「臍を噛む」という言葉、正しく読めますか? 「臍」は、「へそ」のほかに、「ほぞ」という読み方もあります。一体「臍(ほぞ)を噛む」とはどのような状態なのでしょうか? そこで本記事では、「臍を噛む」の意味や使い方、類語、「臍」を使った言葉を解説します。
「臍を噛む」の意味と読み方
「臍を噛む」は「ほぞをかむ」と読み、「どうにもならないことを後悔すること」を表します。「臍」とは、「へそ」のことで、お腹の中心にあるもの。どんなに身をかがめて自分の臍を噛もうとしても届かないことから、どうにもならないことに対するもどかしさを意味するようになりました。
「臍を噛む」はあくまでも、すでに終わってしまったことに対して悔いている場合に使用します。ただ単に、「試合に負けて悔しい」という場合には適さないため注意しましょう。
使い方を例文でチェック!
「臍を噛む」はどのように使うのが適切なのか、例文を見ながら覚えてみましょう。
1:父から受け継いだ酒屋が倒産の危機に直面し、兄は臍を噛んだ。
会社が後戻りできないほどの倒産の危機に直面している時ほど、「もっと前に手を打っておけばよかった」と後悔するでしょう。「まだ大丈夫だ」と誤魔化し続けて、何も対策をとらなかったことを悔やんでいる様子が伝わってきますね。
2:どうしてあの時彼女に告白しなかったのだろうかと、今でも彼は臍を噛んでいる。
過去の恋愛を思い出し、「どうしてあの時〇〇しなかったのだろう」と悔やむこともあるでしょう。告白する勇気がなくて、結局好きな人が別の人と結ばれてしまったら、「告白しておけばよかった」と考えてしまうかもしれません。過去の恋愛を引きずって、前に進めない人もいるかもしれませんね。
3:練習をサボっていると、監督から「あとで臍を噛むことになるぞ」と忠告された。
「あとで臍を噛む」とは、「あとで後悔するぞ」という意味合いですね。練習をサボっていることで、メンバーに選ばれなかったり、大事なところでミスすることも考えられます。後から後悔しないように、今から練習に励みなさいという監督からのアドバイスですね。
類語や言い換え表現は?
「後悔すること」にまつわる言葉には、「後悔先に立たず」「後の祭り」などがあります。「臍を噛む」よりも日常会話で使われることの多い表現ですね。
1:後悔先に立たず
「後悔先に立たず」の意味は以下のとおりです。
してしまったことは、あとになってくやんでも取り返しがつかない。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
すでにしてしまったことに対して、「ああしておけばよかった」、「こうしておけばよかった」と後悔しても取り返しのつかないことを「後悔先に立たず」と言います。例えば、受験に失敗して、後から「もっと勉強しておけばよかった」と思うことも、「後悔先に立たず」と言えるでしょう。
(例文)
・大好きだったAちゃんが転校してしまった。こんなことなら告白しておけばよかったな。まさに後悔先に立たずだ。
・後悔先に立たずということにならないように日頃から、家族との会話を大切にしたい。
2:後の祭り
「後の祭り(あとのまつり)」とは、どのような意味でしょうか?
1 祭りのすんだ翌日。また、その日、神饌(しんせん)を下ろして飲食すること。後宴。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
2 祭りのあとの山車(だし)のように、時機遅れで、むだなこと。手遅れ。「今さら悔やんでも―だ」
祭りの道具である山車を、祭りが終わった後に出すことは無意味なように、時期遅れで無駄なことを「後の祭り」と言います。大抵は、終わったことを悔いている時に、「いまさら後悔しても、後の祭りだ」と言ったりしますね。
(例文)
・急いで家に駆けつけたが、すべて後の祭りだった。
・いまさら浮気しないって言ったって、もう後の祭りだよ。
3:覆水盆に返らず
「覆水盆に返らず」は、「ふくすいぼんにかえらず」と読みます。意味は以下のとおりです。
《周の太公望が斉(せい)に封ぜられたとき、離縁して去った妻が復縁を求めて来たが、盆の水をこぼし、この水をもとにもどせたら求めに応じようと言って復縁を拒絶したという「拾遺記」中の故事から。前漢の朱買臣の話として同様の故事が見られる》
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
1 一度別れた夫婦の仲はもとどおりにならないことのたとえ。
2 一度したことは、もはや取り返しがつかないことのたとえ。
器をひっくり返してこぼした水は、元に戻ることはないということから、「一度してしまったことは取り返しがつかない」というたとえです。過去に起きたことはいまさらどうしようもないという点が、「臍を噛む」と同じですね。
(例文)
・彼は元パートナーに復縁を求めたが、断られたらしい。覆水盆に返らずとはこのことだ。
・覆水盆に返らずになることは避けたい。
「臍」を使った慣用句
「臍」という漢字を使った慣用句には、「臍を固める」「臍を曲げる」などがあります。へそは体の中心についているものであることから、人の機嫌や決意を表す傾向があるようです。早速意味を確認していきましょう。
1:臍を固める
「臍(ほぞ)を固める」とは、「決意を固める、覚悟を固める」という意味。何らかの覚悟を決めて行なうことを「臍を固めてことにあたる」と表現したりします。
(例文)
・受験が近くなり、そろそろ臍を固める時期だ。
・臍が固まったのか、息子は家を継ぐ気になったらしい。
2:臍を曲げる
「臍を曲げる(へそをまげる)」は、日常会話でもよく使いますね。意味は以下のとおりです。
機嫌をそこねて意固地になる。また、気に入らないことがあってわざと意地悪する。つむじを曲げる。「つまらないことですぐ―・げる」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
機嫌を損ねて意固地になることを、「臍を曲げる」と表現します。ちょっとしたことで気を害していじける人を見て、「そんなに臍を曲げないでよ」と言ったりしますね。本来真ん中にあって正面を向いているはずのものが、曲がって横を向いていることから、性格や態度が素直ではないことを表すようになったと言われています。
(例文)
・プライドが高い彼は臍を曲げて何も教えてくれない。
・妹はつまらないことですぐに臍を曲げる。
最後に
「臍を噛む」とは、「どうにもならないことを後悔すること」。今起きたことを後悔するのではなく、現在ではもうやり直せないことに対して後悔することがポイントです。どんな人であっても、過去に戻ってやり直すことはできません。後から「こうしておけばよかった」と悔やむことがないように、日々を大切に生きていきたいですね。
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