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「猪口才」という言葉は読みにくい漢字ですが、読み方には、軽やかな響きがあります。どんな意味なのか、気になりますよね。日常会話ではあまり耳にしない言葉ですが、文学や評論などで、ちょっとした皮肉を込めて使う場合もありますよ。
「猪口才」の意味を知っておくと、表現の幅が広がるかもしれません。この記事では、「猪口才」の読み方と意味、似た言葉などを紹介します。
「猪口才」ってどんな意味?
「猪口才」は、見慣れない漢字の並びに戸惑うかもしれません。読み方と意味を確認し、まずは基本を押さえましょう。

「猪口才」読み方と意味
「猪口才」は「ちょこざい」と読みます。辞書で「猪口才」の意味を確認しましょう。
ちょこ‐ざい【×猪▽口才】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[名・形動]小生意気なこと。小賢しいこと。また、そのさまや、そのような人。
「我(ひと)の仕事に邪魔を入れる―な死節野郎」〈露伴・五重塔〉
[補説]「猪口」は当て字。
「猪口才」とは、小生意気なことや、小賢しいことを指す言葉です。また、小生意気な性質を持つ人を指すこともあります。
「猪口」は当て字
「猪口」は、酒を飲むときに使う小さな器のことです。「おちょこ」とも呼ばれますよね。言葉としての「猪口才」においては意味の関連はなく、漢字は当て字とされています。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)
「猪口才」って、どんな人?
実際にどのような人やふるまいが「猪口才」と見なされやすいのでしょうか? 具体的な特徴について触れてみましょう。
周囲より前に出ようとする態度
年齢や立場に見合わない主張や行動が、かえって浮いて見えることがあります。本人は積極的のつもりが、周囲には「目立ちたがり」や「出すぎたまね」と受け取られる場合もあるようです。
知識や要領を見せびらかす場面
ちょっとした知識や要領のよさを誇るような言動を、「小賢しい」と感じることもあります。相手の話を遮ってまで発言するような場面も、違和感を与えやすいでしょう。

例文で見る、「猪口才なやつ」とはこういう人
文学的な場面で「猪口才」という言葉をどう使うのか、実際の文を通して見てみましょう。さらに、日常会話での使い方も確認します。
「我(ひと)の仕事に邪魔を入れる猪口才な死節野郎」〈露伴・五重塔〉
この文章は、幸田露伴の小説『五重塔』の一節です。話し手が、自分の仕事に口出ししてきた相手を強く非難している場面です。
「猪口才」は、強い皮肉や怒りを込めて使うことが、よくわかりますよね。
参考:『デジタル大辞泉』、『日本国語大辞典』(小学館)
「ちょっと猪口才すぎて、正直めんどうに感じてしまう」
日常会話の中で「猪口才」という言葉を使う例です。
「ちょっと猪口才すぎて」とあるように、相手の態度が少し目に余る、出すぎている、と感じたときの言い回しです。相手に対して距離を置きたい気持ちや、かすかな嫌悪感がにじんでいますよね。
「猪口才」の言い換え表現|「小賢しい」「生意気」との違い
現代でも「猪口才」に近い表現は、いくつかあります。より身近で、よく見聞きする言い方を紹介します。それぞれの意味を確認して、使い方の違いを整理しましょう。
「あざとい」
「あざとい」は、抜け目がなく、図々しい様子を表現します。あさはかで、思慮が浅い、という意味もあります。
近年では「あざとい」を、計算ずくでかわいくふるまう行動に対して使うことがあり、肯定的な意味も含む場合があります。対して「猪口才」は、基本的に否定的な印象に限って使う言葉です。
「小賢しい(こざかしい)」
「小賢しい」は、利口ぶっていて、差し出がましいという意味です。ずる賢さや抜け目のなさを感じさせる点では「猪口才」と近い印象でしょう。
「生意気(なまいき)」
「生意気」は、自分の立場や経験をわきまえずに出すぎた態度をとることを意味します。場の空気にそぐわない発言や、不相応な言動に対して使うことが多いでしょう。
さらに「小生意気(こなまいき)」という言い方もあります。「小生意気」は、生意気でしゃくにさわる言動を指します。まわりをいら立たせるような印象を与える点が特徴です。

英語でも表現できる?|「猪口才」の英語表現をチェック
英語にも、「猪口才」に近いニュアンスの言葉があります。言葉の背景や印象を比べてみましょう。
“smart aleck”
“smart aleck” とは、知ったかぶりをしたり、利口ぶる生意気な人を意味します。「猪口才」と似た、やや鼻につく態度を表現する言葉といえるでしょう。
【例文】
“He’s such a smart aleck, always correcting everyone at meetings.”
(彼はいつも会議で人の発言をいちいち訂正してくる。まったく猪口才なやつだ。)
“know-it-all”
“know-it-all” は、英語の口語表現で、「物知り顔をする人」を指します。日本語で言うところの「知ったかぶり」や「鼻であしらう人」といった意味合いがあります。
“know-it-all” が持つニュアンスは、日本語の「猪口才」に近く、小生意気で鼻につく印象を伝えるときに使える英語表現といえるでしょう。
【例文】
“Nobody likes a know-it-all who can’t listen to others.”
(他人の話を聞こうとしない知ったかぶりは、誰にも好かれません。)
参考:『ランダムハウス英和大辞典』
最後に
「猪口才」という言葉は、生意気で出すぎた印象を持つ人に向けられる表現です。あまりいい意味では使ないため、使う場面には注意が必要ですね。「猪口才」は、言葉の意味を知っておくことで、自分のふるまいを見直すきっかけにもなるかもしれません。
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