「切磋琢磨」という四字熟語を皆さんは知っていますか? 一度は聞いたことがある四字熟語だと思いますが、実は「切磋琢磨」には2つの意味があるのです。
聞いたことはあるけど意外と知らない正しい意味や、どうしてこの4つの漢字が使われているのかなど、分からないことが多いかもしれません。そこで本記事では、「切磋琢磨」の意味や語源、正しい使い方などを解説していきます。
切磋琢磨とは?
「切磋琢磨(せっさたくま)」を2つの意味に分けて説明します。1つ目は「石や玉などを磨くのと同じように、学問、道徳、技術を磨き上げる」という意味です。たゆまぬ努力によって自分の、技術、素質などを磨き上げるという意味で用いられますね。
2つ目は「お互いに競い合って、励まし合って向上すること」という意味です。「切磋琢磨」と聞くとこちらの意味を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
「切磋琢磨」の2つの意味の違いとしては、1つ目は個人に使うのに対して、2つ目は2人以上である場合に使われるところです。
「切磋琢磨」の由来
「切磋琢磨」は、どうしてこのような意味で用いられることになったのでしょうか? 「切磋琢磨」の由来となっているのは、中国の詩歌集『詩経』。『詩経』の「衛風淇奧」という篇にある「如切如磋、如琢如磨」という一節からきた言葉だと言われています。
「切(せっ)するがごとく、磋(さ)するがごとく、琢(たく)するがごとく、磨(ま)するがごとく」と読みます。切・磋・琢・磨とは、元々それぞれが材料を加工する作業のことを表す表現で、象牙や石などに加工を施し、工芸品を作ることを意味します。
「衛風淇奧」の篇の中では、「武公」という人物を優れた工芸品に例えて褒めたたえる場面で、「切磋琢磨」の由来となる言葉が登場しました。この「武公」という人物は90歳を超えてもなお、徳を修めるために自己鍛錬を怠らなかったそうです。私たちも「武公」を見習って、日々「切磋琢磨」しないといけませんね。
使い方を例文でチェック!
「切磋琢磨」の使い方を、例文を用いてマスターしていきましょう。「切磋琢磨」はポジティブな意味で用いられます。仕事やスポーツなどでライバルや相手を蹴落とすような場面で使うのは、適切ではありません。ともに励まし合い磨き上げることが正しい意味であるため、相手や仲間と良い結果を目指している状況で使うのが正しい用法です。覚えておいてくださいね。
1:私とA君は学生時代に部活動で、「切磋琢磨」しあった仲です。
例文では、仲間同士互いに励まし合い、また競い合って向上するという意味で「切磋琢磨」を使っています。学生時代の部活動は、まさに「切磋琢磨」。時に励まし合い、時に競い合って、同じ目標に向かって練習する日々はまさに青春ですね。
2:私と君は違うチームに所属している、永遠のライバルだね。しかし、ともに「切磋琢磨」しあって、このスポーツ界を盛り上げていこう。
「切磋琢磨」はポジティブな場面で使うのが正しい用法です。ですからこの例文では、たとえライバルであっても、一緒に盛り上げていこう! とするような意味で使われています。
3:私は将来の夢であるスポーツ選手になるために、毎日切磋琢磨している。
この例文は、自分を磨き上げるという意味で切磋琢磨を使っています。切磋琢磨は、複数人でともに努力しよう! という時に使われるイメージを持たれている方が多いかもしれません。しかし、言葉の由来をたどれば、自己鍛錬を表す言葉。ですから、切磋琢磨は自分を磨き上げるという意味でも使える言葉であることを覚えておきたいですね。
類語や言い換え表現は?
切磋琢磨の類語や言い換え表現には、どのようなものがあるのでしょうか? 以下で、切磋琢磨の類語や言い換え表現を確認していきましょう。
1:腕を磨く
この言葉の意味は、「技能が上達するよう、訓練する」こと。切磋琢磨と同じように、技能を磨くという意味を表します。一方でこの言葉には、ともに努力したり、競い合うという意味はありません。したがって、個人の技能の上達という場面でこの言葉を使うのが適切ですね。
2:錬磨(れんま)
この言葉は、「技芸・学問などを鍛える、または磨く」という意味を持ちます。錬という字は金属を強くする時に使用する言葉です。金属は熱し、叩くことでより強固になっていきます。そこから、この言葉が生まれました。「心身を錬磨する」や「百戦錬磨」などというように使用されますよ。
3:高め合う
この言葉は、「お互いに影響を及ぼし合い、程度や状態などが高くなるよう努める」という意味を持ちます。切磋琢磨の、競い合ってともに努力するといった意味の言い換えの表現ですね。「私たちはライバル関係ですが、お互いに高め合いましょうね」などというように使えますよ。
英語表現
さて次は、切磋琢磨を英語で表現してみましょう。残念ながら、「切磋琢磨する」という四字熟語そのままを表す英語表現はありません。ですので、ここでは別の日本語に置き換えた英語の表現を紹介します。
「To work hard and encourage each other」
切磋琢磨を「互いに努力し、励み合うこと」という言葉に置き換えて表現しています。
「They work hard and encourage each other in this school.」
この学校で彼らは、切磋琢磨しています。
最後に
切磋琢磨には、玉や石を磨き上げることに例えて、「心身を磨き上げること」という意味と、「他者とともに努力することや、競い合う」といった場面で使われることがわかりました。ここで注意したいのは、切磋琢磨はポジティブな場面で使われる言葉であること。例えば、卑怯な手を使って、相手を蹴落とす場面では使用されません。
社内で切磋琢磨できる同僚に出会えたとしたら、それはともに高め合える良き友人であり、好敵手です。日々切磋琢磨し、向上していきたいですね。
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