「行脚」という熟語はどちらもよく使う漢字で構成されていますが、読むとなると、なかなか難しいですね。仏教用語としての由来を持ちながら、現代ではビジネスシーンでも使われることがある言葉です。
この記事では、「行脚」の読み方や意味、正しい使い方について解説していきます。
「行脚」とは? 読み方・意味・由来を解説
まずは「行脚」の読み方から確認していきましょう。
「行脚」の読み方と意味
「行脚」は「あんぎゃ」と読みます。「ぎょうきゃく」とは読まないので、注意しましょう。辞書によると、以下のように定義されています。
あん‐ぎゃ【行脚】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[名](スル)《「あん(行)」は唐音》
1 仏道修行のために、僧侶が諸国を歩き回ること。「雲水の―」
2 ある目的で諸地方を巡り歩くこと。「遺跡を―する」
「行脚」はもともとは仏教の修行に関連する言葉でした。現代では「全国行脚」のように、各地を巡ることを指す言葉としても使われています。

「行脚」の語源は?
「行脚」という言葉の起源は、中国の禅宗に由来します。禅僧が一定の場所にとどまらず、流れる雲や水のように各地を巡りながら修行を行うことを指しました。
この概念が日本に伝わり、「行雲流水」のように自由に歩き回る修行の一形態として定着しました。「行脚(あんぎゃ)」という読み方は、中国・唐や宋の時代の発音をもとにしたものとされています。
参考:『世界大百科事典』(平凡社)
「行脚」のビジネスシーンでの使い方とは?
「行脚」という言葉は、ビジネスシーンでも使われることがあります。特に、営業活動や企業のプロモーション、経営トップが現場と直接対話する際に用いられることが多いでしょう。以下では、具体的な例文をもとに使い方を紹介します。
「社長が全国行脚し、支店のスタッフと直接対話を行った」
この例文では、社長が全国の支店を訪問し、現場のスタッフと直接コミュニケーションを取る様子を表しています。経営者が自ら各地を回ることで、従業員の意見を直接聞き、現場の課題を把握し、士気を高める効果もあるでしょう。
「新商品のプロモーションのため、全国行脚して販売店を回っている」
この例では、新商品の販売促進のために、担当者が各地の販売店を巡っていることを示しています。企業の営業担当者やマーケティングチームが、新商品の説明を行ったり、販促イベントを開催したりするために、全国を回る活動を「行脚」と表現しています。単なる訪問ではなく、積極的に現場での交流を図るニュアンスが含まれます。

「行脚」の類語・言い換え表現
「行脚」は、他の言葉に言い換えることもできます。状況に応じて使い分けることで、より自然な表現になりますよ。
巡業(じゅんぎょう)
「巡業」は、各地を興行して回ることを指します。特に相撲や伝統芸能の興行に関連して使われることが多いでしょう。
例文:「大相撲の巡業が全国で行われている」
遊説(ゆうぜい)
「遊説」は、意見や主張を説いて歩くことを指します。政治家が各地を演説して回る際によく使われる言葉です。
例文:「候補者が全国を遊説し、有権者と対話を重ねた」
巡回(じゅんかい)
「巡回」は、ある目的のために各地を巡ることを指します。警察や医療関係者が使うことが多い言葉です。
例文:「医師が地域の診療所を巡回し、健康相談を行っている」

「行脚」の英語表現とは?
「行脚」を英語で表現する場合、文脈によって適した言葉を選ぶ必要があります。ここでは2つ紹介しましょう。
a pilgrimage(宗教的な巡礼)
もともとの「行脚」の意味に近いのが”a pilgrimage”です。これは、特に宗教的な意味合いを持つ場合に使われます。
例文:”The Buddhist monks embarked on a pilgrimage to sacred sites.”
(仏教僧たちは聖地への行脚を開始した。)
a walking tour(方々を歩き回ること)
「巡り歩く」という意味を強調したい場合は、”a walking tour” が適しています。特定の場所を徒歩で巡る観光や視察などの場面で使われることが多いでしょう。
例文:”He went on a walking tour of the historic city.”
(彼は歴史的な街を巡る歩き旅に出た。)
最後に
「行脚」という言葉は、もともとは仏教の修行を指す言葉でしたが、現代ではビジネスや政治活動の場でも使われるようになっています。言葉の意味や歴史を理解することで、より適切に使いこなすことができますね。
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