「一石を投じる」の意味は?
ニュースや記事の文面で、「一石を投じる」という表現を見たことがある方もいるかもしれません。改めて意味を確認していきましょう。
「一石を投じる」とは、反響を呼ぶような問題提起をすること。水溜まりの中に1つの石を投げると、波紋が生じ、それが次第に広まっていきますよね。静かな水面でも、1つの石を投げることで水面が大きく揺らいでしまいます。この様子を喩えたのが「一石を投じる」です。
多様性が重視される現代では、一石を投じるような行動や発言が多く見られるかもしれません。世間においてこれまでは当たり前だとされていた常識が、誰かの新しい意見や問題提起によって覆ることもあります。このように、ある事柄に対してこれまでにない新しい提案をし、周りに影響力を与え広げていくことを「一石を投じる」と言うのです。
使い方を例文でチェック!
これまでの状況を変えるような影響力を持つ言動を「一石を投じる」と言います。実際に例文を紹介しながら、使い方について見ていきましょう。
1:曖昧なまま放置されていた議論に一石を投じた
賛否両論あって、なかなか意見がまとまらない議論ってありますよね。結論がつけられず、放置されてしまうこともあるでしょう。そんな中、今までとは違う視点から考えられる概念や意見が突然現れることがあります。まさにこれを「一石を投じる」と言うことができるでしょう。
誰かの発言や行動によって、いきなり問題が解決の方向に動き出すこともあるのです。
2:疲弊した経済問題に一石を投じるようなアイディアだ
「一石を投じる」は、「○○問題に…」という形で繋げられることが多いでしょう。行き詰まった状況からなかなか抜け出せない時に、その状況を覆すような新しい提案がされる様子を表します。この場合は「救いの手を差し伸べる」と似たようなニュアンスを含むでしょう。
3:メディアの在り方に一石を投じる発言であった
改善しなければならない状況や、緩んでいる状況に対して活を入れるという意味で「一石を投じる」を使うこともあります。これまでの状況を変えるようなきっかけになるというイメージですね。例えば、子供の素直で何気ない発言が、教育者の行動に影響することもあります。ある意見を出したり、問題提起することで、周りが改めて考えさせられる状況を作り出すことを「一石を投じる」で表すことができるでしょう。
4:彼の小説はこれまでの常識に一石を投じ、世間の反響を呼んだ
小説や絵、音楽などの作品を通して一石を投じる場合もあるでしょう。自分の口からは上手く言葉に表せなくとも、作品にメッセージを込めることで、自身の考えや意思を世間に伝える事ができます。アーティストやインフルエンサーは、人前に立つ職業のため、与える影響力も大きいでしょう。そのため、一般人に比べると一石を投じるチャンスも多いかもしれませんね。
「一石を投じる」の言い換え表現とは?
「一石を投じる」の意味や使い方は理解していただけましたか? 意味は知っていても日常会話であまり使ったことはないという方もいるかもしれません。ここからは普段の会話から使える「一石を投じる」の言い換え表現を紹介していきます。若干ニュアンスの違いもあるので、シチュエーションで使い分けできるようにしておきましょう。
1:波紋を呼ぶ
水面に何かが触れると、中心から輪を描いて波が広がっていきますよね。この模様を波紋と呼びます。この様子から転じて、周りに動揺を伝えるような影響を及ぼすことを「波紋を呼ぶ」「波紋を広げる」「波紋を起こす」などというように表すことができるでしょう。他にも「波紋を投じる」という表現があります。
これは「一石を投じる」と混同して生まれた言い方だと考えられているそう。意味は、行動や問題提起によって影響を広げること。「一石を投じる」と同義で使うことができるでしょう。
2:波及する
物事の影響が広い範囲に及んでいくことを言います。波がどんどんとうつっていくように、徐々に影響が広がっていくイメージですね。経済においては「波及効果」という言葉も使われています。これは新しく需要が生まれた時に、その需要を満たすために新たな生産が誘発されていく効果のこと。
ある産業の需要が高まると、その産業で必要となる原材料の需要も高まります。このように生産波及が広まっていくことを、「波及効果」と呼んでいるのです。
3:物議を醸す
世間の議論を引き起こすという意味です。「物議」とは、世の中における人々の議論のこと。そして「醸す」は、醤油やお酒を醸造するという意味から転じて、ある状態を生み出すという意味を指します。最近は、新たに「物議を呼ぶ」「物議を醸し出す」などの言い方も増えてきているそう。
本来は「物議を醸す」という表現が正しいので、こちらで覚えておくといいですよ。「一石を投じる」に比べると、ネガティブなニュアンスで使うことが多いです。
「一石を投じる」を英語で言うと…?
最後に「一石を投じる」の英語表現について見ていきましょう。こちらも参考にしてみてくださいね。
cause/create a stir
「cause a stir」もしくは「create a stir」で「一石を投じる」と表現することができるでしょう。stirは動詞で「かき回す・かき立てる」という意味を持つ言葉。名詞では「大騒ぎ・大評判・動揺」といった意味を表します。causeは「引き起こす」、createは「生み出す」という意味なので、「動揺や騒ぎを引き起こす」というようなニュアンスで使うことができるでしょう。
最後に
多様性が広まる現代社会では、次々と新しい概念が生まれます。そしてSNSの発達により、自信の考えや意見を発信しやすい環境にもなってきているでしょう。つまり、物議に対して一石を投じることが容易になってきているのです。皆さんも、これまでは考えたこともなかった新しい概念に出会うことが多くなるかもしれませんね。
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