「中庸」とは?
「ちゅうよう」と読むこの言葉を見聞きするのは、ビジネス書や自己啓発関連の記事が多いかもしれません。あるいは、ゲームのRPGで見かけて知っているという人もいるでしょう。
「中庸」は、偏りがなく調和がとれていることを表しますが、その状態が道徳的に望ましいというニュアンスを含みます。ビジネスパーソンの間で注目されており、教養や自己啓発の一つとして、「中庸」について学ぶ人も多いでしょう。
道徳や倫理と深くかかわりがある「中庸」について、意味や使い方を見ていきましょう。
意味を確認
【中庸】
読み方:ちゅうよう[名・形動]
1:かたよることなく、常に変わらないこと。過不足がなく調和がとれていること。また、そのさま。「—を得た意見」「—な(の)精神」
2:アリストテレスの倫理学で、徳の中心になる概念。過大と過小の両極端を悪徳とし、徳は正しい中間(中庸)を発見してこれを選ぶことにあるとした。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
たとえば、相反する2つの意見があるとして、どちらか一方に偏るのではなく、両意見のいい点をバランスよく取り入れるという意味合いで使われることが多いでしょう。
偉人が述べた「中庸」
「中庸」という言葉は、孔子(こうし)が由来とされています。孔子とは、中国(春秋時代)の思想家であり学者。儒教の祖としても知られており、日本文化にも大きな影響を与えた人物です。
孔子の述べた「中庸」
『論語(ろんご・孔子の言行録)』には、「中庸の徳たるや、それ至れるかな」という一文があります。孔子が述べた言葉とされていますが、これは「中庸の道は道徳として最高である」という意味。偏ることなく、いつまでも変わらない道徳というのは最高であるということを表しています。
また、儒教の基本となる書である『四書(ししょ)』の中には、「中庸」という書物があります。「中庸」は四書の一であり、儒教の根本書となるもの。「中庸」の誠の域に達する修養法(知識を高めて品性を磨き、自己の人格形成につとめる方法)を述べる書物として知られています。
アリストテレスの「中庸」とは
古代ギリシャの哲学者であり、プラトンの弟子であるアリストテレスも「中庸」について述べています。アリストテレスは、両極端になることを道義に外れた言行とし、これを避けて正しい中間を選ぶことが徳であるとしました。この正しい中間とされるのが「中庸」です。
「中庸」の使い方は? 例文で確認
ここからは、「中庸」という言葉の使い方を見ていきましょう。例文を用いて紹介します。
《例文1》中庸はビジネスシーンでも注目されており、教養として学ぶ人が増えている
ビジネスシーンで成果をつかみ、自分を成長させるには、物事の捉え方や考え方、対処の仕方などを学ぶ必要があるとされています。自己研鑽に励む人も少なくありませんが、ビジネスパーソンが学ぶべき教養の一つに「中庸」があると言えるでしょう。偏りがなく調和がとれているというのは、なかなか成し得ないこと。だからこそ、学ぶことを望むのかもしれません。
《例文2》意見は対立したが、主任が中庸を得た意見を考えるよう提案して事なきを得た
ビジネスシーンにおいて、人と人との間で意見や見解が対立するのはめずらしいことではありません。そのようなケースで必要となるのが、「中庸」と言えます。どちらか一方に偏った意見を採用するのではなく、出た意見のいいところをピックアップし、どちらの意見も生きるような意見にできるのが理想と言えるでしょう。
《例文3》リーダーは、中庸な立場で物事を見る必要がある
ビジネスシーンにおいて、「中庸」を強く求められるのは、リーダーや管理職かもしれません。人材育成で欠かせないのは、公正かつ公平な態度と判断力でしょう。部下や後輩の適性を考えつつ、本人の希望に沿うようなマネジメントが要求されるため、「中庸」を理解し、意識する必要があると言えます。
「中庸」の類義語を紹介
「中庸」と似通った意味を持つ言葉である類義語を紹介します。「中庸」の言い換え表現として使えるかもしれませんので、ぜひチェックしてください。
「中道」
読み方は「ちゅうどう」。一方に偏らない穏やかで無理のないやり方や、考え方を表す言葉です。また、偏りのない公正な道という意味でも使われるでしょう。
《例文》
・情報過多の現代社会において、中道を目指すのは至難の業だと言える
ストレスを抱えながら多忙な毎日を過ごすというのは、現代人の生き方の特徴と言えるかもしれません。そのような状態だからこそ、「中道」が大切になります。極端な選択や行動を避け、人や環境と調和することを意識するのは、心のバランスを保つことにもつながるかもしれませんね。
「節制」
度を越さないように控えめにすることや、規則正しく統制のとれていること、欲望を理性の力により秩序あるものとすることを意味する言葉。「せっせい」と読みます。偏りのなさやバランスを取る意味合いを含むため、「中庸」と近い意味を持つと考えていいでしょう。
《例文》
・節度を守り、節制を心がけることは、自分にとってもプラスになるはずだ
理性を働かせて度を越さないようにするのは、簡単にできることではないかもしれません。しかし、それを心がけることはできます。そのような意識を持つということは、「ほどよい」状態を作ることにもつながるでしょう。自分の心や体だけでなく、他人とのかかわりにもプラスに生きそうですね。
「頃合」
「頃合」は「ころあい」と読みます。適切な時機(機会)や、ちょうどよい程度という意味を持つ言葉です。「頃合い」と表記することもあります。「ちょうどよい」という意味を持つため「中庸」の類義語と言えるでしょう。
《例文》
・パソコンデスクを探していたが、頃合の値段のものが見つかり購入できた
「中庸」には、「適切な時機」という意味はありません。そのため、「頃合」の類語として「中庸」を使う際は注意が必要です。
最後に
「中庸」という言葉の意味や使い方を紹介しました。「中庸」は奥深い意味を持つため、その考え方や定義を理解するのは難しいと感じる人もいるでしょう。しかし、理解が進めば、ビジネスシーンだけでなく人生においても大きなプラスとなるはずです。「中庸」を会得し、発揮するのは困難ですが、教養として学び、意識することや理解することはしていきたいですね。
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