「一矢を報いる」の読み方や意味とは?
「一矢を報いる」とは、自分に向けられた攻撃や非難などに対して、反撃・反論することです。「いっしをむくいる」と読み、おもに反撃・反論しても形勢を逆転できなかったときに用いられます。
「を」を省いて「一矢報いる」と表現することもあります。いずれも形勢逆転できなかったときに使われる表現のため、攻撃や非難を受けたままの状態、矢を射ったところで相手に届かない状態、言い換えれば「報いていない状態」を指すことが一般的です。
一矢を報・いる
出典:小学館 デジタル大辞泉
敵の攻撃に対して、矢を射返す。転じて、自分に向けられた攻撃・非難などに対して、大勢は変えられないまでも、反撃・反論する。
具体的にはどう使う? ビジネスシーンにおける例文
「一矢を報いる」は、ビジネスシーンでも使われる表現です。たとえば、次のように使います。
・新商品の売れ行きは、圧倒的にライバル社のほうがよかった。一矢を報いる目的で有名タレントを押し出したキャンペーンを実施したが、期待するような効果は得られなかった
・汚職事件以来、我が社のイメージダウンは留まるところを知らない。一矢を報いたいが、何をしても裏目に出てしまうのが実際のところだ
ビジネスや社会的評価が思わしくないときに「一矢を報いる」必要が生じます。一矢を報いたところで期待するような効果を得られなかったときは、「焼け石に水」や「なしのつぶて」と感じるかもしれません。
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プライベートシーンでの例文
「一矢を報いる」は、プライベートの日常会話でも使われることがあります。いくつか例をみていきましょう。
・優秀な姉には何をしても敵わない。今回の中間テストこそは一矢を報いようと頑張ったが、点数でも順位でもまったく歯が立たなかった
・矢継ぎ早に口攻撃され、思わず言い返してしまった。一矢を報いるつもりが、かえってわたしの欠点に気づかされることになった
プライベートシーンでも、評価が思わしくないときなどに「一矢を報いる」状況になるかもしれません。効果的な「一矢」となるためにも、練りに練った反撃・反論が必要といえるでしょう。
「一矢を報いる」と類似する意味の言葉
「一矢を報いる」のように自分に対する攻撃・非難に対抗する言葉としては、次のものが挙げられます。
・仕返し
・しっぺ返し
・雪辱
・意趣返し
・リベンジ
・恩を仇で返す
・負け犬の遠吠え
いずれも反撃・反論する点では類似する表現ですが、使用するシチュエーションなどが異なります。それぞれの違いに注目して見ていきましょう。

仕返し
「仕返し」とは、やり直すことや報復すること、復讐などの意味で使われる言葉です。
・彼女は何かとわたしに突っかかって来る。あまりにも腹が立つから、仕返ししたくなってしまう
・彼に足を踏まれたからといって、思いっきり蹴とばして仕返しをするのはやり過ぎだ
「一矢を報いる」は、相手の攻撃が悪意に基づいたものかどうかにかかわらず使用されます。一方「仕返し」は、相手に悪意があるときに使われる傾向にあります。
しっぺ返し
「しっぺ返し」とは、すぐに仕返しをすることです。「竹箆(しっぺい)返し」の音が変化したもので、「しっぺ返しをする」や「しっぺ返しを食う」のように使います。
・彼女に辛く当たっていたら、いつかはしっぺ返しを食うよ
・しっぺ返しをされたことで、自分の行動を振り返るきっかけとなった
竹箆とは、禅宗で参禅者の指導に用いられる法具の一つで、長さ60~100cm、幅3cmほどの竹で作られた棒のことです。竹箆で打たれたのを打ち返すことから「竹箆返し」という表現が生まれました。
雪辱
「雪辱」とは、恥をすすぐことです。特に、競技などで負けた相手を破って名誉を取り戻す場合に使われます。
・去年の雪辱戦と思うと、いつも以上に力が入る
・わずかな点差で競り勝ち、雪辱を果たした
なお、以前負けた相手に勝つことを「雪辱を果たす」と表現します。文化庁が令和元年度に実施した「国語に関する世論調査」では、前に負けた相手に勝つことを意味する表現として「雪辱を果たす」と答えた方は38.3%と、平成22年度の調査(43.3%)よりも下回っていました。
一方、本来の表現ではない「雪辱を晴らす」と答えた方は50.5%と前回(43.9%)よりも増えていたよう。言葉は変化していくものですが、本来の言い方も覚えておきましょう。
参考:文化庁「令和元年度「国語に関する世論調査」の結果の概要」
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意趣返し
「意趣返し」とは、恨みを返すことです。
・彼女に意地悪をして以来、いつ意趣返しされるかと怯えながら生きている
・彼は「意趣返しだ」と言ったが、一体何の意趣なのかわからない
復讐をすることや仕返しをすることと同義で使われます。
リベンジ
「リベンジ」とは復讐の意味を表す英語ですが、競技で一度破れた相手と再び対戦することや、もう一度挑戦することなどの意味で使われます。
・明日はリベンジマッチなので、いつも以上に気合いが入る
・雨で中止になった舞台のリベンジ公演を計画する
「アベンジ」も復讐の意味を持つ英語ですが、個人的な復讐の意味合いを持つリベンジとは異なり、正義感による悪への報復といった意味で使われます。
恩を仇で返す
「恩を仇で返す」とは、恩人に害を与えることです。
・恩返しをするのが通例だろう。まさか恩を仇で返すなんて…
・世話になった人に恩を仇で返す
恩を仇で返すは、決して好ましい言葉ではありません。反対に、害を与えた人に善行を施すことは「仇を恩で報いる」と表現します。
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負け犬の遠吠え
「負け犬の遠吠え」とは、敗残者が負けを認めない発言をすることです。
・負けた人が何を言っても、負け犬の遠吠えにしか聞こえない
・負け犬の遠吠えは見苦しい
また、陰で勝者の悪口を言うことも、負け犬の遠吠えと表現します。
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適切なシーンで「一矢を報いる」の言葉を用いよう
「一矢を報いる」は「リベンジ」するといった意味で使われることもありますが、実際には「負け犬の遠吠え」がニュアンスとして近く、効果的に一矢を報いていないときに使われます。例文も参考に、適切な場面で使用することが大切です。
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