「四面楚歌」の意味や由来とは?
「四面楚歌」は、「しめんそか」と読みます。学生時代に、この四字熟語を習ったことがある方は多いのではないでしょうか。漢文として「四面楚歌」の物語を読んだという方もいるかもしれません。比較的親しみのある四字熟語ですが、まずは意味と由来について見ていきましょう。
意味
「四面楚歌」とは敵に囲まれて孤立し、助けを求められない状況のことです。また、周りに味方がおらず、周囲が反対者ばかりである状況のこともいい、「孤立無援」とも言い換えられます。「四面」は四方八方を表し、「楚歌」は古代中国の楚地方で存在していた歌謡、またはその形式にならった作品のことを指します。
由来
「四面楚歌」は中国の秦が滅び、劉邦が即位する直前の紀元前202年の出来事が由来となって、できた故事成語です。
この出来事の主人公は、項羽と劉邦。両者は天下争いのため、それぞれの軍隊を率いていました。劉邦軍が優勢になり、垓下という場所で項羽が追い詰められた時、劉邦軍の兵士達が項羽の故郷である楚の歌を盛んに歌い出します。項羽は、楚の人間はみな劉邦軍に寝返ってしまったのかと驚き嘆いたという話が「四面楚歌」の語源です。
実は、楚の歌を歌うというのは劉邦の作戦でした。敵軍から項羽の故郷の歌が聞こえてくるということは、項羽軍はすでに劉邦軍に取り込まれたということ。項羽は降伏せざるを得なくなったのです。この故事は『史記』の『項羽本紀』に収録されています。
また、同じく『項羽本紀』には「灯火暗うして数行虞氏が涙、夜深けぬれば四面楚歌の声(ともしびくろうしてすうこうぐしがなみだ、よふけぬればしめんそかのこえ)」という歌も収録されています。
これは項羽が垓下で劉邦軍に囲われた時の運命を歌ったものです。包囲されながら最後の宴を開いていると、いつもそばにいてくれた虞美人が涙を流している。そして夜がふけるとまた楚の歌が聞こえてきて、孤独の悲しみを感じるというなんとも悲しい風情が目に浮かびます。
使い方を例文でチェック
周りに味方がおらず、孤立した状況を表す「四面楚歌」。学校や、ビジネスシーンにおいても使うことが出来ます。具体的に、どのような状況で使えるのか例文で確認していきましょう。
1:僕の意見は誰の共感も得られず、四面楚歌になってしまった。
会議などにおいて、自分が発言したり提案したことが誰の賛同も得られなかったりした経験は誰しもあるでしょう。自分の意見が孤立してしまった時は、まさに「四面楚歌」な状態であると言えます。しかし項羽のように周りが皆敵だと思い込む必要はありません。自分の意見がいつも多数派であるとは限らないので、毎度落ち込まないようにしてくださいね。
2:キャプテンとして活を入れるつもりが、きつい言い方をしてしまったせいで四面楚歌の状態になってしまった。
チームのためを思って言ったことがうまく伝わらず、チームメイトに嫌な思いをさせてしまうなんてこともありますよね。何事もきっぱり指摘する人は、嫌われ役を買ってしまうこともあるかもしれません。でもそのような指摘がチームに必要だという時もあります。言い方には気をつけたいですが、はっきり言える人の存在が大切だったりもしますよね。
3:部長の自分勝手な態度は社員達の信用を失い、彼は四面楚歌になってしまった。
ビジネスシーンにおいても、「四面楚歌」な状況は多々あるかと思います。四面楚歌にならないためには、やはり信頼関係が必要です。自分のことだけで精一杯にならず、周りのことも見られるような余裕を持てるとなお良いですね。
類語や言い換え表現にはどのようなものがある?
「四面楚歌」のように、孤立し行き詰まった状況を表す言い換え表現には、「八方塞がり」「孤軍奮闘」「立ち往生」などがあります。今回はこの3つについて例文とともに詳しく解説していきます。
1:八方塞がり(はっぽうふさがり)
他人の援助や信頼を失い、どの方面にも障害があって手の打ちようがないことを言います。また、陰陽道の占いにおいて、どの方角に向かって事を行っても不吉な結果が予想されるという意味もあります。「八方」というのは多方面のことを指しており、それが塞がることでどこへ向かっても行き詰まってしまう様子を表しています。
「今から信用を取り返そうにも八方塞がりで為す術がない」というような例文があります。
2:孤軍奮闘(こぐんふんとう)
孤立した少数の軍勢でよく戦うこと。また誰にも援助されない中、一人で一生懸命に努力することを表す四字熟語です。シチュエーションとしては、まさに「四面楚歌」とよく似た言葉であると言えます。「誰にも受かると思われていなかった受験に、猛勉強して合格した彼の姿はまさに孤軍奮闘といえるだろう」というように使います。
3:立ち往生(たちおうじょう)
途中で止まったまま、進みも退きもできず物事が行き詰まってしまう状況を表します。車が渋滞している時によく使われる言葉ですね。どのように処置したら良いのかもわからないというニュアンスも含まれています。「四面楚歌」とは少しずれた意味になってしまいますが、身動きが取れないという点で似た表現として使えるでしょう。
例文としては、「ステージ上で原因不明の機材トラブルが起こり、皆立ち往生せざるを得なかった」などが挙げられます。
英語表現とは?
「四面楚歌」の英語表現として、以下の2つを紹介します。どちらも「彼らは四面楚歌に陥った」という意味になります。
1:They had the whole world against them.
「against」は「〜に逆らって」という意味になります。直訳では「彼らは全世界に対して逆らった」、つまり孤立を表現した英文ということになりますね。
2:They were surrounded by enemies on all sides.
「surrounded」は「取り囲む」という意味。そのため、「were surrounded」とすることで「取り囲まれる」という意味になります。直訳すると「全方向から敵に囲まれた」というようになります。
最後に
今回は、「四面楚歌」の由来や類義語、英語表現について解説しました。「四面楚歌」は、あまりポジティブな状況で使われる言葉ではありません。自分もそうならないように、また他の人をそのような状況にさせない心遣いも時には必要かもしれません。
TOP画像/(c)Shutterstock.com