雨垂れ石を穿つとは? 由来は漢書
座右の銘に使われることもある「雨垂れ石を穿つ」は、「あまだれいしをうがつ」と読みます。「穿つ」は、穴をあける、掘るということで、「雨垂れが長い年月の間に石に穴をあけるように、どんなに小さな努力でも根気よく続けてやれば最後には成功する」という意味です。「点滴石を穿つ」「雨垂れ石窪む」などといわれることもあります。
このことわざの由来は、漢書の『枚乗(ばいじょう)伝』の一節にある「泰山(たいざん)の雨の滴りは石を穿つ」。小国の王が中央政府に対して反乱を起こそうとした際に、それを阻止するため家臣が言った言葉です。
山から染み出る雨の雫が滴り落ちるだけでも、それが繰り返されると石に穴をあける。つまり、どんなに小さな事柄でも積み重なるとやがて大きな災いとなる、ということをたとえたものです。このように、本来は災いを避けるための戒めの言葉が、今では前向きに努力する意味で用いられているのは興味深いですね。
ちなみに四字熟語では「水滴石穿」「水滴石穿」と書きます。
使い方を例文でチェック!
「雨垂れ石を穿つ」は、小さな努力の積み重ねの大切さを説いているだけあって、ビジネス、スポーツ、勉強などの場面で使われることが多い言葉です。座右の銘にする人がいるのも納得ですね。
1:「雨垂れ石を穿つの精神で練習(稽古)を重ね、優勝する(結果を出す)ことができました」
地道に日々の練習や稽古を続けたお蔭で勝つことができました、という意味です。スポーツはもちろんダンス、囲碁・将棋、あるいは漫才や落語など、幅広い分野で使うことのできる例文です。
2:「雨垂れ石を穿つの精神で頑張りたいと思います」
新しい職場や長期的なプロジェクトを任せられたときに、あいさつとして用いるのもいいでしょう。難しい言葉をさらりと使うと一目置いてもらえそうですね。
3:「プロジェクトの成功おめでとうございます。まさに雨垂れ石を穿つですね」
大きなプロジェクトの成功の陰に、努力や頑張りの積み重ねがあったことがよく伝わる例文です。
4:「雨垂れ石を穿つというように、成績が上がらないからといって諦めてはいけない」
学校やテストの成績、あるいは営業成績などでなかなか成果が表れないときの励ましとして使うこともできます。
類語や言い換え表現は?
「雨垂れ石を穿つ」の類語の共通点は、「小さなことであっても続ける」という意味合いが込められていること。それぞれに少しずつニュアンスは異なりますので、例文も参考に、伝えたい内容に合わせて使い分けましょう。
1:塵(ちり)も積もれば山となる
小さなこともおろそかにしてはならない、また、小さな努力を続けていくといつか大きな成果が得られる、という2つの意味があります。
(例文)
「塵も積もれば山となるというように、小さなミスも繰り返していれば大きく信用を落とすことになるよ」
小さなことをおろそかにしてはいけない、という戒めの意味です。
「塵も積もれば山となるで、ビジネスに必要な英語のフレーズを1日5つ覚えるようにしています」
「500円貯金を始めました。塵も積もれば山となる!」
「健康のため毎日少しずつでも歩きましょう。塵も積もれば山となる、ですよ」
上3つの例文は、小さな努力を続けることの大切さを表現しています。
2:石の上にも三年
冷たい石の上でも三年座り続ければ暖まるように、たとえつらくても辛抱強く頑張ればやがて報われるということ。3年というのは具体的な年月ではなく「長い間」のたとえですので使い方に気をつけて。
(例文)
「石の上にも三年、この研究の重要性がようやく認められました」
「慣れるまでは時間がかかるよ。石の上にも三年というだろう」
「まだみんなみたいに上手に踊れないけど、石の上にも三年というから頑張ってみよう」
我慢しなくては、辛抱しなくては、という精神論ではなく、例文のように、「続けていれば報われるよ」「続けていれば結果が出るよ」という前向きなイメージで使うのがいいでしょう。
3:継続は力なり
わずかなことでも続けて行なえば成果となって現れる、小さな努力も続けてやればやがて成功につながる、という意味です。
(例文)
「アーティストとして認知度が上がってきたね。まさに継続は力なりだ」
「大きな仕事がいただけるようになりました。継続は力なりを実感しています」
「継続は力なり。中途半端に投げ出さないことが肝心だよ」
「継続は力なり!今日からダイエットを始めよう」
続けることの大切さ、続けるぞ! という意気込み。どちらの意味でも使うことができますね。
対義語は?
努力をすれば報われる、とは反対の意味を持つことわざもあります。それは、「焼け石(やけいし)に水」。焼けた石に少しばかりの水をかけても冷めないように、努力や援助が小さ過ぎて効果が上がらない、ということです。
「努力が報われない」という意味もありますが、「このままでは焼け石に水ですよ」という風に、もう少し努力や援助が必要だ、効果を上げるためにはこれでは足りない、という意味にも使われます。
(例文)
「試験は明日! 今から頑張っても焼け石に水だよね」
「金銭的な援助も焼け石に水でした」
これは、努力や援助が小さ過ぎて効果が上がらない、上がらなかったというときの例文です。
最後に
「雨垂れ石を穿つ」を普段に使う機会はあまりありませんが、すぐに結果が出なくても、そこに向かってコツコツと努力することの大切さを教えてくれる言葉。座右の銘にする人が多いのも納得ですね。言い換え表現もいくつかありますので、まずはそれぞれの意味をしっかり理解することから始めてみましょう。
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