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「転がる石には苔が生えぬ」とは?
「転がる石には苔が生えぬ」という言葉の意味がわかる人はあまりいないかもしれません。西洋のことわざが由来とされ、「働き方」「成功」に関連する意味を表すとされています。「転がる石には苔が生えぬ」は、会話などで用いることもできますので、意味や使い方を把握しておけるといいですね。
まずは意味をチェックしていきましょう。元となる英語の一文を紹介します。
元となるのは西洋のことわざ
「転がる石には苔が生えぬ」の元となるのは、次の一文です。
A rolling stone gathers no moss
上記を直訳すると「転がる石には苔がつかない」となります。イギリスでは、「職業や住居を変えてばかりいる人は、地位も財産もできない」ということを表すことわざとして知られているようですね。
また、この意味が転じて、「活発な活動をしている人は、時代に取り残されることがない」という意味でも用いられています。
さまざまな表現がある
「A rolling stone gathers no moss」は、「転がる石には苔が生えぬ」以外にも、さまざまな日本語に翻訳されています。
・転石苔を生ぜず(てんせきこけをしょうぜず)
・転石苔むさず(てんせきこけむさず)
・転がる石には苔は付かない(ころがるいしにはこけはつかない)
表記は異なりますが、これらの意味はすべて同じ。言葉の使い方も同じと考えていいでしょう。いずれの表現を使ってもOK。間違いにはなりません。
「転がる石には苔が生えぬ」の使い方:特徴
「転がる石には苔が生えぬ」の具体的な使い方を見ていきましょう。特徴と会話例を紹介します。
使い方の特徴
「転がる石には苔が生えぬ」は、ことわざです。そのため、たとえとして用いられることが多いでしょう。誰かに対する助言や忠告でこの言葉を使うというのは特にあるかもしれませんね。また、戒めの言葉として用いることもあるでしょう。
言い回しとしては、「転がる石には苔が生えぬと言うが」「転がる石には苔が生えぬと言うように」といった使い方をします。
「転がる石には苔が生えぬ」の使い方:会話例
「転がる石には苔が生えぬ」の会話例を見ていきましょう。2通りの会話例を紹介しますので、参考にしてくださいね。
会話例その1
会話例の1つ目は、転職する息子に父親が忠告しているとイメージしながら読み進めてください。
父親「会社を辞めるって、本当か?」
息子「そう。今月末で退職する。次の就職先は決まっているから、心配はいらないよ」
父親「もう4社目だろう? そんなに転職ばかりしていると、将来に響くぞ。転がる石には苔が生えぬと言うだろう」
息子「そうかもしれないけど、今はキャリアアップのために転職する時代だよ。環境を変えるから、身につく経験やスキルがあるし、視野も広がる。転職がプラスになることだってあるんだよ」
父親が「転がる石には苔が生えぬ」を用いて伝えようとしたのは、「職業や住居を変えてばかりいる人は、地位も財産もできない」ということだと解釈できる会話例です。
転職やキャリア形成に対する価値観や考え方は、世代により異なることが多いもの。時代背景なども影響し、「転職回数が多い=将来に響く」とは言い切れなくなっています。
とは言え、あまりに頻繁だと、親としては心配になるでしょう。父親が忠告したくなる気持ちがよくわかるという人は多いかもしれません。
会話例その2
もう一つ、会話例を紹介します。職場で、BさんとCさんが上司のAさんについて話していると考えてください。
B「SNS運用で困っていたら、A部長が的確なアドバイスをくれて、あっという間に解決したよ」
C「それはよかった。いつもながらA部長の博識さはすごいね」
B「何でもご存じだよね。SNSも個人アカウントで運用されているそうよ」
C「それはすごいね。A部長は好奇心旺盛な方だなといつも思うわ。転がる石には苔が生えぬとは、A部長のことだね」
B「そうだね。だからいつまでも若々しくて、イキイキされているのだろうね」
この会話では、「活発な活動をしている人は、時代に取り残されることがない」の意味で「転がる石には苔が生えぬ」を用いています。好奇心旺盛でよく働く人は、新しい情報や事柄に適用するのが早いでしょう。年齢を重ねて立場が上がっても、A部長のように若々しくイキイキとしていたいですね。
「苔」の捉え方で解釈は変わる
会話例1と2では、「転がる石には苔が生えぬ」の解釈が異なりますよね。実はこれは、「苔」の捉え方が変わるからだとする説があります。
会話例1のような使い方をするのは、イギリスです。「職業や住居を変えてばかりいる人は、地位も財産もできない」の意味で、「転がる石には苔が生えぬ」を使うことが多いでしょう。
アメリカでは、会話例2の解釈が主流。「活発な活動をしている人は、時代に取り残されることがない」の意味を表す際に、「転がる石には苔が生えぬ」を用いて表現します。
日本は、「職業や住居を変えてばかりいる人は、地位も財産もできない」と解釈するのがメインと言えます。この言葉を使う際は、相手の解釈に注意を払うようにするといいですね。
成功を表す慣用句を紹介
「転がる石には苔が生えぬ」のように、成功を表す慣用句を紹介します。それぞれどのような意味を持つのか、ぜひチェックしてください。
慣用句3選
◎「瑠璃の光も磨きがら」
瑠璃が美しいのは、それを磨くからであるという意味の言葉です。「瑠璃」とは、青色の美しい宝石のこと。七宝の一つであり、赤や緑、紫などの瑠璃もあります。「素質があっても、修練を積まなければ大成しないこと」のたとえとして使われる言葉。「るりのひかりもみがきがら」と読みます。
◎「風に順いて呼ぶ」
風上から風下に向かって呼べば声がよく届くように、勢いに乗って行動すれば成功しやすいということをたとえた言葉です。読み方は「かぜにしたがいてよぶ」。
◎「高きに登るは必ず低きよりす」
物事を進めるには順序があり、まず手近なところから始めなければならないことのたとえとして使われています。中国の書物が由来とされる言葉で、「たかきにのぼるはかならずひくきよりす」と読みます。
最後に
「転がる石には苔が生えぬ」について、元となる西洋のことわざや意味、使い方をまとめました。この言葉には2通りの解釈があります。日本では「職業や住居を変えてばかりいる人は、地位も財産もできない」の意味だと考えることが多いかもしれません。そのことを踏まえ、「転がる石には苔が生えぬ」を使うようにしたいですね。
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