「逸物」という言葉を目にしたことはありますか? あまり日常的に使われる言葉ではないかもしれませんが、文献やことわざの中には出てくる言葉です。
この記事では、「逸物」の正しい読み方や意味、類似表現との違いを解説していきます。
「逸物」とは? 読み方・意味・由来を解説
まずは「逸物」の読み方と意味から確認していきましょう。

「逸物」の読み方と意味
「逸物」は「いちぶつ」、「いちもつ」、「いつぶつ」と読みます。意味はすべて同じですので、ここでは「逸物(いちもつ)」の辞書での定義を確認していきましょう。
いち‐もつ【▽逸物】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
群を抜いて優れているもの。特に、犬・牛・馬、または人などにいう。いちもち。いちぶつ。いつぶつ。
「犬は三頭が三頭ながら、大きさも毛なみも一対な茶まだらの―で」〈芥川・偸盗〉
「逸物」とは人物や馬、犬などの多くの中で特に優れているものを指します。揶揄として、悪いことにすぐれている人を指すこともありますよ。
「逸物」と「一物」の違い
「逸物」は、群を抜いて優れたものを指します。一方、「一物(いちもつ)」は「一つの品物」や「心中に秘めたたくらみ」などのことを指します。
言葉の持つ概念が異なるため、誤解を避けるためにも文脈を確認することが大切です。

「逸物」と「逸品」の違い
「逸品(いっぴん)」は、特に優れた品物や作品を指します。「逸物」とは似た意味を持ちますが、「逸品」は物の品質に焦点を当てることが多く、工芸品や食べ物などに対して使われることが一般的です。
「逸物」を使ったことわざを紹介
「逸物」という言葉は、ことわざなどでも使われています。ここでは、「逸物の鷹も放さねば捕らず(いちもつのたかもはなさねばとらず)」ということわざを紹介しましょう。

「逸物の鷹も放さねば捕らず」の意味とは?
このことわざは、「優れた鷹も、空に放たなければ鳥を捕らえない」、「どんなに優れたものでも、使わなければその力を発揮できない」という意味を持ちます。
例えば、才能のある人がいても、生かす場がなければその能力は発揮されません。鷹に例えられるような特別なものでも、行動しなければ成果にはつながらない、という教訓を示しています。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
最後に
「逸物」は、人物や馬、犬などの多くの中で特に優れているものを指します。日常会話で耳にする機会は少ないかもしれませんが、ことわざや文学作品の中では重要な意味を持つことがありますよ。出てきたときには、ぜひこの記事で紹介した知識を生かしてください。
TOP画像/(c) Adobe Stock