「柳に風」という言葉を、どこかで見聞きしたことはありますか? 「柳に風と受け流す」などの表現を聞いたことがある方も、いらっしゃるかもしれませんね。
この記事では、「柳に風」の意味や、使い方、似たことわざや「暖簾に腕押し」との違いなどを解説します。「柳に風」は、生き方や処世術としても参考になる言葉ですので、ぜひチェックしてみてくださいね。
柳に風の意味
「柳に風」とは、逆らわずにうまく受け流すという意味のことわざです。柳が風に吹かれて、なびく様子が由来とされていますよ。強風が吹いたとき、堅い枝なら折れてしまうかもしれません。
ですが、柳はしなやかになびくので、ぽきっと折れてしまうことはありませんよね。そう考えると、一見頑丈そうな枝より、柔らかさがある柳の方が、強風に強いとも言えるでしょう。
このように、何か力が加わった際に、あえて逆らわずにその力を受け流すことを、「柳に風」と表現します。このような姿勢を、モットーにしているという人もいるようですよ。たしかに、「柳に風」は、人間関係や職場でのトラブルなどにも、参考になりますよね。
柳に風の使い方
ここからは、柳に風の具体的な使い方を見ていきましょう。
例文:「柳に風と受け流す」
柳に風は、「受け流す」という言葉とセットで使われることも。例えば、ある会社での事例で考えてみましょう。
Aさんは、あるIT系企業に入社して3年目です。Aさんには、ちょっと困った先輩社員がいました。その先輩は、普段は優しいのですが、日によって気分にムラがあるタイプのようです。
機嫌が悪い日には、Aさんが何か質問をすると、「そんな簡単なことも分からないの?」や、「で?」など、かなり感じの悪い受け答えをすることも。また、後輩たちに当り散らすことも少なくなかったと言います。
八つ当たりをされた後輩の中には、萎縮して必死に機嫌を取ろうとする人もいました。先輩がイライラしている様子を見ると、「飲み物を買ってきましょうか?」など、気を遣ってなんとか先輩の機嫌を直そうとします。
また、ある人は、八つ当たりで言われていることを真面目に受け取りすぎて、「私が悪いんだ」と自己嫌悪になってしまうことも。
そのうちに、状況は良くなるどころか、悪循環になってしまいました。というのも、腫れ物に触るように後輩たちが接するのを感じた先輩社員は、ちょっと気に食わないことがあると、すぐに不機嫌オーラをまき散らすようになってしまったのです。
ある日、ついに限界を感じた後輩の一人が、「いいかげんにしてください!」と食って掛かってしまいました。結局、逆上した先輩社員の態度はさらに悪化。その後職場の雰囲気はギスギスしてしまい、退職者も続出してしまったようです。
そんな中でも、Aさんは、しなやかに対応していました。Aさんは、先輩が不機嫌な時は、過度に機嫌を取ることも、逆らうこともせず、聞き流していたと言います。
「ああ、今は機嫌が悪いんだな」と思うと、うまくあしらいながら、さりげなくその場を離れるようにしていたAさん。まさに「柳に風」ですね。結果的に、先輩社員は転職していき、職場の雰囲気も良くなったと言います。
もしAさんが、過度に機嫌を取ったり、反発していれば、きっとトラブルに巻き込まれていたでしょう。「柳に風」のように、しなやかな対応は、生きる術として身に着けておくと、いざというときに役立ちそうですよね。
柳に風に似たことわざ
ここからは、「柳に風」と似たことわざを見ていきましょう。
「柳に雪折れなし」
「柳に風」に似たことわざに、「柳に雪折れなし」という言葉があります。雪の多い地方では、庭木の枝が雪の重さで折れてしまうことも。
そのため、支柱などで枝を保護することもあり、これは、「雪吊り」と呼ばれています。冬の風物詩としても知られている光景ですので、見たことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ですが、柳はしなるので、たくさん雪が降ったとしても、重さで折れることがありません。雪吊りをしなくてもいいということから、「堅いものより、しなやかな方がかえって折れにくい」という意味で使われることが多いことわざです。
「柳に風」にもよく似ていますよね。柳は、柔らかいので、堅い枝よりも、雪の重さや風などの圧力にも耐えられるという特徴を持っていることから、柳にまつわることわざが生まれたのでしょう。また、それだけ柳が日本人にとって身近な植物だったということも感じられて、面白いですよね。
「暖簾に腕押し」との違いは?
「暖簾(のれん)に腕押し」ということわざを思い浮かべた方も、いらっしゃるのではないでしょうか?
暖簾に腕押しとは、力を加えても手ごたえがないことを指すことわざです。暖簾は柔らかく、腕で押しても反発してきませんよね。この様子から、手ごたえがない時の比喩として使われるようになったようです。
例えば、「あの人にいくら言っても、暖簾に腕押しだよ」などのように言うことも。なお、「暖簾に腕押し」は、「柳に風」と比べると、いくらやっても良い反応がない時に使われることが多いと言えるでしょう。
反発してこないという意味では、「柳に風」と似ていますが、暖簾に腕押しは、「徒労感がある」ような、ネガティブな意味で使われることもある表現です。
例えば、何度も同じミスをしている人に注意するという場面で考えると分かりやすいかもしれません。注意された時には、「はい。すみません」と言うものの、何度言っても結局同じミスを繰り返すという人もいらっしゃいますよね。
こういったことが続くと、「もう何を言ってもむだ」と思ってしまうこともあるでしょう。こんな場面で、「あの人に注意しても、暖簾に腕押しだね」などと言うことも。
「柳に風」は、どちらかというと、何かを上手くあしらう、受け流すというニュアンスの言葉で、良い意味で使われることが多いと言えるでしょう。「柳に風を座右の銘にしています」という人も。ですが、「暖簾に腕押しを座右の銘にしています」というのは、あまり聞きません。
このように、微妙なニュアンスの違いがあるということも、おさえておきたいポイントですね。
最後に
この記事では、「柳に風の意味や使い方、似たことわざなどを解説しました。力をしなやかに受け流す「柳に風」は、処世術としても覚えておきたい言葉ですね。
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