「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の意味とは?
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という言葉を、聞いたことはありますか? 実はこのことわざ、2つの意味が含まれています。それぞれの意味について見ていきましょう。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」は、2通りの意味があります。1つは、どんなに苦しいことも、過ぎ去ってしまえば簡単に忘れてしまうということ。そしてもう1つは、苦しい時や辛い時に人から受けた恩も、その苦しさが去ると忘れ、ありがたく思わなくなるということです。たとえどんなに熱いものを口にしても、喉を通り過ぎて飲み込んでしまえば、熱かったことを忘れてしまいますよね。
人間というのは、都合良く物事を忘れてしまうものです。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」は、このような人間の特徴をネガティブに表現したことわざだと言えるでしょう。例えば、提出物をいつも締切ギリギリに出す人はこれにあてはまるかもしれません。睡眠も取れず、徹夜で焦りと時間に追われながらタスクに取り組む…。
そして毎回、「もっと前から計画を立てて進めればよかった」と後悔するのです。しかし、結局その苦労をすぐに忘れ、また同じ事を繰り返す。まさに「喉元過ぎれば熱さを忘れる」と言えるでしょう。
2つ目の意味についても同じです。恩を受け、最初は感謝の気持ちを抱いていても、時間が経てばそれが薄れ、忘れてしまうのですね。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」は、我々の愚かな部分を批判したことわざとも捉えられるでしょう。
使い方を例文でチェック!
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」は、皆さんが普段からよく耳にする表現ではないかもしれません。しかし、日常生活やビジネスなど様々な場面で使えることわざです。以下ではいくつか例文を紹介していますので、さっそく使い方を確認していきましょう。
1:弟はギャンブルで多額の借金を背負ったというのに、返済が終わったらまたギャンブルを始めた。まったく喉元過ぎれば熱さを忘れる人だ。
人間は同じ過ちを何回も繰り返してしまうものです。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」は、そんな私たちに対する忠告とも言えるでしょう。同じ過ちを繰り返してしまうのには、「今回は大丈夫だろう」という過信があるからかもしれませんね。
2:あの子は、あんなにこっぴどく怒られたのにも関わらず、また同じミスを繰り返している。まさに喉元過ぎれば熱さを忘れるだな。
ビジネスにおいて、ミスや失敗をしてしまった時は、いち早くそれを修正することが大切です。誰でも失敗することはあるため、失敗を嘆く必要はありません。ただ、その失敗を受け入れて改善していかなければ、信用を失ってしまう可能性もあるでしょう。自分の失敗や、その時に感じた悔しさは忘れてはならないものです。
3:友達が失恋した時期は、呼び出される度に朝まで話を聞いてきた。喉元過ぎれば熱さを忘れるというもので、彼女に恋人が出来た今は一切連絡がこなくなった。
上記の2つは「人はどんな苦労や痛みも、過ぎ去ってしまえば忘れる」という意味の例文でした。この例文は「苦しい時に恩を受けた人への感謝も、苦しさがなくなれば忘れてしまう」という意味のもの。辛い時に、親身に寄り添ってくれる友達はとても貴重な存在です。日頃の感謝を忘れずに、これからも大切にしていきたいですね。
4:喉元過ぎれば熱さを忘れるというが、私が長い間面倒を見ていた後輩は今でも慕ってくれている。
皆さんは、恩師やお世話になった先輩がいるでしょうか? 「今の自分があるのはその人のおかげだ」という人もいるかもしれませんね。どれだけ親しくしていても、環境が変われば会う頻度や連絡の頻度も減ってしまいます。しかし、もらった恩は忘れないように心に留めておきたいですね。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の類語表現を紹介
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の類語には、「雨晴れて笠を忘る(あめはれてかさをわする)」「暑さ忘れて蔭忘る(あつさわすれてかげわする)」「魚を得て荃を忘る(うおをえてうえをわする)」などが挙げられます。それぞれの意味について見ていきましょう。
1:雨晴れて笠を忘る(あめはれてかさをわする)
意味は、困難が過ぎ去ると、その時受けた恩も忘れてしまうということ。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の2つ目の意味と同じですね。雨が降っている時は必要な笠も、雨がやめばその存在すら忘れてしまうことが由来だそうです。
2:暑さ忘れて蔭忘る(あつさわすれてかげわする)
これも「雨晴れて笠を忘る」と同じ意味をもつことわざです。暑い時は求めていた物陰の涼しさも、暑さが去れば、そのありがたみを忘れてしまうということ。転じて、与えてもらった恩を忘れるのが早いという意味で使えるでしょう。
同義で「病治りて医師忘る(やまいなおりていしわする)」ということわざもあります。こちらは、病気が治ると治してくれた医師のことを忘れてしまうことから生まれた言葉のようです。
3:魚を得て荃を忘る(うおをえてうえをわする)
荃(うえ)とは魚や兎を捕まえる、竹製の道具のことを指します。獲物を捕らえる時には必要である荃も、捕らえた後にはその存在を忘れてしまう。つまり、目標を達成してしまえば、それに役立ったもののありがたみも忘れてしまうという意味です。「兎を得て蹄を忘る(うさぎをえてわなをわする)」も同義で使うことができるでしょう。
英語表現を解説
最後に「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の英語表現を見ていきましょう。この機会にこちらも覚えてみてくださいね。
Danger past, god forgotten
直訳すると「危険が去れば神様を忘れる」となりますね。dangerは「危険」、pastは「過ぎる」、godは「神様」、forgottenは「忘れる」を意味します。困っていてどうしようもない時、私達は神様に助けを求めて祈りますよね。しかし、その困難が過ぎ去れば、神様の存在を忘れてしまうということから生まれた言葉です。
英語のことわざのようなものでしょう。
最後に
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の意味や使い方は理解していただけましたか? この言葉は、人間の都合良く勝手な性格に対する忠告とも捉えられるでしょう。困難があるないに関わらず、常日頃から感謝の気持ちを忘れない人になりたいですね。
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