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この記事のサマリー
・「同じ穴のムジナ」の意味は、「見かけは違っても実は同類(多くは否定的)」です。
・使い方には要注意。公の場や人物評での使用は気をつけましょう。
・英語表現は “birds of a feather”が挙げられます。
「あの人たちは同じ穴のムジナだよ」というセリフを耳にしたことはありませんか? 響きはユニークですが、意味や背景を正しく理解せずに使うと、思わぬ誤解を招くことがあります。
この記事では、ことわざ「同じ穴のムジナ」について、意味・由来・使い方・類語・英語表現まで丁寧に解説します。
「同じ穴のムジナ」とは? 正しい意味と現代での使い方
まずは、意味から確認していきましょう。
「同じ穴のムジナ」の基本的な意味
「同じ穴のムジナ」とは、表面上は違って見えても、実は同類であること、特に好ましくない性質や行いが共通していることを指します。
辞書では次のように説明されていますよ。
同(おな)じ穴(あな)の狢(むじな)
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
一見関係がないようでも実は同類・仲間であることのたとえ。多くは悪事を働く者についていう。同じ穴の狸(たぬき)(狐(きつね))。一つ穴のむじな。
例えば、職場で「彼らは立場が違っても、同じ穴のムジナだ」と言われる場合、多くは皮肉や批判のニュアンスが含まれます。
「同じ穴のムジナ」の歴史的背景
「ムジナ(狢)」とは、広く東国で「狸(たぬき)」のことを指します。もともとは、「同じ穴の狐(きつね)」という言葉が使われていましたが、近代になると「ムジナ」が多く使われるようになりました。
狐にしても狸にしてもムジナにしても、共通しているのは「同じ穴に住んでいる」こと。そうした習性をもとに使われ始めたようです。
参考:『日本国語大辞典』、『故事俗信ことわざ大辞典』(ともに小学館)

「同じ穴のムジナ」の例文と使用シーン
日常会話・ビジネス・SNSなど、ことわざを使う場面によって受け取られ方は大きく変わります。ここでは「使っていい場面」と「避けた方がいい場面」を例文とともに紹介します。
日常会話での例文
気心の知れた友人同士の会話なら、冗談交じりに使いやすい表現です。例えば、友人が似たような失敗をしたときに「私たち、同じ穴のムジナだね」と笑い合うなど、共感を示すことができますよ。
例文:
「昨日も寝坊? やっぱり同じ穴のムジナだね(笑)」
「ダイエット中でも甘い物食べちゃうって、私たち同じ穴のムジナだよね」
ただし、相手が気にしていることを揶揄するのは避けましょう。冗談でも傷つける可能性があります。
ビジネスでの例文
ビジネスの場では、批判的なニュアンスが強く出てしまいがちですが、内部の雑談や議論であれば、状況を簡潔に表す比喩として機能します。
例文:
「A社もB社も環境対策をアピールしてますが、対応の遅さでは同じ穴のムジナです」
「会議では対立していましたが、結局は同じ穴のムジナかもしれません」
使用する際は、相手の立場や関係性を十分考慮しましょう。不用意な使用は信頼を損なう恐れがあります。
SNS・文章での活用例
SNSや記事では、風刺や批判としての使い方が多く見られます。ただし、特定の人物や団体を直接名指しにすると炎上リスクが高まるため、抽象的な対象や比喩的な表現を心がけましょう。
例文:
「結局どの政党も同じ穴のムジナ、というオチ」
「ドラマの登場人物、全員同じ穴のムジナ感がすごい」
SNSでは引用元や背景説明を添えることで、誤解を防ぐことができるでしょう。

類語や言い換え表現とは?
「同じ穴のムジナ」の他にも、悪い意味で似たもの同士という状態を表すことわざがいくつかあります。それぞれの詳しい意味をチェックしていきましょう。
五十歩百歩
「五十歩百歩」とは、「少しの違いはあっても、本質的には同じであること」。「戦闘の際に50歩逃げた人が100歩逃げた人を臆病だと笑ったが、逃げたことに変わりない」という中国の寓話が由来なのだそう。
他人を嘲っている本人こそが実は同じような悪者であるという点が、「同じ穴のムジナ」と似ています。どちらも悪い意味として使うことがポイントですね。
例文:10分の遅刻も15分の遅刻も五十歩百歩だ。
どんぐりの背比べ
どんぐりの形や大きさはどれも似たり寄ったりなので、大きな差は見られません。大抵は学校や職場など、誰もが平凡で、抜きんでて優れた才能を持つ人がいないという状態を指すことわざです。「同じ穴のムジナ」のように悪さをするという意味は含まれていませんが、似たもの同士が集まっているという点では類語といえるでしょう。
ちなみに、漢字で「団栗の背比べ」と書いたり、「一寸法師の背くらべ」という言い換え表現もあります。
例文:社内コンペの企画案はどれも似たり寄ったりで、まさにどんぐりの背比べだった。
「同じ穴のムジナ」の英語表現は?
「同じ穴のムジナ」は英語で、“birds of a feather”と表すことができます。
“birds of a feather”は、直訳すると「同じ羽毛の鳥」という意味ですが、通例としては「悪い意味で同類の人々」という意味があります。“Birds of a feather flock together.”とすると、「同じ羽毛の鳥は一つに集まる(類は友を呼ぶ)」という意味になりますよ。
参考:『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)
ムジナとはどんな動物?
先述したように、「ムジナ(狢)」とは、哺乳類動物の狸またはアナグマの俗称です。古くから人を化かす存在として妖怪視されてきました。山道を歩いていると砂をまきかけてきたり、僧侶になりすましたけれども犬に噛み殺されてしまったりなどの話が昔話として残っています。
アナグマは、イタチ科アナグマ属の動物で、体長は45センチから90センチ。ずんぐりとした体型で、褐色の毛で覆われています。
見た目は狸に似ていますが、尻尾が太く短いことや、耳が小さいことなどの違いがあります。冬になると太く鋭い爪でトンネルを堀り、数頭から数十頭で集まって生活することから「同じ穴のムジナ」と呼ばれるようになったといわれています。
参考:『日本大百科全書』(小学館)

「同じ穴のムジナ」に関するFAQ
ここでは、「同じ穴のムジナ」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. NGな使い方は?
A. 初対面や公の場で、特定の人や団体を批判する意図で使うのは避けましょう。
相手が「侮辱された」と受け止められる可能性が高く、関係を悪化させる恐れがあります。
Q2. 類語にはどんなものがありますか?
A. 「五十歩百歩」「どんぐりの背比べ」などがあります。
最後に
「同じ穴のムジナ」は、面白い響きを持つことわざではありますが、ネガティブな意味が強く、使い方次第で相手を傷つける可能性もあります。状況や関係性を踏まえて慎重に使いましょう。
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