「虎の尾を踏む」の意味
皆さんは、「虎の尾を踏む」ということわざを聞いたことはありますか? なんだか危ないイメージのある言葉ですが、一体どのような意味なのでしょうか。本記事では、「虎の尾を踏む」の意味や使い方、類語を解説します。
意味
「虎の尾を踏む」は、「とらのおをふむ」と読みます。意味を辞書で確認していきましょう。
《「易経」履卦から》非常に危険なことをすることのたとえ。虎の口へ手を入れる。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
獰猛な虎の尻尾を踏むということから、「きわめて危険なことをすることのたとえ」として用いられます。「虎の口へ手を入れる」とも。たまたま尻尾を踏んでしまった、というよりは、危険なことを承知で自ら危険なことに足を踏み入れる、というような場合に使われる傾向がありますね。
由来
「虎の尾を踏む」は、中国の『易経』の履卦からきているとされています。『易経』は天文や地理などを陰陽の変化の原理によって説いた書物で、元来占いに用いられたとか。「虎の尾を履(ふ)むも人を咥(くら)わず(虎の尾を踏んでも、かみつかれない)」という一文があり、吉凶を占う際の言葉として使われていたとされています。
使い方を例文でチェック!
ビジネスシーンでは、失態やリスクのある行動をとってしまった時などに、「虎の尾を踏む」を使うことができますよ。主な例を3つ見ていきましょう。
1:不機嫌な課長に話しかけるなんて、虎の尾を踏むようなものだ。
仕事で忙しく、ストレスが溜まっている人に話しかけるのは勇気がいることです。特に相手が仕事中に声をかけると、怒られたり、嫌な対応をとられることも…。わざわざそんな大変な思いをしてまで、話しかけるなんてまさに虎の尾を踏むようなものかもしれませんね。
2:ボスの命令を無視するなんて、そんな虎の尾を踏むような真似、誰がするものか。
ボスの命令に従うことは絶対! と定められている組織にとって、命令に背くことは危険極まりないことですよね。下手をしたら役職を外されたり、解雇される可能性も…。そんなリスクのあることを誰がするか、というセリフになります。
3:彼の失言は、クライアントの虎の尾を踏んでしまい、結果契約は白紙になってしまった。
こちらは、よりによって虎の尾を踏んでしまった失敗例です。相手が怒ってしまうようなことを口にしたせいで、契約がなしになってしまうことは避けたいですね。
類語や言い換え表現は?
「虎の尾を踏む」以外にも、危険なことをするという意味があることわざがあります。ここでは3つ紹介しますね。
1:薄氷を踏む
「薄氷を踏む」は、「はくひょうをふむ」と読みます。意味は以下の通りです。
《「詩経」小雅・小旻から》非常に危険な状態に臨むことのたとえ。「―思い」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「薄氷」とは文字通り、「薄く張っている氷のこと」。まるで水の底が見えそうなくらい薄い氷の上を歩くのは、とても怖いことですよね…。このことから、非常に危険な状況に臨むことを「薄氷を踏む」と表現します。
(例文)
・難関試験に薄氷を踏む思いで挑戦した。
・彼女に告白することは薄氷を踏む思いでした。
2:一髪千鈞を引く
「一髪千鈞を引く」は、「いっぱつせんきんをひく」と読みます。意味は以下の通りです。
《韓愈「与孟尚書書」から》ひとすじの細い髪の毛で千鈞の重さのものを引く。非常に危険なことをするたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
あまり聞き馴染みがないことわざですが、「一髪千鈞を引く」も非常に危険なことをするたとえです。一本の髪の毛で重いものを引くのは想像するだけでも、ヒヤヒヤしますよね。虎の尾を踏むこととはまた違った怖さがあります。
(例文)
・一髪千鈞を引くように、彼はハイリスクな賭けをした。
・私は兄のように、一髪千鈞を引くようなことはしたくない。
3:一触即発
「一触即発」は、「いっしょくそくはつ」と読みます。意味は以下の通りです。
ちょっと触れればすぐに爆発しそうなこと。危機に直面していること。危機一髪。「―の国際情勢」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
小さなきっかけですぐ危険な事態が発生しそうなことを、「一触即発」と呼びます。身近な例で言えば、酔っ払い同士がぶつかって口論に発展しそうな場面などが思い浮かびますね。両者の間に緊張感が走る、そんな状況です。
(例文)
・A国とB国は今や一触即発の情勢にある。
・2つの政党は一触即発の状態にある。
4:風前の灯火
「風前の灯火(ふうぜんのともしび)」の意味は、以下の通りです。
風の吹くところにある灯。危険が迫っていて今にも滅びそうなことのたとえ。「組織の存立は今や―だ」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
ややニュアンスは異なりますが、「風前の灯火」も危険にまつわることわざです。自ら危険なことに臨む「虎の尾を踏む」とは違い、向こうから危険なことが迫ってきてどうしようもない状況で使われます。
(例文)
・円安の影響で組織の存続は今や風前の灯火だ。
・彼の命はもはや風前の灯火である。
最後に
「虎の尾を踏む」とは、「非常に危険なことに臨むことのたとえ」。危険なことであるとわかっていて、行動に移す場合に使います。リスクがあることを覚悟の上で、挑戦することは勇気が入りますよね。くれぐれも虎の尾を踏まないように用心してください。
TOP画像/(c) Adobe Stock