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生活にゆとりがある訳ではないにもかかわらず、ある程度高い衣服や車を持つことで、一定の品位を保っている人がいるかもしれません。他にも、自分にとって負担が大きいけれど、人によくご飯をおごるような人もいることでしょう。
このようなことを表現するのが、「武士は食わねど高楊枝」ということわざです。たまに、メディアやインターネットでこの言葉を見ることもあるでしょう。
この記事では、そんな「武士は食わねど高楊枝」ということわざについて、意味や使い方、英語での表現などについて解説していきます。
「武士は食わねど高楊枝」の意味について
まず、「武士は食わねど高楊枝」の読み方についてですが、「ぶしはくわねどたかようじ」と読みます。意味は、「武士は貧しく食べ物に困っていても、食べたようなふりをして楊枝を使う」ということ。「高楊枝」とは、「食後にゆったりと楊枝を使うこと、満腹であること」。武士は貧しくても、不正に手を染めないで品位を保つということです。
現代では武士は消滅しているので、苦しくても誇りが高く持つこと・やせ我慢することを意味します。
「武士は食わねど高楊枝」を使った例文
次に「武士は食わねど高楊枝」の使い方について、例文を見ながら確認していきます。
1:「彼女はブランド品のバッグを持っていて、身なりはいいが、実はあまりお金がなくて、生活は質素だ。武士は食わねど高楊枝といったところか」
身なりはいいものの、生活は質素であるようです。「武士は食わねど高楊枝」の典型例と言えるでしょう。
2:「そのフレンチのレストランは、経営は苦しいそうだが、無理をして都心の一等地に店を構えている。武士は食わねど高楊枝のようだ」
知名度やお客などさまざまな要因から、経営が苦しくてもお店を移転できないのかもしれません。苦しくても、一定のステータスを維持しなければならない場合、「武士は食わねど高楊枝」と言えます。
3:「彼は小さなアパートに住んでいるが、武士は食わねど高楊枝で、友人の前では高級外車を乗り回している」
相手に対する見栄えを良くするために、住んでいる賃貸は安いようです。生活が楽でなくても、相手からの印象を優先することも、「武士は食わねど高楊枝」と表現できますね。
「武士は食わねど高楊枝」の類似表現
「武士は食わねど高楊枝」の類似表現・似たことわざについても解説。使い分けの参考にしてみてください。
1:「渇しても盗泉の水を飲まず」
「渇しても盗泉の水を飲まず」は、「かっしてもとうせんのみずをのまず」と読みます。意味は、「いくら困窮していても、不義・不正に手を染めるべきではないということ」。
由来については、孔子が「盗泉」という名の泉の前を通った時、のどが渇いていたにもかかわらず、その名を嫌がって泉の水を飲まなかったという故事が伝えられています。
例文:
・「最近は景気が悪く、物価上昇も著しいので、生活は苦しい。しかし、だからといって、渇しても盗泉の水を飲まずというように、うまい投資話で人をだましてお金を得るようなことはしたくない」
2:「鷹は飢えても穂は摘まず」
「鷹は飢えても穂は摘まず」は、「たかはうえてもほはつまず」という読み方です。意味は、「高潔な人は、いかに困窮しても不正な利益を得ようとはしないこと。貧しても節度を守ること」。
鷹は肉食なので、穀物を食べないのは当たり前ですが、穀物を食べて人間を困らせる雀などに比べて、穀物に手を出さないことから、品位があると見なされたのかもしれません。
例文:
・「鷹は飢えても穂を摘まずの精神によって、国全体が貧しくても、かろうじて秩序が保たれている」
「武士は食わねど高楊枝」の対義語
次に、「武士は食わねど高楊枝」の反対の意味を持つ言葉について、見ていきましょう。
1:「貧すれば鈍する」
「貧すれば鈍する」は「ひんすればどんする」と読みます。意味は、「困窮すると、性質や頭の働きまでも愚鈍になる。また、貧しくなると、いやしい心を持つようになること」。
生活が苦しくなってくると、余裕がなくなり、冷静な判断ができなくなったり、良くないことを考えるようになったりすることです。
例文:
・「貧すれば鈍するで、彼女は転職活動がうまくいかないためか、生活に余裕がなくなり、最近は心身が不安定だ」
2:「背に腹は代えられない」
「背に腹は代えられない」は「せにはらはかえられない」と読みます。意味は、「さし迫ったリスクを回避するためには、他のことを犠牲にせざるをえないこと」。腹には重要な内臓があるために、背中と交換できないということです。
例文:
・「やむを得ないが、自分の生活のために、多少はずるいことをしなければならなくなった。背に腹は代えられない」
「武士は食わねど高楊枝」の英語表現
「武士は食わねど高楊枝」の英語表現には、「A samurai glories in honorable poverty」というような表現になります。ただ、これでは武士そのものの説明です。日常生活で使うには、「Eagles don’t catch flies」という表現が使えます。直訳すると、「ワシはハエをとらえない」。このことから、「鷹は飢えても穂を摘まず」を意味する表現として使えます。
最後に
「武士は食わねど高楊枝」は、「武士は貧しく食べ物に困っていても、食べたようなふりをして楊枝を使う」ということから、「苦しくても品位を保つこと、やせ我慢をすること」という意味です。類似表現としては、「鷹は飢えても穂を摘まず」「渇しても盗泉の水を飲まず」などが挙げられます。
この記事を参考に、「武士は食わねど高楊枝」をもっと使いこなすことにつながれば幸いです。
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