「氷山の一角」の読み方など、基礎知識を解説
「氷山の一角」の読み方は、<ひょうざんのいっかく>です。ものごとの一部分のみしか見えていない状態のことで、ビジネスシーンでも用いられます。
言葉を理解して正しく使えるように、まずは氷山の一角という言葉の詳しい意味やポジティブな意味で使えるかどうか、由来・語源、使い方・例文を確認していきましょう。さらに、関連する「ハインリッヒの法則」に関してもご紹介します。
ものごとの一部分のみが表面的に見えている状態
氷山の一角とは、「表面的に見えていることが、ものごとの一部分のみである状態」を指す言葉です。「実際に見えている部分のこと」ではなく、「まだ明るみに出ていない部分のほうが多いこと」を指して使います。
「氷山」とは、「分離して海を漂っている、山のように大きな氷の塊」のことです。そして「一角」とは、「全体の一部分」のことを指しています。また、「片隅」や「一つの角」という意味で使われる場合もある言葉です。
氷山の一角はポジティブな意味で使える?
氷山の一角を使う際には、ネガティブなニュアンスを含んでいる言葉であることに注意しましょう。そのため、ポジティブな意味では使わないのが一般的です。
氷山の一角は、不正行為や政治の汚職問題など、主に好ましくないものごとに関して使います。よいおこないに対して「氷山の一角にすぎない」などと表現すると、不適切になってしまう恐れがあるでしょう。
氷山の一角の由来・語源
氷山の一角の語源は、海面から一部分だけが見える氷山の様子です。海面上から見える部分の氷山は、氷の塊全体のうち、7分の1〜8分の1ほどしかないといわれています。つまり、目に見えているようでありながら、氷山のほとんどの部分が海面下に隠れているのです。
そのことが転じて、たまたま表面に現れただけのほんの一部分であること、目に見えている部分だけではないという意味で使われるようになりました。
たとえば、会社でミスが発覚し、実際にははじめに発覚したもの以外にも多くのミスがあったときなどに用いられるのです。
「氷山の一角にすぎない」など、使い方・例文をご紹介
それでは、簡単な例文で一切合切の使い方をチェックしましょう。
・以前勤めていた会社で、不正に関することがニュースになっていた。しかし、まだ氷山の一角にすぎないだろう。
・いじめがあった件数として数えられているのは、氷山の一角にすぎない。
氷山の一角は、「氷山の一角にすぎない」という表現で使うのが定型句です。そして、ネガティブなニュアンスがあるため、基本的に悪い事柄が表面に見えているものだけでないことを表現する際に使います。
関連する「ハインリッヒの法則」とは?
氷山の一角に関連する言葉には、「ハインリッヒの法則」があります。ハインリッヒの法則とは、氷山の一角の意味である「表面に現れる事柄が全体の極一部でしかないこと」を法則として論理的に示したものです。
1930年代、アメリカのハインリッヒ氏は、労働事故や災害の発生確率からこの法則を導き出しました。ハインリッヒの法則は、「1:29:300の法則」ともいわれています。
「1件の重大な事故」の背景に「29件の軽微な災害」の存在があり、さらにその背景には「300件のヒヤリ・ハット行為(ヒューマンエラー)」があるという法則です。
氷山の一角の類語・言い換え表現と対義語
関連語をあわせて確認し、言葉への理解を深めましょう。氷山の一角の類語・言い換え表現や対義語は、以下のとおりです。
<氷山の一角をポジティブな意味で言い換えられる表現>
・片鱗を示す(へんりんをしめす)
・千重の一重(ちえのひとえ)
<氷山の一角をネガティブな意味で言い換えられる表現>
・木を見て森を見ず
・千重の一重(ちえのひとえ)
<氷山の一角の対義語>
・一切合切(いっさいがっさい)
それぞれの言葉を詳しく確認していきましょう。
ポジティブな意味で言い換えられる類語表現
氷山の一角をポジティブな意味で言い換えられる表現は、以下のとおりです。
・片鱗を示す(へんりんをしめす)
・千重の一重(ちえのひとえ)
「片鱗を示す」とは、才能や知識のすべてではなく、ほんの一部だけを見せるさまのことです。「片鱗を見せる」「片鱗を覗かせる」ともいいます。「片鱗」の由来は魚の鱗(うろこ)で、「数多くある鱗の一部分」という意味から転じたようです。
また、「千重の一重」とは「数多くあるうちのほんの一部」を指します。
ネガティブな意味で使える類語・言い換え表現
氷山の一角をネガティブな意味で言い換えられる表現は、以下のとおりです。
・木を見て森を見ず
・千重の一重(ちえのひとえ)
「木を見て森を見ず」とは、「細かいところを気にしすぎてしまい、物事の本質や全体像を見ないこと、または見えないこと」です。
氷山の一角の類語・言い換え表現ではあるものの、数あることの1つであると表現するだけではなく、小さいことに気をとられて全体が見えなくなることを指して使うという違いがあります。
また、千重の一重はポジティブに言い換える際だけではなく、ネガティブなことにも使える表現です。
氷山の一角の対義語
氷山の対義語表現は、以下のとおりです。
・一切合切(いっさいがっさい)
「一切合切」とは、「何もかもすべて」を指して使います。「一切」と「合切」はどちらも「すべてのこと」を意味する同義語です。それらをあわせて用いることで、「すべて」という意味をさらに強調しています。
一切合切は、「一切合財」と表記する場合もあります。このほか、「森羅万象」「万事」「すべて」なども、氷山の一角と反対の意味の言葉です。
氷山の一角や関連する言葉を正しく理解しよう
氷山の一角とは、表面に見えているのは、ものごとの一部分のみである状態を指す言葉です。
ネガティブなニュアンスを含んでいる言葉で、不正行為や政治の汚職問題など、主に好ましくないものごとに関して使います。そのため、ポジティブな意味では使わないのが一般的です。
言葉の詳しい意味や使い方、関連する表現などをあわせて確認し、多くの言葉を正しく使えるようになりましょう。