「歯牙にもかけない」という言葉を聞いたことはありますか? 普段の会話ではあまり馴染みのない表現ですが、意味を聞くと、「そんな場面に遭遇したことがある」という方もいるでしょう。そこで本記事では、「歯牙にもかけない」の意味や使い方、類語、英語表現を解説します。
歯牙にもかけないとは?
「歯牙にもかけない」は、「しがにもかけない」と読みます。場合によっては、「歯牙にも掛けない」と書くこともありますね。辞書にはどのように意味が記載されているのか、確認してみましょう。
問題にしない。無視して相手にしない。「世間のうわさなんか―ない」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「歯牙にもかけない」とは、目の前のことをまったく問題にしない、気にしないことを意味します。なんとなくそっけないようなニュアンスが感じられる言葉ですね。
使い方を例文でチェック!
どんな時に「歯牙にもかけない」を使うのか、3つのパターンを見ていきましょう。
1:彼は同僚から何を言われたって、歯牙にもかけない様子だった。
大抵人は、周囲からの意見や評判を気にするものですが、中にはまったく気にしないという人も。相手から何を言われても何処吹く風と、気にも留めません。このように、無視して問題にしない態度をあえて強調したい時に、「歯牙にもかけない」を使うといいでしょう。
2:部長に新しい企画書を提出したが、歯牙にもかけない対応をとられた。
「歯牙にもかけない」は、職場の上司など目上の人からまったく相手にされなかった、というケースでも用いられます。例えば、あなたが上司に対して何か意見を言ったとします。ですが、「今は忙しいから」と話を聞いてもらえなかったり、話の内容に関心を持ってもらえませんでした。このような時に、「上司は私の意見など歯牙にもかけない様子だった」と言うことができます。
3:先輩は私の言うことなど歯牙にもかけない様子で、勝手に作業を進めてしまった。
今まで見てきたように、「歯牙にもかけない」態度は、あまりいいものではありません。相手が自分の意見をなかなか聞いてくれない、という場合、とるに足りないものとして、下に見られている可能性も。された側は気を悪くするため、そうならないよう気をつけたいですね。
類語や言い換え表現は?
「歯牙にもかけない」は、あまり馴染みのない表現なので、代わりとなる表現を覚えておくといいでしょう。ここでは、「目もくれない」「何処吹く風」「取り付く島もない」を紹介します。
1:目もくれない
「目もくれない」の意味は、以下の通りです。
少しの関心も示さない。見向きもしない。「仕事以外のことには―ない」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
目の前のことに関心のない様子を、「目もくれない」と表現します。例えば、好きな人が自分に対して、少しも興味を持っていないような様子だった場合、「あの子は僕に、ちっとも目もくれなかった」と言ったりしますね。相手の女性のつれない態度が目に浮かぶようです。
(例文)
・彼氏は彼女の意見に目もくれなかった。
・部長は仕事以外のことに、まったく目もくれない人なのだ。
2:何処吹く風
「何処吹く風」は、「どこふくかぜ」と読みます。意味は、以下の通りです。
自分には全く関係・関心がないというように、知らん顔をすること。「―と聞き流す」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「何処吹く風」は、聞いたことがある方も多いのでは? 誰に何を言われても、そっけない顔で知らんぷりをする様子を「何処吹く風」と言ったりしますね。場合によっては、相手に聞きたくないことを言われているので、わざと知らないふりをしている人もいるでしょう。無視して相手にしないところが「歯牙にもかけない」とよく似ていますよね。
(例文)
・B君は、先生に何を言われても何処吹く風という顔だった。
・あの人は、いつも何処吹く風というような態度だから気に入らない。
3:取り付く島もない
「取り付く島もない」とは、「頼るところが何もない」という意味。例えば、無愛想で話しかけても、何も反応がない人とは、なかなか仲良くなれるきっかけが掴めませんよね。そんなときに、「彼女は取り付く島もない」と表現します。
(例文)
・「男の人は嫌いだ」と言われては、取り付く島もないよ。
・Aちゃんは、つっけんどんで取り付く島もない。
対義語
「歯牙にもかけない」の対義語には、「興味を持つ」という意味がある「頓着する」や「目が行く」などが当てはまります。それでは、意味を見ていきましょう。
1:頓着する
「頓着」は、「とんじゃく」または「とんちゃく」と読みます。意味は、「深く気にかけてこだわること」。執着に近いほどに、相手・もののことを気にすることを言います。否定形で使われることも多く、少しも関心のないことを「頓着しない」と言うこともありますね。
(例文)
・彼は、最近同じチームのBちゃんに頓着している。
・普段冷静な彼だが、そのことだけには頓着しているようだ。
2:目が行く
「目が行く」の意味は、以下の通りです。
心が引かれて、視線を向ける。「つい欲しい物に―・く」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
興味があって、つい目で追ってしまうことを「目が行く」と言います。気になる異性のことを、あまり見すぎてはいけないとは思っているものの、つい見てしまうということはありますよね。そっけない「歯牙にも掛けない」とは、正反対の意味を持つ慣用句です。
(例文)
・ショッピングしていると、つい欲しいものに目が行く。
・前の席でうるさくいびきをかいている人に、つい目が行ってしまう。
最後に
「歯牙にもかけない」とは、気にもかけないという意味。自分の関心のないことだと、聞く耳が持てなかったりすることもあるでしょう。しかし、そっけない態度を取られて相手は気分を害してしまうかもしれません。気づかないうちに、「歯牙にもかけない」態度をとっていたということがないよう気をつけたいですね。
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