ここ数年で、新しい働き方や価値観が次々と生まれ、「時代が変わってきたなぁ…」と感じるようになった方も多いのではないでしょうか? このように、目まぐるしい勢いで時代や物事が変化することを「疾風怒濤」と表現します。
そこで本記事では「疾風怒濤」の意味や使い方、類語・対義語を解説します。よく似た「疾風迅雷」や「獅子奮迅」の意味や違いも、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか?
「疾風怒濤」の意味
「疾風怒濤」は、「しっぷうどとう」と読みます。意味を辞書で確認してみましょう。
1激しく吹く風と、激しく打ち寄せる大波。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
2 ⇒シュトゥルム‐ウント‐ドラング
激しく吹く風である「疾風」と、荒れ狂う大波である「怒涛」を組み合わせた言葉が「疾風怒濤」です。どちらも激しい自然現象を表すことから転じて、非常に困難な状況のたとえとして使われます。
ちなみに、2番目の「シュトゥルム‐ウント‐ドラング」とは、18世紀後半にドイツで起こった文学革新運動のこと。詩人であるゲーテやシラーが中心となり、文学界における感情の自由と人間性の解放を訴えたと言います。この時、時代が激しく変化したことから「シュトゥルム‐ウント‐ドラング」と呼ばれ、日本では、「疾風怒濤」と訳されたのが語源であるとされています。
使い方を例文でチェック!
「疾風怒濤」は、非常に勢いのある動作を指すほか、激しい時代の変化や企業の転換期などにも用いられます。ここでは、主な使い方を3つ紹介しますね。
1:疾風怒濤の勢いで敵軍が攻めてきた。
すさまじい勢いで何かがやってくることを「疾風怒濤の勢い」と表現します。敵軍がものすごい速さで攻めてきて、非常に緊迫した場面が想像できますね。追い詰められていて、とても厳しい状況であることが理解できるでしょう。
2:日本史を学んでいると、幕末から明治にかけては疾風怒濤の時代であったことがわかる。
約260年間続いた徳川幕府が倒れ、明治政府による政治が始まったり、和服から洋装へと着るものが変化したりと、今までの常識がひっくり返った激動の時代でした。このように、目まぐるしく歴史が移り変わる様子は、まさに「疾風怒濤の時代」と呼べますね。
3:会社の経営陣が一新され、疾風怒濤の時代に突入した。
会社の上層部が変わるなど、企業における変革期を迎えたときに「疾風怒濤の時代」が使われることも。特に、会社の不正問題による経営陣の一新は、今までの経営方針や社員教育などを根本から見直すことになるため、先の見えない状況が長く続くことが予測されます。
類語や言い換え表現は?
「疾風怒濤」の類語には、「疾風迅雷」「獅子奮迅」があります。字面も意味もよく似ていますが、微妙に意味合いが異なります。1つずつチェックしていきましょう。
1:疾風迅雷
「疾風迅雷(しっぷうじんらい)」の意味は以下の通りです。
激しく吹く風と激しい雷。事態の変化が急なこと、行動が迅速なことなどにたとえる。「―の進撃」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
激しい風である「疾風」と激しい雷を指す「迅雷」を組み合わせた四字熟語です。「疾風迅雷の進撃」「疾風迅雷の勢い」などと表現されます。「疾風迅雷」は行動が素早くすさまじい様子を指すときに使われますが、「疾風怒濤」は激しい時代の流れなどにも使われます。
(例文)
・仕事の後に予定を控えていた彼女は、疾風迅雷のごとく帰っていった。
・提出期限が迫っていたので、疾風迅雷の勢いで仕事を終わらせた。
2:獅子奮迅
「獅子奮迅」は、「ししふんじん」と読みます。意味は以下の通りです。
獅子がふるい立って暴れまわるように、激しい勢いで物事に対処すること。「―の働きをする」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
まるで獅子が暴れ回るように、ものすごい勢いで物事に取り組むことを「獅子奮迅」と言います。「獅子」とはライオンのことで、「奮迅」は「勢いよくふるい立つ」という意味。勢いがすさまじいという意味以外にも、勇敢な行動をとった人に対して使われることもありますよ。
(例文)
・彼は獅子奮迅の勢いで敵を攻撃した。
・人気俳優は舞台で獅子奮迅の活躍をした。
対義語は?
「疾風怒濤」の対義語には、変化がないさまを表す「旧態依然」や、ゆっくりと落ち着いた様子を表す「悠々閑々」などがあります。意味を1つずつ見ていきましょう。
1:旧態依然
「旧態依然」は、「きゅうたいいぜん」と読みます。意味は以下の通りです。
[ト・タル][文][形動タリ]もとのままで変化や進歩のないさま。「―とした生活ぶり」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「旧態依然」とは、以前から状態が全く変わらないさまを表します。例えば、会社のシステムが旧式のままで昔と全く変わっていないとか、家事は女性がするものなどという古い価値観が根付いた職場などを指して、「旧態依然としている」と批判するような場合に使用します。
今までの価値観がひっくり返り、目まぐるしく時代が変化することを指す「疾風怒濤」とは、正反対の状況と言えるでしょう。
(例文)
・旧態依然な経営方針に納得できません。
・旧態依然なシステムが変わらない限り、仕事と子育ての両立は難しいだろう。
2:悠々閑々
「悠々閑々」は、「ゆうゆうかんかん」と読みます。意味を見ていきましょう。
[ト・タル][文][形動タリ]ゆったりと落ち着いているさま。のんきにかまえるさま。「―と毎日を過ごす」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「気分がゆったりしている」という意味の「悠」と、「暇、落ち着いてのどか」という意味の「閑」を組み合わせた言葉です。「悠々閑々」は、「悠々閑々と構える」「悠々閑々と過ごす」というように、ゆっくりした動作や人柄などと表すため、時代の流れなどを表すときには使いません。
(例文)
・定年を迎えてからは、毎日を悠々閑々と過ごしている。
・せっかくの長期休暇だから、何もせず悠々閑々としていたい。
最後に
「疾風怒濤」は、激しい風と、激しく打ち寄せる大波から転じて、物事が激しく変化する場面で用いられます。「疾風怒濤の勢いで仕事に取り組んだ」「疾風怒濤の時代が到来した」など、日常会話の中でも使うことができそうな表現ですね。AIの進化や持続可能な社会の実現など、現代も「疾風怒濤の時代」と呼べそうです。時の流れをキャッチして、新しい時代を乗り切りましょう。
TOP画像/(c) Adobe Stock