尊重し、それに従うのが良い。他郷に自分の国のやり方を持ち込んでもうまくいかない、という意味があることわざです。
読み方は「ごうにいってはごうにしたがえ」。「入って」は「はいって」と読みません。また、いって、という読み方から、「郷に行っては郷に従え」と書く方もいらっしゃるようですが、これは間違いです。注意しましょう。
「郷に入りては郷に従え」「郷に入りては郷に従う」と表現することもありますが、これも同じ意味になります。
社内の異動や転職は、既に出来上がったチームや組織に入っていくことになります。メンバーとコミュニケーションを取り、その場の空気感や雰囲気をつかみましょう。これまでのやり方を教わり、わからないことや知らないことは、素直に質問します。
新しい環境になじむ際は、自分の価値観ややり方を持ち込むのではなく、その場に合わせることが大事と言えます。そうすることで、周囲からの協力を得やすく、成果も早く出せるでしょう。
郷に入っては郷に従えの由来は?
鎌倉末期から明治初期まで使用された『童子教(どうじきょう)』。童子教は日本の初等教育用の教訓書です。行儀作法や師弟のあり方、父母への孝養などが書かれていて、当初は、仏門にある山住みの童子を対象として書かれたものだと言われています。
こちらに、「入郷而随郷、入俗而随俗」という記載があり、それが寺子屋などで広まったとされています。
入郷而随郷は、よその土地に入ったら、その土地の習慣に従いなさい
入俗而随俗は、よその土地に入ったら、その土地の風俗に従いなさい
「郷」は、土地という意味だけではなく、職場やチームという集団とも取れますね。新しい集団に入った際には、その場に合う行動することが、仕事を進める上でも、人間関係を円滑にするためにも、重要であるという教訓を表していると言えます。
郷に入っては郷に従え、を身につけるメリットとは?
新しい環境のやり方を取り入れることに、どんなメリットがあるのでしょうか。一緒に見ていきましょう。
1:適応力が身に付く
新しい環境に適応することは、柔軟な考えを得る機会にもなり、新しいスキルを身につけるチャンスとも捉えられます。今までとは異なるやり方に従うことで、あらたな視点を得ることができるでしょう。
2:コミュニケーション力が向上
異なる環境で、新しい考え方ややり方を受け入れるには、多少の抵抗を感じることもありますよね。しかしながら、まずは受け入れる姿勢を持つことが大事です。コミュニケーションを取ることで、無駄な対立を避け、メンバーと協力して仕事を進めることができます。
3:リーダーシップを発揮できる
異なる環境や文化に適応することは、相手の視点や価値観を理解し、共感する力を高めると言えるでしょう。そうすることで、さまざまな課題を解決し、改善点も見えやすくなります。リーダーシップを発揮できる可能性も高まります。
4:自己成長の促進
新しい環境に適応することで、新たなビジネスチャンスや人間関係に出会う機会を見つけやすくなると言えます。異なる場所での経験は、自身のキャリア形成や個人の成長に、いい影響を与えることになるでしょう。
英語表現は?
「郷に入っては郷に従え」の英語表現は「When in Rome do as the Romans do(ローマではローマ人のするようにせよ)」です。新しい土地に入ったなら、自分の考えや価値観とは異なっていても、その土地の環境や習慣に適応するのが良い、ということ。4世紀に存在したミラノ司教アンブロジウスが残した言葉とされています。
人生100年時代、転職や引越しなどで見知らぬ土地に赴く場合も。慣れない土地での習慣や生活環境の変化に戸惑うこともあるでしょう。一方で新しい環境になじむことで、自分の視野や世界観が広がるとも言えます。環境の変化をポジティブに捉えるマインドセットが重要です。
郷に入っては郷に従え、に類似した表現は?
類似表現の言葉がいくつかあるようです。ここでは3つ紹介します。
1:所の法に矢は立たぬ(ところのほうにやはたたぬ)
その土地の定めには、たとえそれが道理に合っていなくとも、従わざるを得ないというたとえを表しています。「所の法」は、その土地の定め、その土地土地の慣例のことです。知らなかったとは言え、慣例を破ってしまって、関係性が悪くなることは避けたいですね。
1:国に入ってはまず禁を問え(くににいってはまずきんをとえ)
他国に入ったら、まずその国の法律、規則を知り、それに従うようにせよ、ということわざです。「禁」は禁じられていること、また、おきてや法度という意味もあります。その土地でやってはいけないこと、禁止されていることを事前に把握しておく大切さを説いています。
3:人の踊るときは踊れ(ひとのおどるときはおどれ)
その時代やその土地の風習には、異論を唱えず従うのがよい、皆がするときは自分も一緒にせよ、ということわざです。皆で何かを行う際には、自ら輪の中に入り、馴染もうとすることが大事だということを説いています。周りが盛り上がっている時に、一人だけその輪に入っていないのは、全体のモチベーションが下がってしまう可能性も否めませんね。
最後に
今回は、郷に入っては郷に従えを解説しました。自分を出さずに、まずは、周囲に合わせるということに、違和感をお持ちの方いらっしゃるかもしれません。
一方で、自分がいる職場や環境に、新しい方が入ってきて、無遠慮に自分の意見を押し通されたら、どんな気持ちになるでしょうか。郷に入っては郷に従えは、相手を尊重する気遣いの象徴であることわざとも言えるでしょう。
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