目次Contents
この記事のサマリー
・「及び」は、複数の事柄を並べたり付け加えたりするときに使う接続詞です。
・「及び」の英語表現は “and” です。
・類語として、「並びに」や「と」が挙げられます。
社内文書や法令などで見かける「及び」という言葉。なんとなく意味はわかっているけれど、「説明して」と言われたら難しい言葉の一つではないでしょうか?
この記事では、「及び」の意味を辞書で確認し、使い方・注意点・英語表現まで整理して紹介します。
「及び」とは? 意味と語源
まずは、「及び」の意味から確認していきましょう。
「及び」の意味
「及び」は「複数の事柄を並列して述べたり、別の事柄を付け加えたりする語」です。
辞書では次のように説明されています。
および【及び】
[接]《漢文訓読で接続詞に使う「及」の字を「および」と読んだところから》複数の事物・事柄を並列して挙げたり、別の事物・事柄を付け加えて言ったりするのに用いる語。と。ならびに。また。そして。「生徒―父兄」「国語、数学、―英語は必修」
[補説]多くの語を並列するときは、最後にくる語との間にだけ置くことが多い。
[名]及ぶこと。届くこと。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「及び」語源と語誌
接続詞としての「及び」は、漢文の「及」や「及与」などを訓読する際に、動詞「及ぶ」の連用形を直訳語としてそのまま転用したものです。
「および」と言うようになったのは、平安時代中期以降になってからといわれています。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)

「及び」の使い方を例文でチェック
「及び」は契約書や社内規程、報告書など改まった場で使われることが多いでしょう。正しく使うためにも、基本的な使い方を例文とともに見ていきましょう。
この契約は、甲及び乙双方の同意によって締結される。
契約書などの法的文書でよく見られる形式です。「甲」と「乙」を並列することで、どちらか一方ではなく「両者の合意」が必要であることを明確にしています。
入学願書には、氏名及び住所を記入してください。
ここでは、「氏名」と「住所」という2つの記入項目を並列的に示しています。話し言葉であれば、「と」に置き換えても意味は通りますが、文書などでは「及び」を使うと改まった印象になります。
日本及び海外の顧客を対象としたサービスを展開している。
「日本」と「海外」を並列しています。このように範囲を広げて説明したいときに「及び」を用いると、文章が論理的で引き締まった印象になります。
「及び」と似た言葉との違いと使い分けを解説
「及び」は、「かつ」「並びに」「または」「あるいは」などと混同しやすいところがあります。ここでは、辞書の定義をもとに、使い分けを整理していきましょう。
「かつ」
「かつ」は「且つ」とも書く接続詞です。ある物事に他の物事が付け加わる場合に用いられます。「かつ」は、客観的な事物について使われることが多いでしょう。主に文章で使われます。
例:「彼女は誠実かつ有能だ」
「並びに」
「並びに」は「及び」の類語です。使い方に区別はないですが、「並びに」の方が口語的でしょう。口語といえども、改まった場で使われることが多いです。
例:「会長並びに社長から祝辞をいただきました」
「または/あるいは」
「及び」は英語の “and” に相当し、「または/あるいは」“or” に相当します。複数の異なるもののうち1つを選ぶときに用いる言葉です。
例:「電車に乗ったら、メールまたはLINEで教えてくれる?」
例:「新幹線あるいは飛行機で現地に向かいます」
「または」は2つのうち1つを取る場合もあれば、「どちらでもいい」という許容の意味を含みます。一方、「あるいは」には「どちらでもいい」というニュアンスはあまりありません。
参考:『使い方の分かる類語例解辞典』、『デジタル大辞泉』(ともに小学館)
「及び」の英語表現
外資系企業や海外との契約書を扱うとき、「及び」をどう訳せばいいか迷うことはありませんか? ここでは、基本的な表現を整理して紹介します。
“and”
“and” は、「及び」と同様、複数の要素を対等に並べるときに使います。
例文:“Please submit your resume and portfolio.”
(履歴書及びポートフォリオをご提出ください。)
“as well as”
“as well as” は、「Aに加えてBも」という追加の関係を表します。
例文:“The report covers sales results as well as future plans.”
(報告書は販売実績および今後の計画を含みます。)
参考:『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)

「及び」 に関するFAQ
ここでは、「及び」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「及び」はカジュアルな会話でも使えますか?
A. 改まった場で使われることが多いので、カジュアルな会話であれば「と」の方が向いているでしょう。
Q2. 「及び」と「並びに」の違いはありますか?
A. 一般には区別なく使われています。
ただし、法令用語としては、小さな段落のつなぎに「及び」を、大きな段落のつなぎに「並びに」が使われていますよ。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
Q3. 「及び」と「または」は同じ意味ですか?
A. 異なります。「及び」は複数の事柄を並列して述べますが、「または」は複数の異なるもののうち1つを選ぶときに用いる言葉です。
最後に
「及び」についての理解は深まりましたか? もしかしたら、意識せずに使っていたという人もいらっしゃるかもしれませんね。本記事では、「及び」のほかにも「並びに」や「かつ」、「あるいは」など、さまざまな接続詞を紹介しました。接続詞は表現の幅を広げるだけでなく、相手に分かりやすく伝えたりする上で、とても大切な品詞です。
微妙な意味の違いがややこしいので、この機会に興味を持った人は、ぜひ接続詞について調べてみてください。
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