「〇〇さんは清濁併せ呑む人だ」と聞くと、どのような人物をイメージしますか? 「清濁併せ呑む」は主に、リーダーなど人の上に立つ人に対して使われる言葉です。ビジネスシーンでは褒め言葉として使われることもあるため、意味を押さえておくと良いでしょう。そこで本記事では、「清濁併せ呑む」の意味や使い方、類語・対義語を解説します。
「清濁併せ呑む」は?
「清濁併せ呑む」は、「せいだくあわせのむ」と読みます。意味は、以下のように記載されています。
心が広く、善でも悪でも分け隔てなく受け入れる。度量の大きいことのたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
良いことも悪いことも、区別せずに受け入れることを「清濁併せ呑む」と言います。綺麗なものだけでなく、悪いものをも受け入れる懐の深さを持っている人のことを「あの人は、清濁併せ呑む人だ」と表現しますね。
「清濁併せ呑む」の、「清」は、「きよい、けがれのない」という意味。「濁」は真反対の「けがれ」や「にごっていること」。どちらも水をイメージさせる漢字ですね。自然界の川や海では、透明で綺麗な水もにごって汚い水も区別することはありません。どんな状態の水でもあるがままに受け入れて呑み込んでいく姿が、やがて人としての有りようにつながっていったのかもしれませんね。
使い方を例文でチェック!
「清濁併せ呑む」は、会話の中でどのように使われるのでしょうか? 例文を交えて紹介するため、参考にしてみてください。
1:社長はまさに、清濁併せ呑む人ですね。
「清濁併せ呑む」は、善悪を差別せず受け入れる懐の深さを褒める表現です。主に、政治家やリーダーなど人の上に立つ人物に使うことが多いでしょう。人には必ず良い面も悪い面もあるもの。
自分にとって都合のいい人物だけを重用して、そりが合わない人は排除するようでは、人の上に立つ人物としてふさわしいとは言えません。自分の価値観にこだわらず、自分とは異なる意見を積極的に受け入れる姿勢が必要と言えるでしょう。
2:私も上司のように清濁併せ呑む人でありたい。
目上の人の公平な態度を見て、「私もそのような人になりたい」と憧れることはありませんか? 人は、自分と違う考えや価値観を持っている人のことを否定してしまうことも少なくありません。そんな中、偏見を持たず、自分と異なる考えを持つ人を受け入れられる人は、貴重な存在と言えるでしょう。好き嫌いで判断せず、まず受け入れてみる姿勢も必要なのかもしれませんね。
類語や言い換え表現は?
「清濁併せ呑む」のように、「良いものも悪いものも受け入れる」ことを意味する言葉には、「来る者拒まず去るもの追わず」「懐が深い」が挙げられます。それぞれの使い方を例文でチェックしてみてください。
1:来る者拒まず去るもの追わず
「来る者拒まず」とは、「こちらにやって来る相手は、誰であっても受け入れること」。どんな肩書きや立場の人間でも、拒否するのではなく受け入れる度量の大きさを表します。主に、人間関係における付き合い方を表した言葉と言えるでしょう。
「来る者拒まず」という響きからは、相手を選ばずに付き合うというニュアンスが感じ取れます。誰とでも分け隔てなく接するスタンスであることを伝える場合に、「来る者拒まず」を使うことが多いでしょう。「来るもの拒まず去るもの追わず」とも言いますね。
(例文)
・「来るもの拒まず去るもの追わず」というように、彼は人間関係に執着しない性格のようだ。
・佐藤さんは上司になってから、「来るもの拒まず去るもの追わず」を心がけているようだ。
2:懐が深い
人柄を伝える時に使われる、「懐が深い」。辞書には、このように記載されています。
1 相撲で、腕と胸のつくる空間が大きく、相手になかなか回しを取らせない。
2 心が広く、包容力がある。「―・い人物」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
一般的には、2番目の意味が使われますね。元々は、相撲で両腕と胸との間に空間を作り、相手に回しを与えないことを意味する言葉だったとか。それが転じて、現在のような度量の広い人柄に対して使われるようになったようです。
(例文)
・「結婚するなら懐が広い、年上の男性が良い」と姉は話していた。
・Aさんは懐が深く、どんなに忙しい時でも私の相談にのってくれました。
対義語はあるの?
「清濁併せ呑む」の対義語に当たるものとしては、「勧善懲悪」が挙げられるでしょう。意味は、以下の通りです。
善事を勧め、悪事を懲らすこと。特に、小説・芝居などで、善玉が最後には栄え、悪玉は滅びるという筋書きによって示される、道徳的な見解にいう。勧懲。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「勧善懲悪」とは、言葉の通り、良いことを勧め、悪を懲らしめること。昔話の『桃太郎』のように、正義の味方である桃太郎が悪さをしている鬼を懲らしめるストーリーは、まさに「勧善懲悪」を表した物語と言えるでしょう。「勧善懲悪」は、良いものは賞賛するものの、悪いものは排除するため、善悪全てを受け入れる「清濁併せ呑む」とは、正反対だといえますね。
最後に
良いことも悪いことも、区別せずに受け入れることを「清濁併せ呑む」と言います。主に、心が広いことを褒める言葉なので、「〇〇さんはリーダーとしてふさわしい」というニュアンスで使ってみることもできるでしょう。自分が上の立場に立つ時は、心に留めておきたい言葉ですね。
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