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この記事のサマリー
・「臍を噛む(ほぞをかむ)」は、「取り返しのつかないことを深く後悔する」という意味のことわざです。
・「臍を噛む」は、すでに手遅れの状況を振り返るときに使い、まだ挽回できる場合には使いません。
・類語には「後悔先に立たず」「後の祭り」「覆水盆に返らず」など、「後悔しても遅い」ことを表すことわざがあります。
「臍(ほぞ)を噛む」という言葉を、ニュースなどで見聞きして、何となく意味は想像できるものの「正しい意味は?」「どんな場面で使うの?」と不安になる人も少なくないのではないでしょうか?
そこで本記事では、ことわざ「臍を噛む」の意味や由来、使い方や類語表現などを紹介します。
「臍を噛む」の意味と読み方は?
「臍を噛む」は、「ほぞをかむ」と読みます。「すでにどうにもならないことを深く後悔する」という意味です。
辞書では次のように説明されています。
臍(ほぞ)を噬(か)・む
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《「春秋左伝」荘公六年から。自分のへそをかもうとしても及ばないところから》後悔する。すでにどうにもならなくなったことを悔やむ。「あとで―・んでも遅い」

「臍を噛む」の由来とは?
「臍を噛む」は、中国の古典『春秋左伝』荘公六年にある一文「亡鄧国者、必此人也、若不早図、後君噬斉」に由来し、自分のへそを噛もうとしても及ばないところから生まれました。
参考:『デジタル大辞泉』、『故事俗信ことわざ大辞典』(ともに小学館)
「臍を噛む」の使い方や注意点は?
「臍を噛む」は「どうにもならない状況を、悔やんでも悔やみきれない」という強い後悔を表す言い回しです。したがって、まだ挽回できる場面や、軽い失敗・残念さを述べたいときには使いません。「もう取り返しがつかない」「今さらどうにもならない」という文脈が前提にある表現だと覚えておきましょう。
では、実際にはどのように用いるのでしょうか? 具体的な例文で確認します。
【例文】
・大事な提案を見送ったことを、今でも臍を噛む思いで振り返っている。
・上司の忠告を聞かず、結局は臍を噛む結果になった。
・「今のうちにやっておかないと、あとで臍を噛むことになるぞ」と先輩に言われた。
いずれの文も「後から取り返せない状況」や「先の行動が結果的に致命的な悔いにつながった場面」を描いており、「臍を噛む」本来の意味が適切に生かされています。

「臍を噛む」を英語で表現するには?
英語では、「臍を噛む」に近い表現として “deeply regret” が使われます。
例文:I deeply regret having done nothing for her.
(彼女のために何もしてあげられなかったことを深く後悔している。)
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
「臍を噛む」と似た意味を持つことわざ
「臍を噛む」と同じように、「後になってから悔やんでも取り返しがつかない」という意味を持つことわざはいくつかありますよね。「臍を噛む」の言い換え表現をチェックしていきましょう。
後悔先に立たず
「後悔先に立たず(こうかいさきにたたず)」は、してしまった後に悔やんでも、もう手遅れであるという意味のことわざです。
辞書では次のように説明されています。
後悔(こうかい)先(さき)に立(た)たず
引用:「デジタル大辞泉」(小学館)
してしまったことは、あとになってくやんでも取り返しがつかない。
【例文】
・上司の忠告を聞かず、後悔先に立たずという結果になった。
・健康を損ねてから生活習慣を見直しても、後悔先に立たずだ。
後の祭り
「後の祭り(あとのまつり)」とは、時機を逃して手遅れになったことをいいます。
辞書では次のように説明されています。
あと‐の‐まつり【後の祭(り)】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
1 祭りのすんだ翌日。また、その日、神饌(しんせん)を下ろして飲食すること。後宴。
2 祭りのあとの山車(だし)のように、時機遅れで、むだなこと。手遅れ。「今さら悔やんでも―だ」
【例文】
・「いまさら謝っても後の祭りだよ」
・「予約がいっぱいで、チケットを取れずに後の祭りだった」
覆水盆に返らず
「覆水盆に返らず(ふくすいぼんにかえらず)」は、「一度こぼした水はもとに戻らない」という意味から、一度失った関係や状況は取り戻せないということを表します。特に「人間関係の破綻」などを表現する際に用いられることが多い言葉です。
辞書では次のように説明されています。
覆水(ふくすい)盆(ぼん)に返(かえ)らず
引用:「デジタル大辞泉」(小学館)
《周の太公望が斉(せい)に封ぜられたとき、離縁して去った妻が復縁を求めて来たが、盆の水をこぼし、この水をもとにもどせたら求めに応じようと言って復縁を拒絶したという「拾遺記」中の故事から。前漢の朱買臣の話として同様の故事が見られる》
1 一度別れた夫婦の仲はもとどおりにならないことのたとえ。
2 一度したことは、もはや取り返しがつかないことのたとえ。
【例文】
・彼は別れた恋人に復縁を求めたが、覆水盆に返らずだった。
・長年築いた信頼を失うと、覆水盆に返らずになってしまう。

他にもある「臍」を使ったことわざ
私たちが日常会話などで使う表現の中には、「臍」を使ったことわざが多くありますよね。「臍を噛む」の他に、「臍」が使われたことわざを見ていきましょう。
臍を固める
「臍を固める(ほぞをかためる)」とは、覚悟を決める・決意を固めるという意味です。例えば、転職や結婚など人生の節目において、迷いを断ち切って前に進むときなどに使われます。
【例文】
・新しいプロジェクトを引き受けると決め、臍を固めた。
・留学の夢を実現するために、臍を固めて挑戦した。
臍を曲げる
「臍を曲げる(へそをまげる)」は、機嫌を損ねて意固地になる、拗ねるという意味の慣用句です。
【例文】
・注意された彼は臍を曲げて口をきかなくなった。
・妹はちょっとしたことで臍を曲げるタイプだ。
「臍を噛む」に関するFAQ
ここでは、「臍を噛む」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「臍を噛む」はどんな場面で使えばいいの?
A. 取り返しのつかない結果を後悔するときに使います。まだやり直しがきく場面では使いません。
Q2. 「臍を噛む」のNGな使い方は?
A2. 「今、臍を噛んでいる」など、「進行中の出来事」に使うのは誤りです。
過去に対する後悔にだけ使います。また、まだ挽回できるような出来事には使いません。
Q3. 「臍を噛む」の類語や言い換え表現は?
A3.「後悔先に立たず」「後の祭り」「覆水盆に返らず」などが挙げられます。
最後に
「臍を噛む」は、過ぎたことをどれほど悔やんでも取り戻せないという教えを持つことわざです。
私たちの生活でも、取り返しがつかないけど、後になって後悔することは少なくありませんよね。そんな時に「臍を噛む」と表現することができます。
しかし、まだ挽回できるような失敗や後悔に対して使うのは、適していません。意味や由来を理解し、正しく表現したいものですね。
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