日常生活でときどき登場する「疑心暗鬼」という言葉。人から嘘をつかれて、つい「疑心暗鬼になってしまった」という経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。「疑心暗鬼」とは、一体どのような心理のことを指すのかも気になりますね。本記事では、「疑心暗鬼」の意味や使い方、英語表現などを解説します。
疑心暗鬼とは?
「疑心暗鬼(ぎしんあんき)」とは、「疑う心があると、なんでもないことを恐ろしく感じたり、疑ったりしてしまうこと」です。心の中に不安があることで、誰かの言うことを素直に信じられなくなることってありますよね。
「疑心」とは、文字通り「疑う心」のこと。「暗鬼」は、「暗がりの中に見える鬼」という意味から転じて、「妄想から引き起こされる恐怖心」を指します。この2つの熟語を組み合わせて、「疑う心を持つと、なんでも恐ろしいものに見えてしまう」という人間の心理を表す言葉となりました。
今では、「疑心暗鬼」という四字熟語として馴染んでいますが、本来は、「疑心暗鬼を生ず」という故事成語でした。中国の思想書『列子』に書かかれていたことが由来であるとされています。
使い方を例文でチェック!
「疑心暗鬼」は、「疑心暗鬼になる」「疑心暗鬼に陥る」というように使われます。一体どんな場面で、人は疑心暗鬼になってしまうものなのでしょうか? 使い方とともに、その心理について考察してみましょう。
1:かつて恋人から浮気されたことから、彼女はつい彼氏に対して疑心暗鬼になってしまう。
恋人から浮気されて傷ついた心は、なかなか簡単に癒えないもの。彼氏ができるたびにかつての出来事がフラッシュバックして、「また浮気されるのでは?」と疑ってしまうのも仕方ないことかもしれません。嫌な出来事に心を縛られて、目の前にいる相手を信じられなくなってしまうのですね。
2:親友から嘘をつかれて、すっかり疑心暗鬼に陥ってしまった。
「疑心暗鬼に陥る」という表現も時折見られます。「陥る」は、「落ちて中に入る」という意味なので、ネガティブな感情にはまってなかなか抜け出せない、という苦しい現状が伝わってきますね。特に、信頼していた友人や恋人からの裏切りに、ショックを感じる人は多いでしょう。
3:疑心暗鬼を生じて、誰も信じられなくなった。
不運なことが続くと、「もう誰のことも信じられない!」と人間不信に陥ることも。心の中に生まれた、鬼のような恐怖心はなかなか消えることがありません。何かを信じるということは、勇気がいることなのかもしれないですね。
類語や言い換え表現とは?
「疑心暗鬼」によく似た言葉に、「疑えば目に鬼を見る」「杯中の蛇影」「猜疑心」などがあります。それぞれの意味や使い方を詳しくチェックしてみましょう。
1:疑えば目に鬼を見る
「疑えば目に鬼を見る」は、ほぼ「疑心暗鬼」を同義の言葉です。一度疑った人の目には、恐怖心という名の鬼が見えてしまうということ。できることなら、相手のことを疑わずに素直に信じたいものですよね。
(例文)
・疑えば目に鬼を見るというように、浮気をきっかけに彼女は彼のことが信じられなくなった。
・疑えば目に鬼を見るという言葉があるけれど、日に日に彼女は疑い深くなるようだ。
2:杯中の蛇影
「杯中の蛇影」は、「はいちゅうのだえい」と読みます。意味は以下の通りです。
《杯中に蛇の影があるのを見て、蛇を飲んだと思って病気になったが、後にそれは弓の影であったと知り、病気がたちまち治ったという「風俗通」怪神の故事から》疑い惑う心が生じれば、つまらないことで神経を悩まし苦しむことのたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「杯中の蛇影」は、「疑心暗鬼」と同じような意味で用いられることわざです。ここでは、「恐怖心」や「疑う心」が、「蛇」にたとえられています。あまり馴染みのない表現なので、会話では「疑心暗鬼」の方が使いやすいですね。
3:猜疑心
「猜疑心」とは、「人を疑う心」のこと。相手が自分に隠れて何か悪いことをしているのではないだろうか? と疑う気持ちを表します。例えば、目を合わせない、しどろもどろになって言い訳するなど怪しい言動が見られると、こちらもつい疑ってしまいますよね。
(例文)
・他の女性との浮気を疑っている彼女は、猜疑心に満ちた目で僕を見た。
・できることなら猜疑心など持ちたくはないが、そのメールを見て不安になる一方だった。
英語表現
「疑心暗鬼」とは、わかりやすく言えば、人を疑うこと。英語では、「疑う」という意味を持つ、「skeptical」や「doubt」を使うと、言いたいことが伝わりやすいでしょう。
skeptical
「skeptical」とは、「懐疑的」「疑っているような」という意味。「be skeptical of〜」で、「〜を疑っている」ということができます。相手に対してなんらかの不信感を抱いている時に使われるため、「疑心暗鬼」として応用することができるでしょう。
(例文)
・Could it be that he is cheating on me? I was skeptical.(もしかして彼は浮気しているのでは? と疑心暗鬼になった)
・My husband has been coming home late lately and I am skeptical that he has found another woman. (最近夫の帰りが遅いので、他に女ができたのではと懐疑的になっている)
doubt
「doubt」は、「(人やもの)を疑う」「疑わしく思う」などの意味を持つ単語です。「entertain doubts about〜」で、「〜に疑いを抱く」と表現できます。
(例文)
・Do you doubt me? (私を疑うのですか?)
・I doubted that perhaps he had stolen the money.(もしかしたら、彼がお金を盗んだのではないかと疑った)
最後に
「疑心暗鬼」とは、「疑う心があると、なんでもないことを恐ろしく感じたり、疑ったりしてしまうこと」。恐怖心や猜疑心などネガティブな感情を、鬼にたとえたところが興味深いですね。疑心暗鬼になるのは、かつての辛い経験が原因になっていることも。傷ついた心を受け入れて、素直に信じられるようになれると良いですね。
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