「宮野さんと仕事をして楽しかった」って言われたい
前編で作品やキャラクターの魅力について語っていただいたアニメ『TO BE HERO X』は、人々の〝信頼値〟によって生まれたヒーローたちの物語。声優・俳優・アーティストとしてエンタメ界の第一線を走り続ける宮野さんもまた、多くの人にとっての憧れのヒーロー。ただ、子供のころの宮野さんは今とは違っていたようで…。
「僕、クラスの人気者になりたい小学生だったんです。何もしていないのに人気になっちゃう子っているじゃないですか。そういうカリスマになりたかったんですけど(笑)、僕はクラスを盛り上げようと頑張っても、放課後だれからも誘われない子で…(苦笑)。ひとりで石を蹴りながら家に帰って、録画したTVアニメを観るという生活を送っていました。『TVの中にいる憧れのスターになりたい!』と思っているのになれない。そんなジレンマを抱えた小学生でしたね」
▼インタビュー前編

そんな宮野さんが考える〝ヒーロー〟とは…みんなから慕われ、信頼され、まわりに人々が集まってくるような人物なのだろうか。
「僕が理想とするのは『楽しかった』と言ってもらえる人。『宮野さんと仕事をして楽しかった』って言われたいんです。声優として俳優として歌手として、今いろいろなことをやらせていただいているんですけど、どの現場でも『なんか楽しかったな』と思ってもらえる、そういう人になりたいなって。みんなが楽しんでくれていることで自分も安心できる、そんな気持ちも含まれていますけど、楽しい時間って働く上ですごく大事なものだと思うから」
ひとりで楽しむのではなく、〝楽しい〟を一緒に探していく
自分も楽しく、まわりも楽しく――言葉にするのは簡単だが、現実ではなかなか難しいこと。というのも、そのためには自分自身も楽しんでいる必要があるからだ。
「その想いを言語化してくださった方がいるんです。それはラッパーのKREVAさん。あるとき『なんでそんなに大変なのに笑顔なんですか?』と聞いたら、『現場は楽しいほうがいいでしょ』ってサラッとかっこよく返されて。なんてかっこいいんだろう、僕もこうありたいなって、KREVAさんのあの一言をずっと大切にしています。だから、僕の理想のヒーロー像はKREVAさんなのかもしれません」

〝楽しい〟をつくるために宮野さんが意識していること、それは「楽しもうとしないこと」だという。
「つい自分だけが楽しくなっちゃう瞬間ってあるじゃないですか。それってひとりよがりで、まわりが見えていない。ひとりで楽しもうとしないで、一緒に〝楽しい〟を探していく…〝楽しい〟を共有することにベクトルが向いていれば、自分もまわりの人たちも楽しめる時間や空間がつくれる気がするんです。ただ、自分が楽しむ気持ちももちろん大事。その共存はすごく難しいんですけど、〝一緒に探す〟という思いがあるだけで向き合い方は変わってくるんじゃないかなって思うんです」
今の自分なら乗り越えられる、そう信じてチャレンジしている
ジレンマを抱えながらTVの中のスターを眺めていた小学生も、今では42歳。憧れていたエンターテインメントの最前線を日々駆け抜けている。
「自分でも思うんですけど、僕の生き方って本当に参考にならなくて。というのも『なんでそんなにも頑張るの?』って言われてばかりだし、『大変そうだからやってみる』みたいな選択ばかりしているから(笑)。ただ、それは決して〝無謀〟ではないんです。『今の自分なら乗り越えられる』と自分を信じてチャレンジしているから。…で、あとから泣きを見るっていうのが定番の流れなんですけど(笑)。でも、その経験は確実に僕の力になってくれていて。大変かもしれないけど、僕はそれを選ぶのがいいんです」

そう過去を振り返りながら、Oggi読者に向けてこんな人生のアドバイスを贈ってくれた。
「あなたが生きていく上で『こうなれたら嬉しい』『こうあれたら幸せ』だと感じることに敏感でいれば、人生はきっと大丈夫。誰かのためではなく、自分のために生きてほしいなと思います。〝誰かのために〟と思う気持ちも、自分の中から出てきたもので〝自分のため〟なんですよ。〝自分のため〟を意識してあげることで、人生はもっともっと広がっていくんじゃないかな」

自分の人生は自分のもの――そんな宮野さんが思い描く〝これから〟は、間違いなく宮野さんらしい〝楽しい〟にあふれているはずだ。
「声優として、俳優として、アーティストとして…これだけいろいろなことを経験させていただけている人って、なかなかいないと思うんです。そんな自分がどういうエンターテインメントを見せていくのか、それは僕も僕に期待している部分。僕にしかないエンターテインメントをつくっていきたいなと思っています。目指すは『ジャンル:宮野真守』みたいな!(笑) そういうのができたら、最高にかっこいいですよね」
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Profile
宮野真守/みやの・まもる。1983年6月8日、埼玉県生まれ。声優・俳優・歌手。2001年、海外ドラマ『私はケイトリン』で声優デビュー。『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』や『キン肉マン 完璧超人始祖編』などで主演をつとめ、数多くのアニメ作品に出演。俳優としては劇団☆新感線の『「髑髏城の七人」Season月≪下弦の月≫』、ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』をはじめとする舞台作品のほか、人気ドラマや映画にも出演。また、2008年からアーティストとしても活動しており、11月19日には8thアルバム『FACE』をリリース予定。
撮影/中川達也 スタイリスト/横田勝広(YKP) ヘア&メイク/Chica(C+) 構成/旧井菜月
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