「策士、策に溺れる」とは失敗を表す言葉
「策士、策に溺れる」という言葉を見て、特定の人物を指すのかなと思われた方もいるでしょう。この言葉の対象となるのは、策略に頼りすぎる人のこと。自己過信に対する戒めの言葉として用いられています。
本記事では「策士、策に溺れる」について、意味や使い方、似た言葉などを調べました。会話で使える言葉ですので、使い方などをチェックしておきたいですね。まずは、辞書で調べた意味を見ていきましょう。
意味と読み方
策士(さくし)策(さく)に溺(おぼ)れる
読み方:さくしさくにおぼれる
策士は、策略に頼りすぎてかえって失敗する。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「策士」とは、策略を立てることに巧みな人や、好んで策略を立てる人を指します。自分の目的を達成するために、相手を陥れる策略を考えるのが好きな人って確かにいますよね。しかし、策略の上手い人ほど、その策略のみに頼りすぎて失敗するということも。策略や得意なことに固執すると、それが足を引っ張る可能性があることを表す言葉です。
注意点
「策士、策に溺れる」と似ている、「策士才に溺れる」という言葉。聞いたことがある人もいるかもしれません。実はこの言葉、辞書に載っていないのです。つまり、「策士才に溺れる」という言葉は、現在のところないといえます。
「策士、策に溺れる」と似ているので、誤って使わないようにしたいですね。
「策士、策に溺れる」はどう使う?
ここからは「策士、策に溺れる」の使い方をチェックしていきましょう。まずは、この言葉を使う際の特徴について紹介します。
使い方の特徴
「策士、策に溺れる」を使うのは、何かしらの計画や作戦を立てるときでしょう。考えに考えて策を練ったけれど失敗した際に、「策士、策に溺れる」と表現することがあります。
また、自分の考えや計画に固執しすぎることに対する、注意喚起の意味で使うケースもあるでしょう。自己過信に陥って大きな失敗をしないよう、戒めの言葉として用いられます。
「策士、策に溺れる」の言い回しで多いのは「策士、策に溺れるだ」「策士、策に溺れるというが」「策士、策に溺れるというように」「策士、策に溺れる状態」などでしょう。このような言い回しがあることを把握しておくといいですね。
「策士、策に溺れる」の具体的な使い方
「策士、策に溺れる」の具体的な使い方を紹介します。会話例もぜひチェックしてください。
例文
・部長に気に入られようとあれこれ策を練っていた新人だが、かえってそれが部長の鼻についたらしい。策士、策に溺れるとはよく言ったものだ
・戦略立案が得意というので任せてみたが、複雑になりすぎて再現性がない。策士、策に溺れるとはこのことだ
・計画を練っても失敗ばかりするのは、策士、策に溺れる状態に陥っているからだろう
いずれの例文も、何かしらの計画や作戦を練ったが失敗したことを表しています。
会話で使う
会話例も見ていきましょう。ここでは「策士、策に溺れる」を戒めの言葉として使うパターンを紹介します。姉妹で定期テストについて話しているとイメージしてください。
姉「明後日からテストなのに、漫画を読んでいていいの?」
妹「いいの。あの先生は提出物さえしっかり出していたら評価してくれるらしいから。それを聞いたから、提出物だけはがんばったんだ」
姉「その情報、間違っているよ。だって、テストが悪かった生徒は、容赦なく落とされているみたいだし。提出物だけで評価するはずがないって、先生が言っていたけど」
妹「えっ、そうなの?」
姉「噂を鵜呑みにして対策しても、策士、策に溺れる状態になってしまうよ。ちゃんと勉強したほうがいいんじゃない?」
学生時代、テストの対策をいろいろ考えたという人は多いでしょう。策を練ったのに見事に外れて、痛い思いをする羽目になったというのはよくあることかもしれません。まさに「策士、策に溺れる」の状態といえますね。
「策士、策に溺れる」と似た言葉
「策士、策に溺れる」と似た言葉を紹介します。
「才子才に倒れる」
自分の才知を過信するあまり、かえって失敗しがちであることを意味するのが「才子才に倒れる」です。読み方は「さいしさいにたおれる」。
才子とは、頭の働きの素早い人や、才能と知恵に長けている人のこと。才は、才知(才能と知恵)を表すと考えてください。自分の才能や知恵を過信してしまうと、失敗しやすくなることを意味します。「策士、策に溺れる」と近い意味を持つ言葉ですので、言い換えの表現として把握しておくといいですね。
◎例文
自分には才能があると豪語していた後輩だが、明らかな練習不足であっさりと負けた。才子才に倒れるとはこのことだろう
「河童の川流れ」
「河童の川流れ」とは、泳ぎのうまい河童でも、水に押し流されることがあるという意味。これが転じて、その道の達人であっても、失敗することがあることを表します。油断大敵であることをたとえる際に、用いられることが多いでしょう。
◎例文
完璧主義の先輩なのに、資料作成でケアレスミスを連発していた。印刷前に気づけて本当によかったが、まさに河童の川流れだ
「猿も木から落ちる」
猿は木登りが上手な生き物ですが、そんな猿でも誤って木から落ちることがあります。これが転じて、その道に秀でた者でも、失敗することがあることのたとえとして用いられるようになりました。「河童の川流れ」と同じ意味を表す言葉といえるでしょう。
◎例文
データがおかしいので調べてみたら、暗算を得意とする人が簡単な計算ミスをしていた。猿も木から落ちるとは、よく言ったものだ
最後に
「策士、策に溺れる」について、意味や使い方、似た言葉を調べてまとめました。上手い策略を考えるのはいいけれど、度が過ぎるとそれが失敗につながることを意味するこの言葉は、バランスをとることの大切さを説いているともいえるでしょう。成功したり、いいことが続いたりすると、誰でも自己過信しやすいもの。そのようなときこそ、冷静になって自分を見つめたいですね。
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