「飛礫」の読み方は「つぶて」
「飛礫」は「つぶて」と読み、意味は小石を投げつけることです。また、投げつける小石そのものを指すこともあります。
「飛礫」ではなく「礫」と書いても間違いではなく、過去に記された小説などでは「礫」の表記も確認できます。
つぶて【飛=礫/×礫】
出典:小学館 デジタル大辞泉
小石を投げること。また、その小石。「―をうつ」「梨なしの―」「紙―」
「飛礫」の使い方
「飛礫」という言葉は、おもに以下の形で使用されます。
・飛礫を打つ(つぶてをうつ)
・梨の飛礫(なしのつぶて)
見聞きしたことはあっても、「具体的な意味は?」と問われると戸惑うかもしれません。ここでは、それぞれの正しい意味を紹介します。

「飛礫を打つ(つぶてをうつ)」
「飛礫を打つ」には、「小石を投げる」という意味があります。鎌倉時代中期の話説集「古今著聞集(ここんちょもんじゅう)」で記載がみられている言葉です。
古今著聞集には、平安中期から鎌倉初期にかけての神話や民話などがおよそ700話も綴られています。
また、「飛礫を打つ」は「飛礫打(つぶてうち)」の形でも使用できます。どちらも小石を投げる様子を表す言葉として覚えておきましょう。
「梨の飛礫(なしのつぶて)」
投げられた飛礫のように連絡がないことは、「梨の飛礫」と言い表されます。
放り投げた小石の多くは、手元に戻って来ることはありません。同様に、便りを送ったのに返事がないことや、無視されている状態を表す言葉です。
「梨」は果物を指す言葉ですが、ここでは「無し」という意味を持ちます。日常会話では、以下のように使用してください。
・いくら連絡をしても、まったくの梨の飛礫だ
・彼とは先月メールのやりとりをして以来、すっかり梨の飛礫で今はどうしているのかわからない
・各方面へ営業メールを送るも、いまだどこからも返事がない。まさに梨の飛礫といった状態だ
・クライアントに連絡するも梨の飛礫で、このままでは契約が破棄になるのではと部署内が不安に包まれている
▼あわせて読みたい
「飛礫」の類語や言い換え表現
小石を表す「飛礫」には、以下のような類語や言い換え表現があります。
・石
・石塊(いしころ)
・砂利(じゃり)
いずれも石に関する言葉ですが、細かなニュアンスは異なります。ここでは、それぞれの違いを確認していきましょう。

「石」
岩より小さく、砂より大きいものは「石」と言い表します。「石」は多様な意味を持つ言葉です。
岩石や鉱石を表すこともあれば、墓石を表すことも。さらに「石のように黙り込む」「石のように動かない」「石頭(いしあたま)」など、物事の状態をたとえる際に使える言葉です。
・彼女は、その質問に対して石のように黙り込んでしまった
・疲れがたまっているのか、体が石のように動かない
・まったく、話のわからない石頭な人だ
「石」はおもに、硬いものや冷たいもののたとえに適しています。暮らしの身近な存在であり、活用例の多い語句といえるでしょう。
「石塊(いしころ)」
「小さい石」という意味を持つ「石塊」は、「飛礫」とニュアンスの近い言葉です。小石の口語的な表現といえます。
親しい人との話し言葉や、日常会話に適した表現のため、かしこまったシーンでは「小石」を使うことをおすすめします。
「石塊」と書いて「いしころ」と読むことも含め、小さな石を表す言葉として覚えておきましょう。
「砂利(じゃり)」
小石に砂が混ざったものは、「砂利」と言い表されます。砂利は、ほかの語句と組み合わせて使うことが多い言葉です。
・砂利道(じゃりどう・じゃりみち)
・玉砂利(たまじゃり)
・砂利トラ(じゃりとら)
砂利道とは、舗装されていない道路のことです。砂利の粒が大きなものは、玉砂利と呼ばれます。
砂利トラの「トラ」はトラックやダンプカーのことです。砂利トラは、おもに砂利を運搬します。
さらに、「砂利」には石に関すること以外の意味も。かつて、劇場を見物する子どもをそう呼んだことから「子ども」という意味があったり、江戸時代には町人や百姓が座る場所を指したりと、幅広い意味を持つ語句です。
「石を投げる」ことに関する言葉
ここからは、「飛礫を投げる」のように石を投げることに関する語句を紹介します。
・一石を投じる(いっせきをとうじる)
・一石二鳥(いっせきにちょう)
それぞれの使用例を参考にし、ぜひ日常会話で活用してください。

「一石を投じる(いっせきをとうじる)」
「一石を投じる」の「一石」は、石ではなく「問題」を指しています。水に石を投げると波紋が広がるように、周囲に影響を及ぼす問題を投げかけることです。
・彼女の発言は、業界に一石を投じた
・「誰もが働きやすい職場環境に」という彼女の言動は、これまでの仕事のあり方に一石を投じるものだった
▼あわせて読みたい
「一石二鳥(いっせきにちょう)」
「一石二鳥」とは、1つの石で2羽の鳥を捕まえることです。転じて、1つのことで2つの利益を得ることを意味します。
同様の意味を持つ四字熟語には、「一挙両得(いっきょりょうとく)」や「一挙両全(いっきょりょうぜん)」などが挙げられます。
もともとは、西洋のことわざ「To kill two birds with one stone.」に由来する四字熟語です。
・利益も上がって業務効率化につながるなど、新システムの導入はまさに一石二鳥の計画だった
・今月からランチはお弁当を持参することにした。食費が浮くし栄養バランスも整うし、一石二鳥だ
▼あわせて読みたい
「飛礫」の読み方を知り正しく活用しよう
「飛礫」は「つぶて」と読み、小石や小石を投げることを意味します。「梨の飛礫」は、小石を投げたときのように、相手から連絡が返ってこないことです。
また、大きいものは「石」、それより小さいものは「石塊」、砂が混ざったものは「砂利」など、石は形状によって呼び方が変化します。関係することわざがあることからも、石は私たちにとって身近な存在といえるかもしれません。
「飛礫」の読み方や意味も含め、それらを理解し、ぜひ日常会話に役立ててください。
メイン・アイキャッチ画像:(c)Adobe Stock