目次Contents
「虎の子」が意味することとは?
「虎の子」という言葉を見て思いつくのは、動物の虎の赤ちゃんかもしれません。しかし、この言葉には別の意味もあるのです。「虎の子」が何を意味するのか、使い方なども含めて紹介します。また、「虎」を使った慣用句やことわざも見ていきましょう。
辞書の意味をチェック
【虎の子】
読み方:とらのこ
大切にして手放さないもの。秘蔵の金品。「—の財布」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「秘蔵の金品」とは、他人にはあまり見せずに大切にしまっている金銭や品物を指します。「虎の子」はお金や貯金、資産、宝石などを指す場合によく用いられますよ。これは大切にして手放さないものの代表として、お金や宝石が該当するからでしょう。
由来は虎?
「虎の子」の由来とされるのが、動物の虎です。虎は子どもをとても大切に育てる習性があり、大変かわいがるそうです。子どもを大切に育てる動物は他にもいますが、虎の子どもに対する愛情は群を抜くとか。
その虎の姿に由来し、生まれたのが「虎の子」という言葉。虎のように、自分の大切にしているものを手放さないことを意味する際に使われるようになったとする説があります。
「虎の子渡し」も知っておこう
「虎の子渡し」は、「家計のやりくりに苦しむこと」のたとえとして使われる言葉です。家計が苦しいことを、なぜ「虎の子渡し」というのだろうと疑問に思う人もいるでしょう。その由来を見ていきましょう。
由来は中国の書物
この言葉は、中国の書物から生まれたとされています。
虎が子どもを3匹生むと、その中に必ず彪(ひょう)が1匹混じっていて、他の2匹を食べようとします。親子で川を渡る際、子を彪と2匹だけにすると食べられてしまいますが、同時に3匹運ぶことはできません。
そのため、虎は子どもの運び方についてあれこれと考慮し、悩むことになりますが、それが転じて、この言葉の使い方に至ったという説があります。
「虎の子渡し」という庭がある?
京都市左京区にある南禅寺(なんぜんじ)には、「虎の子渡しの庭」と呼ばれる庭園があります。この庭園は江戸時代初期に代表する枯山水庭園。水を用いることなく、岩屋砂などで山水を表現した石庭です。
白砂で川を表現し、それを渡る虎の姿を石で表していることが、「虎の子渡しの庭」という名称になったという説も。子どもの運び方に思案する虎の姿から、深く考えることの大切さを表現しているのかもしれませんね。
「虎の子」という言葉の使い方
「虎の子」という言葉の使い方を見ていきましょう。例文で紹介しますので、参考にしてくださいね。「虎の子」はさまざまなシーンで使われる言葉です。
「品物」を表す場合
《例文》
・彼女は、マリッジリングを虎の子のように大切にしている
・虎の子のような存在の愛車を手放さなければならない
自分にとって特別な意味を持つ品物は誰にでもありますよね。肌身離さず持っているジュエリーなどのアイテムや、自動車や自転車などが「虎の子」にあてはまるという人もいるでしょう。
「お金」や「資産」を表す場合
《例文》
・祖父母から、大学進学の足しにして欲しいと虎の子を贈与された
・パートナーの事業が安定するまでの我慢と考え、虎の子を切り崩している
「虎の子」でもっともよく使われるのが、「お金」や「資産」という意味。誰かのために積み立てたお金や、大切に形成してきた資産などについて述べる場合に、「虎の子」という表現を用いることが多いでしょう。
「虎の子」の類語
「虎の子」の類語を見ていきましょう。言い換えの表現として把握しておくのもいいですね。例文とともに紹介します。
「愛蔵」
「愛蔵」は、いつくしんで、大切に所蔵するという意味の言葉。「あいぞう」と読みます。所蔵とは、自分の所有物として大切にしまうことを指しますので、「虎の子」ととても意味が近いと考えていいでしょう。「愛蔵品」や「愛蔵版」という使い方をすることもあります。
《例文》
・父の愛蔵の品は、若かりし頃にイタリアで購入した腕時計だ
「秘蔵」
「秘蔵」は、人にはあまり見せずに大切にしまっておくことや、自分のもとから離すことなく大切にかわいがり、育てることを意味する言葉。物だけでなく人に対しても使われます。他人にもらさず、秘しておく場合に用いられることが多いでしょう。読み方は「ひぞう」。
《例文》
・彼女は秘蔵のレシピを使い、驚くほどおいしいスープを作ってくれた
「珍蔵」
「珍蔵」は、珍しいものとして、大切にしまっておくことの意。そのもののことを指すこともあります。読み方は「ちんぞう」。
《例文》
・最近ネットで購入した古書が非常にレアな本であるとわかり、珍蔵することにした
「虎」を含む慣用句やことわざをチェック
「虎」を使った慣用句やことわざを紹介します。会話で使われることもありますので、意味を把握しておくのもいいですね。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」は、危険を冒さなければ、大きな成功は得られないということのたとえ。「こけつにいらずんばこじをえず」と読みます。
中国・後漢の歴史を記した『後漢書』が由来とされる言葉。ビジネスに関連する情報や自己啓発などのジャンルで使われることが多いでしょう。この言葉を座右の銘やモットーにする人もいるようですよ。
「苛政は虎よりも猛し」
「苛政は虎よりも猛し」は、苛政の人民への害は、虎の害よりはなはだしいという意味。「かせいはとらよりもたけし」と読みます。「苛政」とは、厳しすぎる政治や、そういう政治のやり方のこと。「人民」は、国民のことを指すと考えてください。
厳しすぎる政治が国民に与える害や苦しみは、虎のそれよりも恐ろしいということを表す言葉です。
「虎に翼」
「虎に翼」は、ただでさえ強い力を持つ者に、さらに強い力が加わることをたとえた言葉。強い力と鋭い牙を持つ虎はそのままでも十分に強いですが、翼をつけるとさらに威力が増しますよね。読み方は「とらにつばさ」。
いい意味で使われることが少ない言葉ですが、ドラマのタイトルや小説などに用いられています。
最後に
「虎の子」について紹介しました。虎に限らず、動物や生き物を用いた慣用句やことわざはたくさんあります。犬や猫など身近な存在の動物はもちろん、ヘビ(蛇)やライオン(獅子)、ヒョウ(彪)などが使われているものも。それぞれの動物や生き物の特徴を捉えた言葉も多いので、ぜひチェックしてみてください。
TOP画像/(c)Adobe Stock