ミステリー小説やニュースなどで、「複雑怪奇」という言葉を目にしたことはありませんか? なんとなくニュアンスはわかるものの、具体的にどういう意味かと聞かれると、首をひねってしまうかもしれません。本記事では、そんな「複雑怪奇」の意味や使い方、類語・対義語を深掘りしていきましょう。
「複雑怪奇」の意味
「複雑怪奇」は、「ふくざつかいき」と読みます。意味を辞書で確認してみると、
[名・形動]複雑でわかりにくく不思議なこと。また、そのさま。「―な(の)国際情勢」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
となります。「複雑」は、「物事の事情や関係が込み入っていること」。「怪奇」は、「怪しく不思議なこと」です。通常ではありそうもない不思議な出来事や、簡単には理解できないようなことを「複雑怪奇」と言いますね。
使い方を例文でチェック!
「複雑怪奇」は、不思議な事件や人の心情、ややこしい手続きなど、意外と幅広い場面で使われます。主な例をチェックしてみましょう。
1:一夜にして会社の宝石が盗まれる、複雑怪奇な事件が起きた。
「複雑怪奇」は、「複雑怪奇な事件」「複雑怪奇な現象」などということが一般的です。いくら考えてみても理解できず、思わず首をひねってしまうような不思議な事件ってありますよね。犯人も見つからず、犯行の動機もはっきりしないようだと、ますます複雑怪奇と言えるでしょう。
2:乙女心は複雑怪奇で僕には理解できないよ。
恋愛面では、好きな人の考えていることがわからない場合に「複雑怪奇」が使われることも。男性側が「短い髪が似合ってるね」と褒めたつもりが、「じゃあ、今までの髪型は似合ってなかったっていうこと?」と怒らせてしまった… というエピソードは、たまに耳にしますよね。
男性にとってみれば、褒めているのにどうして怒っているのか全く理解できていない様子。乙女心は、男性にとって永遠の謎といえるかもしれません。
3:役所の手続きは複雑怪奇で、終えるまでとても時間がかかった。
必要書類の準備や記載事項などがややこしく、苦労したということですね。専門用語などが書かれている書類は、一般人にはわかりづらく、役所の人に聞かなければわからないということも多いでしょう。手続きが難しいことが、複雑怪奇という言葉から理解できますよね。
類語や言い換え表現は?
「複雑怪奇」の類語は、不思議なことに重きを置いた「奇奇怪怪」「奇怪千万」や物事が込み入っているという意味を持つ「複雑多岐」などがあります。ひとつずつ意味をチェックしてみましょう。
1:奇奇怪怪
「奇奇怪怪(ききかいかい)」の意味は、以下のとおりです。
[名・形動]《「奇怪」のそれぞれの字を重ねて意味を強めた語》きわめて奇怪なこと。また、そのさま。「―な事件」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「奇奇怪怪」とは、「非常に不思議なこと」。頭では理解できないような、常識はずれの現象などが起きた時に、「これは実に奇奇怪怪だ!」などと表現します。「複雑怪奇」も事件や現象に対して使われるので、使われる場面もよく似ているかもしれませんね。
(例文)
・部屋にいたはずの老人が、忽然と姿を消すという奇奇怪怪な事件が起きた。
・天才画家は、最後に奇奇怪怪な作品を描き残した。
2:奇怪千万
「奇怪千万」は、「きかいせんばん」または「きっかいせんばん」と読みます。どのような意味でしょうか?
[形動][文][ナリ]非常に奇怪であるさま。きっかいせんばん。「―な話」「―な振る舞い」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「千万」は、「迷惑千万」などにも使われるように、性質や状態を表す体言に付いて、程度が甚だしいという意味を表します。つまり「奇怪千万」は、非常に不思議なことが起きて迷惑しているというようなニュアンスになりますね。
(例文)
・「それはまったく奇怪千万な話だ」と父は怒っていた。
・兄の奇怪千万な振る舞いは一同を困惑させた。
3:複雑多岐
「複雑多岐(ふくざつたき)」とは、「物事が多方面に関わりを持ち、込み入っていること」。「多岐」は、「仕事が多岐にわたる」というように、道筋がいくつも分かれていることを指します。込み入った国際情勢や人間関係などに使うことができるでしょう。
(例文)
・部長の仕事は複雑多岐で、私も全ては把握しておりません。
・私の親族関係は複雑多岐で、まだ会ったことがない人もいる。
対義語は?
「複雑怪奇」の対義語としては、「単純明快(たんじゅんめいかい)」や「直截簡明(ちょくせつかんめい)」が当てはまるでしょう。「単純明快」とは、「文章や物事がすっきりとしていて、わかりやすいこと」。「あの人の性格は単純明快だ」「単純明快な説明」などというように使われますね。
また、「直截簡明」は「人柄や文章がくどくなく、簡単でわかりやすいこと」。すぱっと結論を述べたり、さっぱりとした人柄を表す際に使用します。いずれにしても、ややこしく不思議なことを意味する「複雑怪奇」とは意味はまったく異なりますよね。
(例文)
・私が質問すると、「その答えは単純明快だ」と先生は言った。
・国民は、政治家に単純明快な答えを求めていた。
・その作家の文章は直截簡明で、とても読みやすい。
・彼の直截簡明なところが気に入っている。
最後に
「複雑怪奇」は、複雑でわかりにくく不思議なこと。事件の真相や相手の心情がまったく理解できないという時に、「複雑怪奇だ」と表現すると覚えてみてください。この機会に、類語・対義語もセットで覚えてみてはいかがでしょうか?
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