目次Contents
この記事のサマリー
・「災い転じて福となす」の意味は、「不運を工夫で幸運に変えること」。
・使いどきに注意! 落ち込んでいる人に軽く言うと、逆効果になることも…。
・著名人の実例からも“苦い経験が次のステップになる”ことは、意外と多いことがわかる。
職場や日常で耳にする言葉の中には、ちょっとした励ましや知恵が詰まったものがあります。その一つが「災い転じて福となす」。失敗やトラブルに直面したとき、この言葉がふと頭に浮かんだことはありませんか?
この記事では、「災い転じて福となす」の意味や由来、使い方から英語表現までを幅広く紹介します。ちょっと落ち込んだときにも、人との会話で言葉のセンスを見せたいときにも、きっと役に立つはずです。
「災い転じて福となす」とは?
まずは、「災い転じて福となす」の意味と類語との違いを紹介していきましょう。

「災い転じて福となす」の意味
「災い転じて福となす(わざわいてんじてふくとなす)」は、「わざわいを、工夫や行動によって、最終的に幸せな結果へと導く」という意味を持ちます。
小学館『デジタル大辞泉』では、「禍(わざわい)を転じて福と為す」と表記され、以下のように説明されています。
禍(わざわい)を転(てん)じて福(ふく)と為(な)す
《「戦国策」燕策から》わざわいに襲われても、それを逆用して幸せになるように取り計らう。
[補説]「禍を変じて福となす」とするのは誤り。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「起きてしまった不運をどうにかいい方向へ持っていく」ための、人の姿勢や工夫が込められた言葉だといえます。
例えば、職場で大きなミスをしてしまったものの、それが契機となって部署異動。結果的に自分にぴったりの仕事と出会えた──そんな経験が、思い当たる人もいるのではないでしょうか。
「災い転じて福となす」の類語や言い換え表現は?
「災い転じて福となす」の類語としては「塞翁(さいおう)が馬」や「ピンチはチャンス」などが挙げられます。ニュアンスには微妙な差がありますよ。
例えば、「塞翁が馬」は運命の予測不能さを含んだ言葉。一方「災い転じて福となす」は、そこに人の意思や対応力がある点で異なります。
「災い転じて福となす」の由来|故事の背景を学ぶ
言葉の理解を深めるには、背景となる故事や思想を知ることが欠かせません。ここでは「災い転じて福となす」という表現がどこから来たのか、わかりやすく紹介します。

漢籍由来の言葉
「災い転じて福となす」は、漢籍由来の表現です。その思想の根底には、「禍(わざわい)と福(しあわせ)は対立するものではなく、実は表裏一体である」という考え方があります。
『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)によれば、この表現は、幸・不幸は固定されたものではなく、状況や視点の変化によって転じ得るという世界観を示すものとされています。
禍は避けたいものですが、それをどう受け止め、どう生かすかによって、結果が変わる。そんな人生哲学が、この言葉には込められています。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
リアルな場面で使える!「災い転じて福となす」の活用法
意味や由来を知っても、実際に使いこなせなければもったいないもの。ここでは、日常や職場でのスマートな使い方と、気をつけたいNGパターンについて具体的に紹介します。

