「同じ穴のムジナ」の意味や由来とは?
小説やテレビドラマなどで、「同じ穴のムジナだよ」というセリフを耳にしたことはありませんか? 具体的に「ムジナ」が何を指しているのか知らないまま、なんとなく意味を理解して使っている方も多いはず。今回は、「同じ穴のムジナ」ということわざを取り上げて、その意味や使い方、類語などを解説します。
意味
「同じ穴のムジナ」とは、「一見関係がないようでも、実は同類・仲間であることのたとえ」です。多くは、悪事を働いたり悪戯をする人に対して使われます。「良い人ぶってるけどどうせ同じ穴のムジナだよ」というように否定的に用いられることが多いですね。「同じ穴の狢」と漢字で書くこともあります。「狢」という漢字は、狸のたぐいを指し、音読みは「カク・バク」。主に人を罵る時に使われる漢字です。
由来
「同じ穴のムジナ」の「ムジナ」とは、主に「アナグマ」のこと。ただし、生物学上分類されている動物ではなく、狸やテン、ハクビシンなどの穴を掘って生活する哺乳類動物の俗称として使われています。これらの動物は、1つの穴に集まって生活する習性があるため、「同じ穴のムジナ」という言葉ができたのだそう。
また、「同じ穴のムジナ」が、悪さをする仲間同士を指すのは、「ムジナ」と呼ばれる狸や狐が人を化かすといわれたことから。昔話でも、狸や狐が何かに化けて食べ物を盗んだりするなど、人間を困らせる存在として描かれていますよね。このような悪さや悪戯をする動物たちの姿を悪事を働く人間に重ね合わせて、「同じ穴のムジナ」ということわざが生まれたようです。
使い方を例文でチェック!
「同じ穴のムジナ」には、似たもの同士というニュアンスがありますが、あくまでも悪い面が似ている場合に使われます。例文をチェックして、正しい使い方を覚えましょう。
1:借金する奴は許せないというけれど、親からお金を借りている君も同じ穴のムジナだよ。
「同じ穴のムジナ」とは、一見関係がないように見えて、実は同類であることのたとえ。遅刻癖がある、浪費癖があるなど悪い面が似ている場合に使うことがポイントです。反対に、人に優しいなどの長所が似ている場合には使えないため注意しましょう。
2:A子は彼氏の金遣いが荒いと嘆いていたけど、結局彼女も同じ穴のムジナだよ。
「同じ穴のムジナ」は、会話の中で「同類じゃないか」というニュアンスで使われることがほとんどです。自分のことを棚に上げて、嘆いたり嘲笑ったりしているけれども、実は似たもの同士であることを第三者に指摘されています。
ムジナとはどんな動物?
先述したように、「ムジナ(狢)」とは、哺乳類動物の狸やアナグマの俗称です。古くから人を化かす存在として妖怪視されてきました。山道を歩いていると砂をまきかけてきたり、僧侶になりすましたけれども犬に噛み殺されてしまったりなどの話が昔話として残っています。アナグマは、イタチ科アナグマ属の動物で、体長は45センチから90センチ。ずんぐりとした体型で、褐色の毛で覆われています。
見た目は狸に似ていますが、尻尾が太く短いことや、耳が小さいことなどの違いがあります。冬になると太く鋭い爪でトンネルを堀り、数頭から数十頭で集まって生活することから「同じ穴のムジナ」と呼ばれるようになったのだそう。毛の質が良くないため、毛皮として利用されることは少なく、髭剃り用のブラシや毛筆に使われたり、冬場には「たぬき汁」として食べられることもあるようです。
類語や言い換え表現とは?
「同じ穴のムジナ」の他にも、悪い意味で似たもの同士という状態を表すことわざがいくつかあります。それぞれの詳しい意味をチェックしてみましょう。
1:同じ穴の狐・同じ穴の狸
「同じ穴のムジナ」の類語は、「ムジナ」を狐や狸に言い換えた「同じ穴の狐」や「同じ穴の狸」です。先ほど説明したように、「ムジナ」は、特定の動物を指す言葉ではないため、このように具体的な動物の名前を挙げて言い換えることもできます。ですが、一般的には「同じ穴のムジナ」の方が広く浸透していますね。
・弟は勉強ができないと笑っているけれども、結局君も同じ穴の狐だよ。
・クラスメイトには不良が多いけれども、決して同じ穴の狸にはなりたくない。
2:五十歩百歩
「五十歩百歩」とは、「少しの違いはあっても、本質的には同じであること」。「戦闘の際に50歩逃げた人が100歩逃げた人を臆病だと笑ったが、逃げたことに変わりない」という中国の寓話が由来なのだそう。他人を嘲っている本人こそが実は同じような悪者であるという点が、「同じ穴のムジナ」と似ています。どちらも悪い意味として使うことがポイントですね。
・10分の遅刻も15分の遅刻も五十歩百歩だ。
・「A君は背が小さい」とあなたは笑っているけれど、五十歩百歩だよ。
3:どんぐりの背比べ
「どんぐりの背比べ」も「同じ穴のムジナ」の類語として挙げられます。どんぐりの形や大きさはどれも似たり寄ったりなので、大きな差はみられません。大抵は学校や職場など、誰もが平凡で、抜きんでて優れた才能を持つ人がいないという困った状態を指すことわざです。「同じ穴のムジナ」のように悪さをするという意味は含まれていませんが、似たもの同士が集まっているという点では類語といえるでしょう。
ちなみに、漢字で「団栗の背比べ」と書いたり、「一寸法師の背くらべ」という言い換え表現もあります。
・中間試験におけるクラスの平均点数は65点だった。どんぐりの背比べとはこのことだ。
・今年の美少女コンテストは抜きんでた人がおらず、どんぐりの背比べのような状態だった。
最後に
「同じ穴のムジナ」の意味は理解できましたか? 一見関係がないようでも、実は同類・仲間であることのたとえとして使われる「同じ穴のムジナ」。悪事を働いたり、喧嘩癖があるなど悪い面が似ている人同士を指すことわざなので、褒め言葉としては使用できません。大体は、本人たちがいない状況で使われることが多いでしょう。また、「ムジナ」とは、狸やアナグマなどの哺乳類動物の俗称ということも併せて覚えておきたいですね。
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