「金持ち喧嘩せず」とは
揉めごとなどの仲裁で、誰かが「金持ち喧嘩せず」と言っているのを聞いたことがありませんか? 「金持ち喧嘩せず」は、日常やビジネスシーンで見聞きする機会のある言葉。もし、あいまいな意味しか知らないなら、正しい意味や使い方を確認しておくのもいいですね。
「金持ち喧嘩せず」について、辞書で調べた意味や読み方を紹介します。
辞書の意味は
金持(かねも)ち喧嘩(けんか)せず
読み方:かねもちけんかせず
金持ちは利にさとく、けんかをすれば損をするので、人と争うことはしない。または、有利な立場にある者は、その立場を失わないために、人とは争わないようにする。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
金銭などの財産をたくさん持っている人は利益に敏感であり、人と争っても損をするだけなのでそれを避けるということを表します。「利にさとく」とは、利益のことに対する感覚が鋭いという意味。また、有利な立場を失わないよう、人との争いを避けるということも表す言葉です。
人との争いを避ける方が、最終的には得だと理解しているという意味で使うことが多いでしょう。
「金持ち喧嘩せず」の使い方
「金持ち喧嘩せず」という言葉の使い方を見ていきましょう。例文を参考に、使い方をチェックしてください。
《例文1》先生を挑発するような言動の人もいたが、先生はいつも通り穏やかだった。先生は「金持ち喧嘩せず」を体現しているような人だ。
無駄な争いはしないことのたとえとして、「金持ち喧嘩せず」を用いた例文です。この言葉は、実際にお金持ちの人だけでなく、人格者や周囲から人間性を認められている人、尊敬を集めている人の言動に対しても使われています。
《例文2》ささいなことでイライラするのはやめよう。「金持ち喧嘩せず」だ。
「金持ち喧嘩せず」を戒めの言葉として使う場合の例文です。自分や他人に対して、怒ることや争うことを止めたい場合に、たとえとしてこの言葉を用いることがあります。「怒りを鎮めた方が得だよ」「争いごとは避ける方がいいよ」といったことを表現したい場合に使うといいですね。
会話例
「金持ち喧嘩せず」を使った会話例も紹介します。
A:「昨日のプレゼンで、ライバル会社の担当者にかなり煽られたよ。正直、イライラした」
B:「よく耐えたね。大変だったでしょう」
A:「言い返したかったけど、我慢したよ。金持ち喧嘩せずだと心の中でひたすらつぶやいた」
B:「彼らは、優秀なあなたを挑発したくてわざと煽ったのかもしれないね。本当にお疲れ様でした」
会話例は、理不尽な挑発に腹が立ったが、「金持ち喧嘩せず」と自分に言い聞かして反論しなかったことを表しています。ビジネスシーンに限らず、理不尽なことに巻き込まれるというのは誰にでもあること。「金持ち喧嘩せず」をつぶやいて冷静さを取り戻すのもいいかもしれません。
注意点
「金持ち喧嘩せず」は戒めにもなる言葉ですが、使う相手やシチュエーションは見極める方がいいでしょう。特に目上の人に対して使うのは避けた方が無難。年齢や立場が下の人から戒められたら、相手は気分を害するかもしれません。
また、誰かをほめる意味で使う場合、本人に直接この言葉を言うのも避ける方がいいですね。相手は嫌味を言われていると感じる可能性があります。「金持ち喧嘩せず」を使う場合は、これらの注意点を意識するようにしてください。
「金持ち喧嘩せず」に似た言葉
「金持ち喧嘩せず」に似た言葉を紹介します。
「衣食足りて礼節を知る」
「衣食足りて礼節を知る」とは、物質的に不自由がなくなり、はじめて礼儀に心を向ける余裕ができてくるという意味を表します。裕福であると心に余裕が生まれるということを表すため、「金持ち喧嘩せず」と似た言葉と言えるでしょう。
《例文》若い頃は血気盛んだった叔父だが、事業が成功して驚くほど人格者になった。「衣食足りて礼節を知る」という言葉通りの人生だ
「お金」に関する言葉を紹介
ここからは「お金」に関する言葉を紹介します。ぜひ意味や使い方をチェックしてください。
「悪銭身につかず」
「悪銭身につかず」とは、盗みや賭け事などで得た金銭は、無駄に使われ、すぐになくなってしまうということを意味します。不当な手段でお金を得たとしても、つまらないことに使ってしまって手元に残らないという戒めの意味を持つ言葉です。「あくせんみにつかず」と読みます。
《例文》ギャンブルで儲けたとしても、「悪銭身につかず」。結局お金は残らないよ
「時は金なり」
「時は金なり」とは、時間というものは貴重であるから、無駄に過ごしてはならないという意味の言葉。「ときはかねなり」と読みます。英語の「Time is money」の日本語訳。スピーチや講演、誰かを鼓舞したいときなどに使うことが多いでしょう。
《例文》負けたのはショックだけど、「時は金なり」だ。今日も練習に行く
「地獄の沙汰も金次第」
地獄で受ける裁判も金の力で有利になるということを表す、「地獄の沙汰も金次第」。この世はすべて金の力で左右されるということのたとえとして使われています。読み方は「じごくのさたもかねしだい」。「地獄の裁判」とは、地獄で閻魔大王が下す裁判のことを指します。
お金を肯定している言葉のように見えますが、一概にそうとは言い切れません。実際は「お金がすべて」と考える人を批判する場合に、使われることが多いでしょう。
《例文》あの会社は手段を選ばないことで有名だからね。「地獄の沙汰も金次第」で、トラブルもお金でなんとかしているのだろう。
「金は天下の回りもの」
金銭は一つ所にとどまっているものではなく、今持っている者もいつか失ったり、今ない者もいつか手に入れたりするという意味を表す「金は天下の回りもの」。お金持ちが手にしているお金は永遠ではないことを表します。
読み方は「かねはてんかのまわりもの」。お金がないことで悩む人を励ます際に、使うことが多いでしょう。
《例文》今はしんどくても、必ず収入を得られるようになる。「金は天下の回りもの」だから、自分を信じてがんばろう
最後に
「金持ち喧嘩せず」という言葉の読み方や意味、使い方などをまとめました。ポジティブな意味合いの言葉であり、戒めの言葉としても用いられていますが、目上の人には使わない方がいいでしょう。注意点を把握し、適切に使えるようにしたいですね。
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