目次Contents
この記事のサマリー
・「布石」とは将来のために配置しておく備えを意味します。
・「布石を打つ」は先を見据えて備える意味で使います。
・「伏線」「根回し」との違いを知ると、使い方がより明確になります。
もともとは囲碁の用語である「布石」。この言葉は、ビジネスや政治の場面でも「将来に向けた準備」や「戦略的な行動」を表す言葉として広く使われています。
しかし、その正確な意味や使い方をあやふやなまま使っている人も多いのではないでしょうか? いざという時に自信を持って使いこなせるよう、整理しておきたいところですね。
この記事では、辞書の情報に基づき「布石」の本来の意味、現代での使い方、そして類語との違いをわかりやすく解説します。
「布石」の意味と由来を整理
囲碁の言葉として知られる「布石(ふせき)」には、「ぬのいし」と読む別の意味もあります。まずはそれぞれの語義を整理し、現代でどのように使われているかを確認しましょう。
「布石(ふせき)」の意味
まず、「ふせき」と読む場合の意味を、辞書で確認します。
ふ‐せき【布石】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
1 囲碁で、序盤戦での要所要所への石の配置。
2 将来のために配置しておく備え。「新党結成への―を打つ」。
「布石(ふせき)」は、囲碁の序盤戦で要所に石を配置することを指します。
そこから転じて、「将来のために備えをしておく」という意味で使うようになりました。
つまり、対局の先を見据えて石を置くように、物事の展開を見通して準備することを表します。政治や経済の報道、ビジネスシーンなどでも、戦略的な計画や行動の意味でよく使います。
「布石(ぬのいし)」の意味
「布石(ぬのいし)」は、囲碁とはまったく異なる意味を持ちます。『デジタル大辞泉』(小学館)によると「道に沿うなどして、長くすえつけた敷石。ぬのしきいし。」とあり、文字通り「石を敷き並べたもの」を指します。
参考:『デジタル大辞泉』、『日本国語大辞典』(小学館)
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「布石」の基本的な使い方
「布石」は、「布石を打つ」という使い方をすることが一般的です。ここでは、「布石を打つ」の正しい意味と具体例を確認しましょう。
「布石を打つ」の正しい意味
「布石を打つ」は、「将来に向けてあらかじめ備えをしておく」という意味です。
例えば、会社の新規事業計画を立てる際、事前に関係部署と調整したり、試験的なプロジェクトを立ち上げたりすることは「布石を打つ」にあたります。
政治報道でも、「選挙に向けた布石を打つ」「新制度導入への布石を打つ」といった表現があります。
いずれも、何かを成功させるための準備や手立てを整えることを表しています。
例文で学ぶ「布石」
・「契約成立への布石を打つ」
・「新規事業の展開に向けた布石となる」
・「改革を進めるための布石として調査を実施する」
これらの例文はいずれも、未来の成果を見据えた準備や行動を表しています。囲碁で石を配置するように、先を読んで計画を整えることを意味します。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)
「布石」の英語表現
日本語の「布石」にあたる、「将来に備えて行動を整える」という意味を持つ英語表現を紹介します。
“strategic”
“strategic”は「戦略上の・重要な」という意味を持つ形容詞で、先を見据えた行動を示す点で、「布石」とよく似ています。
例文
“This meeting is a strategic step toward our new partnership.”
(この会議は、新しい提携に向けた布石となる。)
“preparations”
“preparations”は「準備」「用意」「支度」を意味し、心構えや下準備など広い意味での「備え」を表します。将来に向けて計画的に備える点で、「布石」と通じる表現です。
例文
“Her careful preparations led to the success of the project.”
(彼女の入念な準備が、プロジェクトの成功への布石となった。)
参考:『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)

「布石」の類語・言い換え表現
「布石」と同じように、あらかじめ準備をして物事をスムーズに進める言葉はいくつかあります。ここでは、意味が近い「伏線」「根回し」「お膳立て」を取り上げ、それぞれの特徴を整理します。
「伏線(ふくせん)」
「伏線」は、後のことがうまく行くように、前もって準備をしておくことを指します。
この他、小説や映画、演劇などの創作物において、「後の展開に備えて、あらかじめ事柄をほのめかしておくこと」という意味も持ちますよ。
「根回し(ねまわし)」
「根回し」は、交渉や会議などで「物事をうまく進めるために、事前に調整しておくこと」を意味します。
「お膳立て(おぜんだて)」
「お膳立て」は、「すぐに取りかかれるように準備を整えること」という意味です。例えば「プレゼンの成功に向けてお膳立てをする」と言えば、資料の準備や会場の手配など、実務的な環境づくりを整えるイメージです。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)、『現代用語の基礎知識2025』(自由国民社)

「布石」に関するFAQ
ここでは、「布石」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「布石」はどんな場面で使うのが適切ですか?
A. ビジネスや政治など、将来の計画や戦略を語る場面で使われることが多いでしょう。
Q2. 「布石を打つ」の言い換え表現はありますか?
A. はい、「伏線」「根回し」「お膳立て」「準備」などがあります。
いずれも「前もって備える」という意味で近い言葉です。
Q3. 「布石」のNGな使い方はありますか?
A. 結果そのものに対して使うのは誤りです。
「布石」は「これからのための準備」を意味する言葉です。例えば「成功の布石を得た」と言うと、すでに結果を指しているため不自然になります。「成功への布石を打つ」と表現するのが正確です。
最後に
「布石」という言葉には、未来を見据えて準備するという意味が込められています。仕事でも日常でも、何かを始める前に一歩先を考えて動く姿勢は、信頼と成果につながります。
囲碁のように先の展開を見通し、地道に「布石を打つ」意識を持つことで、より確かな結果を導くことができるでしょう。今日からの行動に、ひとつの布石を置いてみてください。
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