「有象無象」という四字熟語。皆さんは、正しく読むことができますか? 普段よく耳にする四字熟語でありながら、読み方や意味を聞かれたら、なんとなくしか答えることができない人も多くいるかもしれません。
そこで本記事では「有象無象」の正しい読み方や意味、使い方、類語や言い換え表現などを解説していきます。
有象無象とは?
はじめに、この四字熟語の正しい読み方は「有象無象(うぞうむぞう)」です。よく、「ゆうぞうむぞう」や、「ゆうしょうむしょう」などと読み間違える方がいます。「うぞうむぞう」が正しい読み方ですので、しっかりと確認しておきましょう。
有象無象には2つの意味があるので、2つに分けて解説していきます。
1つ目は、「たくさん集まった、つまらない連中」という意味。「ろくでもない連中」などという意味もあり、相手を貶す場面で使用される四字熟語です。意味から分かるように、ビジネスシーンで相手に対して使うのは不適切であるため、使用することはやめておいた方がいいですね。
2つ目の意味は、仏教用語の「有相無相(うそうむそう)」と同じ意味で、仏教の考え方を表します。仏教の本質である、「物事が具体的で個別的な形を持つ姿と、物事が具体的な形を持たない抽象的なものがある」ことを指す意味がありますね。
「有相無相」について、さらに詳しく解説していきましょう。「有相無相」の「有相」は「存在している形態や姿」を指し、「無相」は存在しない形態や姿を指しています。したがって、「有相無相」は仏教の教えにおいて、物事が本質的には実物を持たず、常に変化しているという考え方ですね。「有相無相」は仏教の教えにおいて、仏教の根本的な考え方と結びついているので、覚えておいて損はないでしょう。
使い方を例文でチェック!
「有象無象」の使い方を、例文を用いてマスターしていきましょう。「有象無象」は「人を貶す」場面で用いられる言葉ですので、ビジネスシーンで使用する時は注意が必要です。以下の例文で正しい用法をチェックしましょう!
1:「町は有象無象で埋め尽くされている」
有象無象は、相手を蔑むときに使われる表現です。今回の例文では、「町を埋めつくす無数のろくでもない連中」という意味で使っています。町にいる人々に対して、ネガティブな感情を持っているときに使うイメージですね。
2:「どの企業の提案も似たようなものばかり。有象無象で目を引かない」
「有象無象」は、人に対してだけではなく、物に対しても使用することができます。この例文では、企業の提案に対して、「大差なく、どれも魅力がない、つまらないもの」という意味で使われていますね。企業の提案は、すべて魅力のない提案であったことが分かります。
上司に、「君の提案は有象無象で目を引かない」と言われてしまったときには、自分の提案を見直すことが必要のようですね。
3:「有象無象の中で、A君はひときわ異彩を放っていた」
「有象無象」を用いる上で、人を褒めることができる限られた場面を紹介します。この例文での有象無象は、「A君の才能がたぐいまれであったこと」を際立たせる意味で用いていますよ。
類語や言い換え表現は?
有象無象の類語や言い換え表現には、どのようなものがあるのでしょうか? 以下で、有象無象の類語や言い換え表現を確認していきましょう!
1:烏合の衆
有象無象の類語として、まずは「烏合の衆(うごうのしゅう)」を紹介しますね。「烏合の衆」とは、「カラスのようにたくさん集まって、ガヤガヤと騒ぐだけの群衆」という意味があります。また他にも、「規律もなく統率もない集団」という意味も。その意味から派生して「未熟でまとまりのない、だらしない連中」を指す言葉とされているのです。
「烏合の衆」の「烏」を、「鳥」と誤って表記してしまうことがあるので注意したいですね。烏合の衆は自嘲気味に使用することもあれば、ある集団を揶揄するように使用することもあります。有象無象と同じく、相手を褒める場合に用いることはありません。
2:小物
「小物(こもの)」とは、「つまらない人物」のこと。「くだらない人」を表す言葉として類語だと言えますが、「有象無象」は不特定多数を指すのに対し、「小物」は特定の人物に対して使う点が異なります。
3:森羅万象
「森羅万象(しんらばんしょう)」と読みます。森羅万象は、「この宇宙に存在する全てのものや現象」という意味がありますね。「森羅」は木が生い茂っている森、「万象」はありとあらゆるものという2つの熟語を繋げたものなのです。
この四字熟語は、有象無象の2つ目の意味である仏教の考え方と似たような表現で使用されますよ。
英語表現
「有象無象」を英語で表現すると、「ragtag and bobtail」となります。これで「つまらない人々の集まり」という意味でよく用いられるスラングです。「一般市民を蔑んだ言い方」である、「ragtag」と、「短くされた尻尾」という意味がある「bobtail」を用いて表現をしています。先ほど紹介した「烏合の衆」を英訳するときにも用いることができますよ。
他に「有象無象」を英語表現としては、「mob」や「rabble」といった英単語が用いられます。いずれも大衆や一般市民を表す英単語です。
なお、よく「有象無象」を翻訳機に打ち込むと、「elephant and non-elephant」と翻訳されますが、これは誤りですので注意しましょう。
最後に
「有象無象(うぞうむぞう)」の読み方は意外と間違えている方が多いので、注意したいですね。「有象無象」は人を貶す場面で使う表現ですので、使用するときは注意する必要があることが分かりました。職場で上司に「君たちの提案はどれも魅力がなく、有象無象だね」と言われた際には、提案を練り直す必要があります。有象無象の提案の中でも、目を引くようなユニークなアイデアを提案していきたいですね。
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