目次Contents
この記事のサマリー
・「木で鼻をくくる」は“冷たく無愛想な態度”を意味する言い回しです。
・語源は「木で鼻をこする」行為に由来し、不快な動作から転じたとされます。
・類語には「素っ気ない」「けんもほろろ」「鼻であしらう」などがあります。
「木で鼻をくくる」という言葉、ちょっとムッとする場面で耳にしたことはありませんか? この表現、日常会話からビジネスメール、SNSまで意外と幅広く使われています。でも実は、「木で鼻をくくる」ような態度は、人間関係をこじらせる原因になることも…。
この記事では「木で鼻をくくる」の意味や由来、使い方から気をつけたいポイントまで、わかりやすく解説します。
「木で鼻をくくる」とは? 意味を確認
まずは、「木で鼻をくくる」という言葉がどんな意味を持っているのか、確認していきましょう。ふとした会話やメールのやりとりで耳にしたときに、正しく受け取れるようにしておきたい表現です。
「木で鼻をくくる」の基本的な意味
「木で鼻をくくる」とは、相手に対してそっけなく、冷たい態度をとることを意味します。例えば、あいさつをしても目を合わせずにうなずくだけだったり、質問に対してぶっきらぼうな一言だけ返されたり…。そうした態度を表す際に、使われます。
『デジタル大辞泉』(小学館)では、次のように説明されています。
木(き)で鼻(はな)を括(くく)・る
《「くくる」は「こくる」の誤用。「こくる」はこする意》無愛想に応対する。冷淡にあしらう。木で鼻をかむ。「―・ったような返事」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
ここでの「くくる」は、「こくる(こするという意味)」が転じた言い方です。つまり「木のような無機質なもので鼻をぬぐうような、思いやりのない雑な態度」を表しています。

現代的なニュアンスは?
「木で鼻をくくる」という表現には、単に「冷たい」という以上に、「突き放すような態度」や「関係を拒まれているような感覚」がにじみます。特に現代のビジネスシーンでは、言葉より“態度”で距離をとられると、かえって印象が悪くなることも…。
筆者自身、会議の場で上司に意見を尋ねたところ、「別に…」とだけ返され、目も合わせてもらえないことがありました。無理に強い言葉を使わなくても、「木で鼻をくくるような対応」は、それだけで人の心を傷つけるのだと実感しました。
「木で鼻をくくる」の語源・由来を知る
「木で鼻をくくる」という表現の背景を知ることで、なぜ「木」と「鼻」が不愛だったり、冷たさと結びついたのか、理解が深まります。由来をたどると、言葉に込められた文化的な感覚や、当時の暮らしぶりも見えてきますよ。
この表現はどこから来たの?
「木で鼻をくくる」という言い回しの“くくる”は、本来「こする」を意味する動詞「こくる」の誤用から生まれたものとされています。つまり、もともとの意味は「木で鼻をこする」こと。
紙がまだ貴重だった時代、鼻水をぬぐうのに紙を使わず、木を使っていたそうです。木で鼻をぬぐうと当然ながら痛みがあり、顔が思わずしかめっ面に。その不快な動作や表情が、やがて「冷たい態度」や「ぶっきらぼうな対応」の象徴として使われるようになったと考えられています。
別の説では、商家の主人が倹約の一環として、使用人に紙の使用を禁じたという逸話に由来するともいわれます。こうした背景から、「理不尽な扱い」「ぞんざいな応対」といったニュアンスも含まれるようになったのかもしれません。
このように、日常のしぐさや社会の在り方が、言葉のイメージを形づくってきたことがわかります。
「さっぱりする」という意味も
実はこの言葉、昔は今と少し違う意味で使われることもありました。江戸時代の国語辞書『諺苑(げんえん)』(1797年)には、「木で鼻をこくったやう さっぱりしたと云こと」という記述があり、当時は「木で鼻をぬぐう=さっぱりする、すっきりする」と捉えられていたことがわかります。
ただし、現在では「不愛想」「冷たい対応」という意味での理解が一般的です。場面によっては誤解を招く可能性もあるので、使い方には注意が必要でしょう。
参考:『日本国語大辞典』、『故事俗信ことわざ大辞典』(ともに小学館)
「木で鼻をくくる」の使い方と注意点
「木で鼻をくくる」という表現は、実際にどんな場面で使われるのでしょうか? ここではビジネスや日常のシーンでの使い方と、受け手の心理に配慮した接し方について、具体例を交えて紹介します。
「困っているのかと思い声をかけたけれど、彼女は木で鼻をくくったような態度だった」
相手を気づかって話しかけたのに、返ってきたのは無表情で素っ気ない返事。まるで気持ちを受け取ってもらえなかったような疎外感が残ります。このような場面で「木で鼻をくくるような態度」と言えば、冷たくあしらわれた印象を的確に表現することができます。

