「戦わずして勝つ」という言葉を、一度は耳にしたことがあるはず。ですが、「実際に戦わずに勝つにはどうすればいいの?」と、現実に活かす方法はわからないという方も多いでしょう。当記事ではまず、「戦わずして勝つ」の言葉の意味や類語などを紹介。その後に、ビジネスシーン・日常生活で「戦わずして勝つ」方法についてお伝えしていきます。
「戦わずして勝つ」とは?
職場の人と意見が対立したり、競合他社とシェアを取り合ったりと、誰かと争う場面は日常生活でも意外とあるもの。ですが、相手と戦って勝つよりも、戦わないで勝つ方が良い結果につながることがあります。それを表すのが「戦わずして勝つ」という言葉。最初に、「戦わずして勝つ」という言葉の由来や意味について解説していきます。
由来や意味
「戦わずして勝つ」とは、言葉の通り「戦わずに、相手に勝つこと」という意味です。そもそもこの言葉の由来は、中国古代の兵法書『孫子(そんし)』からきているといわれています。
『孫子』とは、戦いに関するノウハウが書かれた書物。その中に、「百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なるものなり」という一節があります。わかりやすく解説すると、「戦うたびに勝つ、百戦百勝は最善ではない。戦わずに相手を屈するのが最善なのだ」という意味です。
何度も戦い、そのたびに勝つのは素晴らしいことですよね。しかし戦いは、勝った方にも大きな損害が出ます。このことから、「戦わずして勝つこと」がベストである、ということを教えているのです。
類語や言い換え表現は?
「戦わずして勝つ」を別の言葉で表したいときに使える言い回しを紹介。そこで「無手勝流」という四字熟語と、「善く陣する者は戦わず、善く戦う者は死せず」ということわざをピックアップ。それぞれの意味を詳しく解説します。
1:無手勝流
「無手勝流」とは、「むてかつりゅう」と読みます。意味は、「戦わずに、策略で勝つこと」。言葉が生まれたのは戦国時代。当時の剣豪・塚原卜伝(つかはらぼくでん)は、渡し船の上で戦いを挑まれましたが、先に相手を洲に上がらせ、自分は竿を突いて船を出し、戦いを避けました。そのときに言った、「戦わずして勝つ、これが無手勝流」という言葉が由来だといわれています。
2:善く陣する者は戦わず、善く戦う者は死せず
「善く陣する者は戦わず、善く戦う者は死せず」とは、「よくじんするものはたたかわず、よくたたかうものはしせず」と読みます。意味は、「戦術に優れる者は戦わずして勝ち、うまく戦う者は窮地に陥るような失敗はしない」。良い策を持っていれば、戦わないでも相手に勝てるということを表しています。
英語表現は?
「戦わずして勝つ」を英語で表現したいときは、「win without fighting」や「method used to win without fighting」を使うといいでしょう。
仕事で「戦わずして勝つ」方法とは?
孫子の兵法「戦わずして勝つ」は、ビジネスにも役立つ考え方です。ここでは、新しい商品やサービスを出すときなどに活かせる「戦わずして勝つ」方法をいくつか紹介します。
1:競合がいないところを狙う
多くの企業が参入している市場では、価格競争が起きがち。短期的な売り上げにはつながるかもしれませんが、利益が少なくなるために資金がどんどん減っていってしまうことも。しかし、競合がいない市場を狙えば、こうした戦いを避けられます。まったく新しい市場を切り開くため、戦わずして「1人勝ち状態」になることが可能です。
2:差別化で、圧倒的な強みを持つ
競合がいる市場に参入するのであれば、他社との差別化を図るのも「戦わずして勝つ」方法の一つ。マーケティング用語では、「差別化戦略」と呼ばれます。競合他社を徹底的にリサーチし、自社ならではの強みを見つけるのです。そうすれば、価格を下げずとも消費者から選ばれます。
人間関係で「戦わずして勝つ」方法とは?
人間関係においても、「戦わずして勝つ」という考え方を活かすことができます。相手と真っ向から戦うのではなく、うまく戦いを避ける方が結果的に良い関係性につながることもあるでしょう。ここでは、人間関係で「戦わずして勝つ」方法を紹介します。
1:嫌なことを言われても受け流す
職場やプライベートなどで、相手から嫌みや悪口を言われることがあるかもしれません。しかし、ここで言い返すと、関係性が更に悪化します。ぎくしゃくした関係が続くので、自分自身のストレスがなくなることはありません。
また、「自分の感情をコントロールできない人なんだ…」と、周囲に悪い印象を持たれるというデメリットも。そのため、どんなにイラッとしても言い返さないのが大切です。何か言われたらその場から離れてイライラを鎮めたり、「そうですね〜」などと言って軽く流しましょう。すると、だんだんと相手からの攻撃が減っていくはずです。
2:自分から譲ったり、負ける
例えば、誰かからマウンティングされたとしましょう。このとき、相手は自分の承認欲求を満たしてほしいという気持ちから、マウンティングしていることがあります。そのため、あえて自分から「へ〜すごいね!」と相手を褒めてみるのです。もしくは、「さすが○○さんですね。私にはできないです」と、自分から負けてみましょう。そうすると、相手も満足して去っていくはず。
「なんで自分が譲らなきゃいけないの!」と思うかもしれませんが、自分が少し大人になってあげていると思うと、気持ちに余裕が生まれて、譲歩できるようになるでしょう。
最後に
兵法書『孫子』に由来があるとされる「戦わずして勝つ」という言葉。中国古代に生まれた言葉ではありますが、現代の仕事やプライベートにも役立つ考え方です。ぜひ、さまざまなシーンで「戦わずして勝つ」を実践してみてくださいね。
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