目次Contents
この記事のサマリー
・「四面楚歌」とは「周囲すべてが敵となり孤立無援になること」。
・『史記』項羽本紀の故事に由来します。
・会議で提案が誰からも支持されないなど、比喩的に「孤立した立場」を表す際に使われます。
学生時代、おそらくほとんどの人が習った「四面楚歌」という四字熟語。なんとなく「孤立している」という意味で使われることが多いですが、本来の意味や背景をご存じでしょうか?
由来をたどると古代中国の史記にまで遡り、歴史的な物語と結びついています。正確に理解することで、相手に違和感を与えず、むしろ知的で洗練された印象を残すことができますよ。本記事では「四面楚歌」の意味・由来から、現代語訳、実際の会話やビジネスでの使い方を網羅的に解説します。
「四面楚歌」とは? 意味と使い方を整理
「四面楚歌」という言葉の本来の意味や使い方を、わかりやすく解説します。正しい理解はビジネスや日常会話でも役立ちますよ。
「四面楚歌」の意味
「四面楚歌(しめんそか)」とは、周りをすべて敵に囲まれて孤立している状況を指します。現代では「周囲の理解や協力を得られず、孤立無援に立たされている状態」として比喩的に使われることが多いでしょう。
辞書では次のように説明されています。
しめん‐そか【四面×楚歌】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《楚の項羽が漢の高祖に敗れて、垓下(がいか)で包囲されたとき、夜更けに四面の漢軍が盛んに楚の歌をうたうのを聞き、楚の民がすでに漢に降伏したと思い絶望したという、「史記」項羽本紀の故事から》敵に囲まれて孤立し、助けがないこと。周囲の者が反対者ばかりであること。
例えば、会議で自分の提案が誰からも支持されず、反対意見ばかりが出ると「まさに四面楚歌だった」と表現できます。

四面楚歌の由来(『史記』項羽本紀より)
「四面楚歌」の出典は、中国最初の通史『史記』項羽本紀です。楚の項羽(こうう)という武将が、漢の高祖との戦いに敗れて垓下(がいか)の地に追い詰められた際の出来事に由来します。
夜更けに、敵軍が四方から楚の歌を歌い始め、味方がすでに降伏したことを悟った項羽は、絶望的な孤立感に襲われたといいます。
「四面楚歌」のビジネスシーン・日常会話・SNSで使える例文集
「四面楚歌」をどう使えばいいか分からない…。そんな人のために、日常会話やSNSで活用できる実用例文をまとめました。
ビジネスシーンで使える例文
職場や取引先とのやり取りでは、適切な比喩表現を使えると知的な印象を与えます。「四面楚歌」は誇張を含む言葉なので、深刻な状況や反対意見が集中した場面で効果的です。ただし、軽率に使うと「大げさ」と受け取られる可能性もあるため注意が必要です。
例文1:会議で提案がことごとく反対され、「今日はまさに四面楚歌の状況でした」と上司に報告した。
例文2:新しい制度導入のプレゼンで、全員から疑問が出て孤立し、「完全に四面楚歌だ」と感じた。
例文3:取引交渉で相手企業の役員全員に反論され、「四面楚歌とはこのことだ」と痛感した。
日常会話やSNSでの例文
友人同士の会話やSNS投稿では、深刻さを和らげつつユーモラスに使うこともできます。特に「一人だけ少数派だった」という軽い孤立感を表すときに使うと効果的です。
例文1:飲み会でノンアルコールを頼んだのは自分だけで、「完全に四面楚歌状態(笑)」とSNSに投稿。
例文2:旅行の計画で自分だけ温泉派、他は全員海派。「私は四面楚歌です」と友達に送った。
例文3:好きなアイドルを語ったら周囲が全員別の推しで、「四面楚歌のファン活動」とツイート。
このようにユーモアを込めると、言葉が身近になりSNSの小ネタにもなります。

類語や言い換え表現にはどのようなものがある?
「四面楚歌」のように、孤立し行き詰まった状況を表す表現にはいくつかの類語があります。代表的なものとして「八方塞がり」「孤軍奮闘」「立ち往生」が挙げられますよ。それぞれの意味とニュアンスの違いを知ることで、シーンに応じてより適切な表現を選ぶことができます。ここでは3つの言葉を、例文とともに紹介します。
八方塞がり(はっぽうふさがり)
「八方塞がり」とは、他人の援助や信頼を失い、どの方向に進んでも障害が立ちはだかり打つ手がない状況を表します。もともとは陰陽道の占いから来た言葉で、「どの方角に向かっても不吉」とされる意味を持っています。
「八方」は多方面を意味し、それがすべて塞がることで、完全に身動きが取れなくなるイメージです。
例文:「今から信頼を取り戻そうにも、八方塞がりでどうすることもできない」
孤軍奮闘(こぐんふんとう)
「孤軍奮闘」とは援軍もなく孤立した中で戦うことから転じて、誰の助けもなく、一人で必死に努力することを表す四字熟語です。
例文:「周囲に無理だと言われても諦めず挑み続け、ついに合格を勝ち取った彼の姿は、まさに孤軍奮闘だった」
立ち往生(たちおうじょう)
「立ち往生」は、物事が途中で止まり、進むことも退くこともできずに行き詰まってしまう状況を指します。現代では車が渋滞で動けなくなる場面でよく使われますが、比喩的に「打開策が見えない停滞」を表す際にも用いられます。
「四面楚歌」とはニュアンスがやや異なりますが、身動きが取れないという点で共通しています。
例文:「ステージ上で予期せぬ機材トラブルが発生し、演者もスタッフも立ち往生してしまった」
英語表現とは?
「四面楚歌」を英語で表現する場合、「敵に囲まれて孤立している」ことを表すフレーズがよく使われます。ここでは代表的な2つの例を紹介します。

They had the whole world against them.
“against”は「〜に逆らって」「〜に対して不利な立場で」という意味を持ちます。直訳すると「彼らは全世界を敵に回した」となり、比喩的に「誰からも支持されず孤立している」状況を表します。
特に「周囲の全員が反対している」というニュアンスを強調したいときにぴったりです。
They were surrounded by enemies on all sides.
“surrounded”は「取り囲まれる」という意味です。“on all sides”を加えることで「全方向から」というニュアンスが出て、直訳すると「四方を敵に囲まれた」となります。原義の「四面楚歌」に近いイメージで、切迫した状況をダイレクトに伝えることができます。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)

「四面楚歌」に関するFAQ
ここでは、「四面楚歌」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1:「四面楚歌」と「孤軍奮闘」の違いは?
A:「四面楚歌」は「周囲がすべて敵で孤立している」状況を指し、「孤軍奮闘」は「誰の助けも得られず一人で努力している」姿を表します。
Q2:「四面楚歌」はどんな場面で使うのが適切ですか?
A:会議や交渉で賛同者が全くいないとき、SNSで「自分だけ少数派」という場面を軽く表現したいときなどに使えます。
深刻さを伝えるか、ユーモラスに使うかは状況次第です。
Q3:「四面楚歌」のNGな使い方はありますか?
A:はい。自分の失敗や不注意が原因の場面で使うと「責任転嫁」の印象を与えかねません。
また、軽い会話で乱用すると「大げさすぎる!」と受け取られることがあります。使う相手や場面を選ぶことが大切です。
最後に
「四面楚歌」の正しい意味と由来を知って使うことで、会話や文章に深みが加わり、知的な印象を与えることができます。ビジネスの場では慎重に、日常やSNSではユーモラスに。場面ごとに使い分けて、言葉選びを一層洗練させてみてください。
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