「世帯主」という言葉を、耳にする機会はありませんか? 住民票の登録の際や、年末調整の書類などで、なんとなく覚えがあるという方も、いらっしゃるかもしれませんね。
この記事では、世帯主の定義や、夫婦の場合の世帯主の考え方、世帯主が二人いるケースなどを解説します。結婚や就職などとも関わりが深いテーマですので、ぜひチェックしてみてくださいね。
世帯主とは
世帯主とは、具体的にどんな人を指すのでしょうか? いざ定義を聞かれると、難しいですよね。ここでは、世帯主の定義について解説します。
まずは、「世帯」という概念から見ていきましょう。世帯とは、住むところや生計を一緒にしている人たちの集まりや、単身の人を指す言葉です。例えば、同じ家に夫婦と子供たちで住んでいて、生計を共にしているというのが、代表的な世帯のイメージですね。そして、この世帯の代表者が「世帯主」です。
複数人いる世帯の場合、一般的には、収入の多い人が世帯主になっているケースが多いでしょう。では、実家から独り立ちして、一人暮らしをしている人などは、どうなのでしょうか? この場合、原則は「単独世帯」となります。単独世帯の場合は、その人が世帯主ということになりますね。
世帯主の主な役割として代表的なのは、行政上の書類の受け取りです。例えば、選挙のお知らせや、自治体からの手紙などは、世帯ごとに送られることが一般的。
また、国民年金保険料などの納付は、本人だけでなく、世帯主にも連帯義務があります。さらに、国民健康保険料の納付義務があるのも世帯主。そのため、支払い用紙なども、世帯主宛てに来ることが一般的でしょう。
ただし、一定の条件を満たしている場合で、自治体で国民健康保険上の世帯主変更の手続きをした場合など、例外もあります。ですが、世帯主は、その世帯の代表者ですので、原則は、納付の義務や責任があると考えておくと良いでしょう。
夫婦の場合は?
結婚をする際、「誰が世帯主になるべき?」という疑問を持つ方も、いらっしゃるのではないでしょうか? そこでここでは、結婚した場合の世帯主の考え方について、解説します。近々結婚を予定しているという方は、チェックしてみてください。
夫婦の場合、なんとなく、「世帯主は夫」というイメージをお持ちの方も、いらっしゃるかもしれませんね。しかし、法律上、世帯主は必ずしも夫である必要はなく、男女や収入の差など、特に決まった条件があるわけではありません。つまり、世帯主がどちらになっても構わないということです。
ですが、世帯主には、その世帯の国民健康保険や、国民年金の納付義務があるとされていますよね。そのため、経済的にゆとりがある方が世帯主になっておくと、安心かもしれません。
もちろん、各夫婦での価値観や考え方によりますので、相談が必要な内容でしょう。また、働いている会社によっては、家族手当などが出るということもあるようです。会社の規定によりますが、「社員が結婚して世帯主となっていることが条件」という場合も。共働きの会社員夫婦の場合は、こういった会社の手当などを確認して、世帯主を決めるというケースもあるようです。
同棲の場合は?
ここまでは、結婚した場合を解説しましたが、同棲の場合も見ていきましょう。
まず、一般的なのは、世帯を分けてそれぞれが世帯主になるケースです。同棲の場合で、同じ世帯にしてしまうと、「世帯全員の住民票」を自治体で発行してもらった際、同棲相手の名前が載ってしまうことにも要注意。中には、会社の何らかの手続きで住民票を提出する際に、同棲していることが分かってしまうということも。
最近では、同棲に反対だという人は、以前より少なくなったかもしれません。しかし、まだまだ年代や価値観によっては、否定的な感情を持つ人もいるようです。また、会社で同棲相手のことを噂されるのは、あまり気持ちの良いものではありませんよね。そのため、「特別な事情がない限りは、世帯を分けておく方が安心」という声も。
一方で、婚約をしている場合や、結婚を前提としている場合、あえて同世帯で届け出をする人もいるようです。
世帯主は二人いてもいいの?
世帯主は、必ず一人でなければいけないのでしょうか? ここからは、世帯主が二人以上になるパターンを解説します。
社会人の場合、家族と同居しているものの、生計は別にしているということもありますよね。このような場合は、住所が同じであっても世帯主が複数いることもあり得ます。例えば、親夫婦と同居しているという場合、二つの世帯に分けることも。
「二世帯住宅」という言葉を、どこかで聞いたことがあるかもしれませんね。同じ住所に住んでいても、生活費はそれぞれで管理しているという場合、あえて世帯を分けて「二世帯」とすることもあるようです。
また、夫婦であっても、別居していて生計も別々になっている場合などは、世帯を分け、それぞれが世帯主になるということもあるようですよ。ただし、これにはいくつかの注意点が。そもそも民法上、夫婦は相互に助け合う義務があるため、「原則は世帯を分けることができない」とされています。そのため、夫婦で世帯を分ける手続きは、自治体によっては、様々な事実確認をされることも。
さらに、世帯を分けた場合、会社の家族手当や扶養手当などが停止されることや、行政手続きが煩雑になることも考えられます。もちろん、各家庭の事情や、状況などによって、細かくケースは異なるでしょう。ですが、世帯を分離することで、デメリットが発生することもありますので、慎重に判断することをおすすめします。
世帯主の確認方法は?
「我が家の世帯主は、誰になっているの?」という疑問の声もあるのではないでしょうか? ここでは、世帯主の確認方法も見ていきましょう。
世帯主が誰になっているのかは、住民票で確認することが可能です。お住まいの自治体で、「続き柄入りの世帯全員の住民票」を請求してみてください。もちろん、公的な書類が誰宛に来ているかで、世帯主を推測することもできます。ですが、確実な情報が欲しい場合は、住民票で確認するのが間違いないでしょう。
最後に
この記事では、世帯主の定義や、夫婦や同棲の場合の世帯主の考え方、世帯主が二人いるケースなどについて解説しました。税金や行政手続きなど、何かと日頃の生活に関わる「世帯主」という概念。特に結婚する場合などは、切っても切り離せないテーマでしょう。今後のために知っておくと安心ですね。
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塚原社会保険労務士事務所代表 塚原美彩(つかはら・みさ)
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。趣味は日本酒酒蔵巡り。ライター所属:京都メディアライン