「問い合わせの電話をしたところ、対応が木で鼻をくくったようで、余計に腹が立った」
問い合わせ先の対応が事務的すぎたり、声のトーンが冷たく感じられたりすると、「こちらの立場を軽んじられた」と感じてしまうことがあります。このフレーズを使うことで、相手の対応が冷淡だったことをやや皮肉を込めて表現できます。
「コンビニでお釣りもらうとき、木で鼻をくくる感じで渡されると地味に凹む」
忙しい店員さんの無言・無表情な対応に、ちょっと心がささくれた経験がある人も多いのでは? 特に丁寧なやり取りを期待していない場面でも、人としての温度感がないやり取りには敏感に反応してしまうもの。この表現は、そうした“小さながっかり”にもぴったりフィットします。
言われたときの心理反応と対処法
「ちょっと木で鼻をくくる感じだったよ」―そう言われると、自分ではそんなつもりがなかった場合でも、ハッとすることがありますよね。無意識の態度が相手に冷たく映ったのだと気づいたら、「もし不快にさせたなら、ごめんなさい」と一言添えるだけで、関係性がなめらかになるでしょう。
「木で鼻をくくる」の言い換え表現や類語は?
「木で鼻をくくる」という言葉には、冷たさ・そっけなさ・拒絶といった複雑な感情が込められています。ここでは、似た意味を持つ言葉や、言い換えとして使える慣用句・四字熟語を紹介します。相手や場面によって言葉を選びたいときに、ぜひ参考にしてください。
類語1:感情を抑えた「そっけなさ」を伝える言葉
例えば「素っ気ない」「よそよそしい」「無愛想」などは、比較的ソフトな言い換えとして使えます。どれも「木で鼻をくくる」ほどの強さはなく、場面によって使いやすい表現です。
「素っ気ない」
態度や言葉が必要最低限で、淡白な印象を与えるときに。
「よそよそしい」
心理的な距離を感じたときに適しています。
「無愛想」
笑顔がなくとっつきにくい人の印象にも使えるでしょう。
類語2:はっきりとした拒絶を含む言葉
より明確に拒絶するような態度を表すなら、以下の言い回しが近いでしょう。
「ぶっきらぼう」
言動が素っ気ないこと。
「冷淡」
思いやりがないこと。
「けんもほろろ」
「けんもほろろ」は、無愛想に人の頼みや相談事を拒絶して、取りつくしまもない様子を表します。「けん」と「ほろろ」の語源はキジの鳴き声です。
「鼻であしらう」
冷たくあしらうこと。
「取り付く島もない」
「頼るところが何もない」という意味を表します。

英語で「木で鼻をくくる」はどう言う?
「木で鼻をくくる」という言い回しは、日本語特有の比喩表現ですが、英語にも似たような意味を持つフレーズがあります。ここでは、「そっけない態度」「無視するような対応」を表す代表的な英語表現を紹介します。
“blunt”:ぶっきらぼうな態度を表す単語
“blunt” は、人の話しぶりや態度がぶっきらぼうで、感情がこもっていない様子を指します。配慮に欠けた、少し刺々しい印象を与える語です。
例:He made a blunt reply and walked away.
(彼は木で鼻をくくるような返事をして、そのまま立ち去った。)
“not give someone the time of day”:まったく相手にしない
より口語的な表現として、“not give someone the time of day” というイディオムがあります。直訳すると「相手に時刻すら教えない」という意味で、そこから転じて「完全に無視する」「冷たくあしらう」というニュアンスになります。
例:She didn’t give me the time of day.
(彼女は私に見向きもせず、まるで木で鼻をくくるようだった。)
参考:『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)
「木で鼻をくくる」に関するFAQ
ここでは、「木で鼻をくくる」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q.「木で鼻をくくる」は褒め言葉として使えますか?
A.基本的に否定的な意味ですので、使えません。
Q.NGな使い方は?
A.相手の態度に対して「木で鼻をくくってるよね」と直接指摘するのは、攻撃的に聞こえる場合があります。
関係性や場の空気に配慮しましょう。
最後に
「木で鼻をくくる」という慣用句は、普段あまり耳にしないので、一見難しい言葉のようにも思えます。ですが、意味や由来を理解すると、日常の様々なシーンにおいて、使うことのできる言葉だということが伝わったのではないでしょうか? 日常生活で使えるような場面が出てきたら、ぜひ活用してみてください。
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