両親が年々頑固になって、自分の言う事を聞いてくれなくなってきた… と思うことはありませんか? できれば、話し合って決めたいことも聞く耳を持ってくれないと、どう接したらいいかわからないと悩むこともありますよね。
そんな年配の人への教訓が込められた言葉が、「老いては子に従え」です。ことわざが持つ意味や使い方について一緒に見ていきましょう。
「老いては子に従え」の意味
「老いては子に従え」は、「おいてはこにしたがえ」と読みます。辞書の意味は以下のとおりです。
《「大智度論」九九から》年をとってからは、何事も子に任せて従ったほうがよいということ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「老いては子に従え」とは、年老いてからは、何事も子供に任せて従ったほうがいいというシニア世代のあり方を説いたことわざです。いつまでも意地を張らずに、子供の言うことを受け入れたり、トップの座を譲ったほうがいいという教えが含まれています。
この言葉の中では、歳を取ったらと記されているだけで、具体的に何歳からという決まりはないようです。だからこそ、自分の年齢や体力と相談して、引き際を考える必要性があると言えますね。
使い方を例文でチェック!
「老いては子に従え」は、多くの場合子供が親を説得する時に使います。会話の中でどのように使うのが自然なのか、例文を通して確認していきましょう。
1:老いては子に従えということわざのとおり、店のことは息子に任せることにした。
家族経営をしている会社では、社長の座を譲るタイミングは大事なものです。自分はできると過信し、いつまでも経営方針や最終的な決定権を独占していると、子供や会社が成長する機会を奪ってしまうことにつながります。この例文のように、会社の将来を見越して、子供に任せる判断を下すことも大切です。
2:そんなに渋らないで、一緒に出かけようよ。老いては子に従えって言うじゃない。
親を説得しようとする時に、冗談めかして使うこともあります。歳をとると、遠出をしたり、オシャレをしてどこかに出かけることを渋る人も。両親が重い腰をなかなか上げてくれない時に、このように冗談めかして誘うことで、言うことを聞いてくれるかもしれませんよ。
3:老いては子に従えという言葉もあるんだし、息子さんの言うとおり免許を返納したらどうだい?
「老いては子に従え」は、基本的に親子間で使われる言葉ではありますが、第三者がたしなめる時に使うこともあります。例えば、なかなか子供の言うことを聞かない、シニア世代の友人に助言をする場合。頑固で親族の言うことに耳を貸さない場合には、第三者の働きかけで説得できることもあるでしょう。
類語や言い換え表現は?
年配の人への教訓が込められた類語には、「負うた子に教えられて浅瀬を渡る」「騏驎も老いては駑馬に劣る」があります。どんな意味なのか一緒に確認していきましょう。
1:負うた子に教えられて浅瀬を渡る
「負(お)うた子に教えられて浅瀬を渡る」とは、どのような意味でしょうか?
時には自分より未熟な者から教えられることもあるということのたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「負うた子」とは、「背負った子供」という意味。おんぶした子供に浅瀬を教えてもらいながら川を渡ることがあるように、自分より年少の人に教えられることもあるということです。こちらも年下の人との関係性を説いた言葉ではありますが、「老いては子に従え」よりも教訓臭さがない表現となっていますね。
(例文)
・負うた子に教えられて浅瀬を渡るということもあるし、もう少し息子の言うことを聞いてみたら?
2:騏驎も老いては駑馬に劣る
「騏驎(きりん)も老いては駑馬(どば)に劣る」とは、優れた人物も年老いると、働きや能力が普通の人にも及ばなくなることのたとえです。「騏驎」とは、一日に千里も走るという名馬のこと。
「駑馬」は、足ののろい馬を指します。若い頃にどんなに優秀であったとしても、歳をとると体力やパフォーマンスが落ちることもあります。時には今の状態を素直に受け入れることも大切かもしれません。
(例文)
・騏驎も老いては駑馬に劣るということに気づいた時はショックでしたが、今では肩の荷がおりました。
対義語は?
対義語としては、年長者の知恵や経験を敬う言葉が適切です。ここでは、「老馬の智」「亀の甲より年の功」を紹介します。
1:老馬の智
「老馬の智」は、「ろうばのち」と読みます。老いた馬は独自の知恵を持っていて、道の判断を迷うことはないということから、経験豊富な高齢者には学ぶべき点があるという意味です。中国の書物『韓非子』に由来のある言葉で、ある人が道に迷った時、老馬に導かれて安全な道を見つけられたとか。
経験を積んだ人の知恵を尊重すべきという教訓を表した言葉なので、「老いては子に従え」の対義語と言えますね。
(例文)
・祖父はまさに老馬の智というべきもので、私に助言をしてくれた。
2:亀の甲より年の功
「亀の甲より年の功」は、「かめのこうよりとしのこう」と読みます。年長者は長年経験を積んでいるだけあって、若者が及ばない知恵があるという意味です。「さすが歳を重ねているだけのことはある」と称賛する時に使います。ちなみに、「亀の甲」は、「甲(こう)」と「功」で語呂を合わせるために引き合いに出したもので、特に意味はないようです。
(例文)
・父の経営手腕には敵わないよ。さすが亀の甲より年の功だね。
最後に
「老いては子に従え」とは、「年をとってからは、何事も子に任せて従ったほうがよい」ということ。両親が話を聞いてくれないという場合には、例文で紹介したように軽く促してみることで考えを変えてくれるきっかけになるかもしれませんよ。目上の人との付き合いかたのヒントとして、「老いては子に従え」を覚えてみてはいかがでしょうか?
TOP画像/(c) Adobe Stock