「身につまされる」とは?
「身につまされる」という言葉は、誰しも一度は耳にしたことがあるでしょう。慣用句的に使われることが多いため、「ニュアンスはわかるけど、正確な意味は分からない」という方もいらっしゃるかもしれませんね。
また、「身をつまされる」「身につままれる?」「身につまれる??」などと使っていくうちに正しい言い回しが分からなくなってしまったという経験をお持ちの方もいるのでは?
そこで、本記事では改めて「身につまされる」の意味についておさらいしてみましょう! あわせて、「身につまされる」の類語表現や使い方も紹介します。
間違った使い方も紹介しますので、この機会に正しい使い方をマスターしましょう。
「身につまされる」の意味
それではさっそく、「身につまされる」の意味から。そもそも「つまされる」とはどういうことでしょうか? 「つまされる」単体はあまり聞き馴染みがありませんよね。「つまされる」とは、「他者の愛情などによって判断や気持ちが左右されること」というようなニュアンスを持ちます。
そこから派生して、「身につまされる」とは、「他者の不幸などが自分の立場や境遇と引き比べて同情される、心が痛む」という意味で使われることが多いです。
他者に起きた(ネガティブな)出来事が他人事ではないと思われるときに、「身につまされる」という言い回しをします。少し分かりにくいかもしれませんが、他者の出来事を受けたうえでの相対的な感情ということですね。
「身につまされる」の類語表現
語彙力は、似た意味の言葉を関連付けることで身に付けやすくなります。そこで、この機会に「身につまされる」の類語表現も押さえておきましょう!
1:同情する
「同情する」は馴染みのある表現なのではないでしょうか? 「他者の気持ちになって思いを同じくすること」「他者の苦しみや苦悩を自分のことのように思い労わること」という意味です。
過去に日本テレビ系で放映されたドラマ「家なき子」では、「同情するならカネをくれ」という名ゼリフが登場し、流行語となりました。このセリフからも伺えるように、同情はときに相手にとって苦痛になることもあります。辛い思いや経験はその人にしか分からず、上辺だけの「同情」という言葉で人に寄り添う自己満足に浸らないように気を付けたいものですね。
2:他人事とは思えない
「他人事とは思えない」という表現もあります。意味は言葉の通り、「自分には関係のない他人のことだ、と割り切って考えることができない」という意味です。ちなみに、「たにんごと」と書いて「ひとごと」と読みます。
3:ほだされる
「ほだされる」とは、「他者の気持ちや立場に影響を受けて自分も同じように感じてしまう」こと。「身につまされる」は同情のニュアンスもありますが、自戒的なニュアンスもあります。
一方で、「ほだされる」にはどちらかというと懐柔される、心が相手にひきつけられるというときに用いられることが多いようです。
ちなみに、漢字では「絆される」と書きます。「絆(きずな)」という漢字を使っているところからも、心を寄せるというニュアンスに近いと言えるのではないでしょうか。
「身につまされる」の使い方を例文で紹介
続いては、具体的な使い方について一緒に確認していきましょう。
1:「同世代の女性が事故に巻き込まれるニュースを見て、身につまされる思いだ」
この例文での「身につまされる」は、「心が痛む」というニュアンスです。自分と同じ境遇や、似た立場の人に起きた災難な出来事を見て(知り)、自分のことのように落ち込んでしまったり相手の気持ちを考えて切なくなってしまったりするときに使われます。
2:「誤解で上司に叱責された同僚の失敗談を聞き、身につまされる仕事仲間も多かったと聞きます」
例文のように「身につまされる仕事仲間」や「身につまされる読者」、「身につまされる親御さん」など「身につまされる」のあとに人物を表す名詞が入るケースがあります。
誤解や運の悪いタイミングが重なって不憫な思いをしている人を見ると、思わず同情してしまいたくなりますよね。この例文は、そんな場合に使われる表現です。
3:「遺族の言葉には身につまされる思いがしたが、同じ事故が起きないように対策を考えることが私たちの責務だ」
「身につまされる」には、「同情する」や「心が痛む」というニュアンスが含まれています。相手の悲しみや辛さに心を寄せることを表す表現とも言えます。しかし、やはり悲しみや辛さはその人にしか分からないもの。上辺だけの取り繕った言葉によって、さらに相手を傷つけてしまうことも。
「身につまされる」と相手の気持ちに寄り添おうとすることも大切ですが、それだけではなく、これから先を見据え、前に進むために、自分たちには何ができるのかということも一緒に伝えていきたいですね。
「身につまされる」の間違った使い方
「つまされる」という言い回しは滅多にしないので、「身につまれる」「身につままれる」「身をつまされる」など、分からなくなってしまう人もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、これらは誤用なので気を付けましょう。
「つまされる」はラ行下二段活用「つまさる」の受身形です。「つまれる」は活用が誤っていますし、「つままれる」では意味が異なります。「される」という受身なので「を」ではなく「に」である点も気を付けましょう。
最後に
本記事では、「身につまされる」という表現についておさらいしました。誤用されやすい表現なので、この機会にしっかり押さえておきましょう。また、「身につまされる」の類語表現も紹介しています。
類語でもニュアンスが異なるので、場面に応じて使い分けてみてくださいね。
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