使い方のポイントと注意すべき場面
「災い転じて福となす」は、誰かの困難やトラブルに対して、前向きな視点を添えたいときに使われる表現です。ただし、言い方やタイミングを誤ると、相手にとっては無神経に響いてしまうことも…。
例えば、トラブルの直後に「結果的によかったじゃない」と声をかけると、本人の気持ちが整理できていない段階では「軽く扱われた」と感じさせる恐れがあります。
大切なのは、まず相手の感情に寄り添うこと。その上で「きっとこの経験が、何かプラスにつながるかもしれないね」といった、「希望を含んだ見方」として言葉を添えるのが自然です。
職場での後輩指導や、気を遣う場面でこそ言葉選びは重要。Oggi読者の方なら、こうした会話の配慮力が信頼や関係構築に直結することを、肌で感じているはずです。
例文で見る・ポジティブな転換表現のコツ
ここでは、「災い転じて福となす」のビジネス・プライベート・SNSそれぞれの場面に合わせた活用例を紹介します。
例:ビジネスメールで
「今回のトラブルを通じて、社内の対応力が一層高まりました。まさに“災い転じて福となす”ですね」
例:友人へのLINEで
「つらいことが続いて本当に大変だったね。でも、その経験が新しい道を開いてくれる気がする。“災い転じて福となす”って言葉もあるし!」
例:自分のSNSで
「飛行機の欠航で旅程変更… のはずが、絶景に出会う奇跡! #災い転じて福となす #人生って面白い」
形式や文体を少し工夫するだけで、印象は大きく変わります。とくにSNSでは、ユーモアや皮肉を含んだ「ちょっとしゃれた言い回し」として使うことで、「言葉のセンスがある人」として一目置かれることもあるでしょう。
「災い転じて福となす」を体現した実話・エピソード集
「災い転じて福となす」は単なる理想論ではなく、実際の経験や歴史のなかでも繰り返されてきた“逆境からの転機”を象徴する言葉です。ここでは、身近な出来事から世界的な人物のエピソードまで、リアルな事例を紹介します。
身近な失敗→ 成功のエピソード
筆者もかつて、新人時代にプレゼン資料の提出で大きなミスをし、信頼を失いかけたことがありました。当時は落ち込みもしましたが、上司から「情報整理の視点を磨いてみよう」と声をかけられたのを機に、社内の研修に参加。
苦手意識を克服していくうちに、社内での役割が広がり、最終的にはプロジェクト全体の進行を任されるまでに。失敗が、自分の強みに気づく“始まり”になることもあるのだと実感しました。
誰しも、思い返せば「あれがあったから今がある」といえる経験がきっとあるはず。小さな“転機”を見逃さない視点が、幸運への第一歩になるのかもしれませんね。
著名人に見る「災い転じて福となす」の事例
世界的な起業家スティーブ・ジョブズ氏は、自ら創業したアップル社を一度は追放されるという経験を経て、別会社NeXTや映画制作会社ピクサーで新たな創造活動に挑戦。その後アップルに復帰し、iMacやiPhoneなど革新的なプロダクトを次々に生み出しました。失意の時期が、のちの飛躍の土台となった好例といえるでしょう。
まさに「災い」が「福」へと転じるプロセスの中には、行動と発想の転換が息づいているといえます。
「今はつらいけれど、この経験にもきっと意味がある」―そんなふうに思える視点が、人生を前に進める力になるのではないでしょうか。
英語でどう言う?「災い転じて福となす」のスマート表現
「災い転じて福となす」は、英語では“turn a misfortune into a blessing”と表わします。「不運な出来事を祝福(福)に変える」という意味を持つ慣用表現です。
日常会話やエッセイ、ビジネスシーンでも使える言い回しだといえるでしょう。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
「災い転じて福となす」に関するFAQ
ここでは、「災い転じて福となす」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q2. 「災い転じて福となす」はフォーマルな場でも使えますか?
A. はい、ビジネスメールやスピーチ、書類などでも適切に使えば好印象を与える言葉だといえます。
ただし、相手の失敗や困難に対して安易に使うと誤解を招くことがあるため、タイミングと文脈に配慮することが大切です。
Q2. 「災い転じて福となす」は自分のことに使っても大丈夫?
A. はい、自分自身の経験を語る際にも自然に使えます。
ただし「ポジティブすぎる自己正当化」に聞こえることもあるので、反省や学びの要素も添えるといいでしょう。例えば「大変でしたが、学びの多い出来事でした。まさに『災い転じて福となす』ですね」など。
Q3. 「災い転じて福となす」をあえて使わない方がいいシーンってありますか?(地雷回避)
A. 例えば、大きな損失や事故、不幸な出来事が現在進行中の相手に対してこの言葉を使うのは避けたほうがいいでしょう。
「転じて福になる前提で話された」と不快に思われる可能性があります。特にお悔やみや災害関連の場面では使わないのが賢明です。
最後に
「災い転じて福となす」という言葉は、前向きなスローガンではありません。そこには、困難にどう向き合い、どう意味づけを変えていくかという、人間の知恵が込められています。
ビジネスの現場でも、プライベートの人間関係でも、思わぬ失敗や苦しみに直面することは誰にでもあるもの。そんなとき、この言葉があなたの中にあれば、少しだけ視野が広がり、自分や誰かを励ますことができるかもしれません。
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