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「災い転じて福となす」の意味について
「災い転じて福となす」という表現は、ビジネスやスポーツなど様々なシーンで使われます。状況が悪化した時に、そんな局面からの打開をはかるために使われる表現です。
そんな「災い転じて福となす」ですが、その意味や由来はどのようなものなのでしょうか。この記事では、「災い転じて福となす」の意味や語源、類語表現などについて解説していきます。
そもそも「災い転じて福となす」とは?
もともとは四文字熟語の「転禍為福(てんかいふく)」でしたが、それを訓読した結果、「災い転じて福となす」となったのだとか。「禍を転じて福となす」と表現するケースもあるようです。
「災い転じて福となす」の意味は、災いに遭っても、それが契機として良い状態に転じるということ。例えば、化学実験をしていて、物質の配分を間違えたがゆえに失敗だと思っていたら、化学反応を起こして新しい物質を発見したといったケースなどが当てはまります。
その時点では悪く思えることでも、あとから振り返れば実は良かったという経験は、多くの人がしているのではないでしょうか。ある事象の是非は、時間が経過するにつれて変わっていくものです。その時の自分の価値観などにも左右されます。
「災いはやがて福に変わるものだ」と思い続けることで、その時は不幸だと思っていたことも、幸福に変わっていくのかもしれません。
「災い転じて福となす」の由来
次に、「災い転じて福となす」の語源について見てきましょう。
「災い転じて福となす」は、古代中国の戦国時代の逸話をまとめた書物『戦国策』(せんごくさく)中の「燕策」(えんさく)に由来するのだとか。秦の始皇帝が中華を統一する50年ほど前に起きた出来事の話です。蘇秦(そしん)という弁論家は、六国(韓・魏・趙・燕・斉・楚)が同盟して秦に対抗することを提案し、無事同盟を成立させることに成功しました。
しかし、その後同盟内部で問題が発生。斉が、味方であるはずの燕に侵攻して10の城を占領。城を取り戻すべく、蘇秦は斉王に謁見し、その説得の中で「災い転じて福となす」の元になる「転禍為福」の表現が使われたとされています。結果として、城は燕に返還されました。
説得の中で、蘇秦は「すぐれた人間は窮地に立った時、禍を転じて福と為し、失敗を教訓に成功をおさめるものである」という趣旨の発言をしています。
いくら注意していても、ミスは基本的に不可避のものです。重要なのは、困難に直面した後、どう軌道修正するかということでしょう。苦しい状況に陥っても、気を落とすことなく前向きな気持ちでいれば、成功にたどり着くことができると解釈できます。
反対に言えば、失敗したからといってへこたれていれば、気分も沈んだままですし、それでは合理的な判断もできません。蘇秦によれば、「すぐれた人間ではない」ということになるのでしょう。
「すぐれた人間」であるかどうかは、困難に直面した後の行為にかかっているということですね。
「災い転じて福となす」を使った例文を紹介
「災い転じて福となす」の例文を見ていきましょう。
1:「実験中のミスが世紀の大発見につながった。まさに、災い転じて福となすとなった」
失敗と思ったことから新しい発見があり、やがて大きな注目を集めるようになったというケースがあります。「失敗」と認識する事象も、見方を変えると成功への要因だったということは珍しくありません。
2:「体調不良で会社を退職後、地方に移住した。災い転じて福となすで、体調も回復し、楽しい経験ができた」
その時は仕事がなくなって将来に不安があっても、それが契機となって移住をし、新しい人生展開があるかもしれません。
3:「人との直接交流が制限された結果、リモート会議やテレワークが普及した。これについては、災い転じて福となすと見る考えもあるだろう」
2020年以降、急速にリモートワークやオンライン会議が普及しました。人と直接会えないことは大きな制限ではありますが、それによって社会のデジタル化が進んだのは「福」の一面であると言えるのではないでしょうか。
「災い転じて福となす」の類語表現について
「災い転じて福となす」のような、「悪い状況が良い状況に転じる」といった趣旨の熟語は他にもあります。類語表現も見ていきましょう。
1:塞翁が馬
人生において、幸福・不幸は予測困難であり、良いことばかりでもなければ、悪いことばかりでもないということ。「人間万事塞翁が馬」と記述することもあります。
「災い転じて福となす」のように、中国の昔話が由来のようです。昔、中国の北辺の塞上(辺境の砦)に住む老人の飼っていた馬が脱走。数ヶ月後、北方から名馬を連れて帰ってきました。すると今度は、老人の息子がその馬から落ちて足を骨折。しかし、そのために息子は戦争に兵士としての徴収を免れることができたという話から、この言葉がうまれたのだとか。
2:怪我の功名
「怪我の功名」とは、過失や災難と思われたことが、思いがけなく良い結果につながること。また、意図したわけでもなく行ったことが、偶然にも好結果を得るということを意味します。
3:失敗は成功のもと
励ましの言葉として用いられることも多いですね。失敗の原因をつきとめて改善すれば、成功への契機となるということをさします。失敗に屈することなく、冷静に対処し続けることが将来の成功をもたらすという意味です。「失敗は成功の母」と言い換えることもあります。
4:雨降って地固まる
雨の降った後は、かえって地面が堅固になるもの。つまり、変事があって、かえって以前よりも基礎が固まり功を奏すことの例えになります。
「災い転じて福となす」の英語での表現
英語にも、「災い転じて福となす」と似た表現があります。せっかくの機会ですので、一緒に見ていきましょう。
1:Turn a misfortune into a blessing.
「misfortune」には「不運、逆境」、「blessing」には「ありがたいこと、神のご加護」という意味があります。直訳すると、「不運を逆手にとって、神のご加護にあずかろう」となるでしょうか。意訳して、「不運を幸福に変える」という意味で使われることが多いようです。
2:Bad luck often brings good luck.
そのまま訳すと、「不幸はしばしば幸運をもたらす」です。まさに「災い転じて福となす」を表した英語表現と言えるのではないでしょうか。。
最後に
「災い転じて福となす」は、「悪い事象が良い状況に変化する」を意味します。人生は悪いことばかりではなく、いいことも起きるということを表現する、お守りのような言葉です。しかし、落ち込み続けていては、災いが福になる機会も失われてしまいます。
いかなる結果であれ、物事が好転する可能性はあるはずです。そうなるよう前を向き、心を落ち着かせ、合理的な判断を下していくことを意識していきたいですね。
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