怪我の功名の意味は?
怪我の功名とは、 過失や失敗、災難と思われたことが、思いがけず良い結果となるという意味です。また、なにげなくしたことで偶然にも良い結果を得るという意味もあります。
意図せず偶然に良いことが起こるという意味であり、努力して掴み取った幸運ではありません。
ここでは、怪我の功名の意味や語源、正しい使い方を解説します。
言葉の語源
怪我の功名の「功名」は「高名」を由来とし、「手柄を立てる」という意味です。その後、高名が功名へと変化しました。
「怪我」は汚れや過ちという意味の「穢れる」の当て字だとされています。そのため、怪我は負傷することではなく、不注意によって起きた過失という意味です。これにより、怪我の功名は「過失が偶然にも手柄となり、良い結果に転じる」という意味になります。
正しい使い方
怪我の功名は、失敗だと思っていたことが、思いがけず良い結果を生んだという意味です。あくまでも、偶然により失敗が成功に転じたことを指し、努力を重ねて成し遂げた結果について怪我の功名とは表現しません。
失敗したにもかかわらず、意図しなかった結果を得たという場面で使います。そのため、「努力の結果、幸運な結果を得た。これは怪我の功名だ」という使い方は間違いです。
漢字の間違いに注意
怪我の功名は、漢字の間違いに注意しましょう。「功名」を「巧妙」や「光明」と書くのは誤りです。怪我の功名の意味からは、どちらの漢字もあてはまりそうに感じるかもしれません。
しかし、「巧妙」とは極めて巧みであるという意味で、「光明」は明るい見通しや希望という意味です。どちらも「功名」とは異なるため、書類やメールなどに書くときは気をつけましょう。
怪我の功名の例文
怪我の功名の意味は、例文をみることでより理解が深まります。いくつかご紹介しましょう。
・会社が倒産して次の仕事がなかなか見つからなかったが、フリーランスになったら多くの仕事を受注できるようになり、会社員のときよりも収入が増えた。まさに怪我の功名だ
・道に迷って目当ての店にたどりつけなかったが、怪我の功名で興味深い店を見つけることができた
・寝坊してしまい、大事な会議に間に合わないと青ざめたが、そのおかげで電車の事故に巻き込まれずに済んだ。怪我の功名とはこのことだ
・希望していた企業に就職できず、やむなく現在の会社に就職した。しかし、良い職場で仕事も面白く、成果を上げて早い昇格ができたことは怪我の功名というべきだろう。
怪我の功名の類義語
怪我の功名には、次のようなよく似た言葉があります。
・災い転じて福となす
・不幸中の幸い
・雨降って地固まる
どのことわざも怪我の功名と同じく、災難のようなことが起こってから意図せずに幸運な結果となったという意味があります。怪我の功名と一緒に覚えておけば、幅広い表現ができるでしょう。
それぞれの意味をみていきましょう。
災い転じて福となす
災い転じて福となす(わざわいてんじてふくとなす)とは、悪い出来事が良い状況に変化するという意味です。身にふりかかった災難を立場や見方を変えることでうまく活用し、そのまま自分に役立つものとして利用することを表します。
ビジネスシーンなどで悪い状況になったとき、なんとか打開策を考えるときに使われることの多い言葉です。
(例文)
・無理して働きすぎ、体を壊して会社を退職してから地方に移住した。気候の良い場所で仕事にも恵まれ、災い転じて福となすの結果となった
不幸中の幸い
不幸中の幸い(ふこうちゅうのさいわい)とは、不幸な出来事の中に、せめてもの救いがあるという意味です。そのような出来事は起こらない方が良かったものの、救いとなるようなことがあったために最悪の事態を避けられたというときに使います。
良い結果を得られたという点では怪我の功名と似ていますが、怪我の功名は良い結果だけが残るのに対し、不幸中の幸いは幸運の中に不幸な状況も混じっています。喜べる状況とはいえないため、使う場面には注意が必要です。
(例文)
・大きな自動車事故で車が大破してしまったが、軽症で済んだのは不幸中の幸いだった
雨降って地固まる
雨降って地固まる(あめふってじかたまる)とは、悪いと思ったことでも、いざ終えてみると、かえって良い結果になっていたという意味です。雨が降ったあとは地面に雨が吸収され、地面が固くなることを例えにしたことわざです。
例えば意見が食い違って喧嘩が起きたとき、本音をぶつけ合うことで、かえってお互いの理解が深まったというような状況があげられます。
(例文)
・会議ではメンバーの意見が衝突して言い争いになったが、お互いに同調できるところがあったようで、会議後は談笑する風景が見られた。まさに雨降って地固まるという状況だ
怪我の功名の対義語
怪我の功名には対義語もあります。悪い状況が良い結果となったという怪我の功名に対する対義語は、最後に悪い結果となる「薮をつついて蛇を出す(やぶをつついてへびをだす)」ということわざが該当するでしょう。
つつかなくてもよい藪をつついて、蛇を出してしまったことを例えて、「余計なことをして、思いもしない悪い結果を招く」という意味があります。
(例文)
・彼女の機嫌が悪いのを察すれば良かったのに、わざわざ結果を聞いて怒らせてしまった。薮をつついて蛇を出してしまったようだ
怪我の功名は正しく使おう
怪我の功名は失敗や災難と思われたことが、思いがけず良い結果となったときに使う言葉です。努力をして幸運を掴んだときには使いません。漢字の間違いにも注意しましょう。
怪我の功名には、災い転じて福となすや不幸中の幸いなど類義語となることわざもあり、一緒に覚えておけば表現の幅が広がります。
怪我の功名の意味を正しく覚え、適切な場面で使いましょう。
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