「正当化」とは
「正当化」と聞いて、どのようなイメージを持ちますか? あまりいいイメージはないと言う方も多いかもしれませんね。「正当化」は日常会話だけでなく、書籍でもよく登場する言葉です。あらためて意味や使い方をチェックして行きましょう。
「正当化」とは? 辞書で確認
▷【正当化】読み方:せいとうか
[名](スル)自分の言動などを、道理にかなっているように見せること。「自らの行為を—する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
たとえば、批判や非難された際に、自分の言動は間違っていないと主張したり、道理にかなっているように見せようと行動したりするさまを「正当化」と言います。
「正当化」とはどんな言動を指す?
「正当化」を感じさせる言動にはさまざまなものがあります。自分の非や落ち度を認めず、次のような言動をした場合は、正当化していることになるでしょう。
・言い訳をする
・他人のせいにする
・自分は正しいと主張する
・自分のことを棚に上げて、相手の落ち度を責める など
上記からもわかるように、ネガティブな意味合いで使われることが多い言葉です。
「正当化」の使い方を確認
ここからは、「正当化」という言葉をどのように使うか見ていきましょう。例文で紹介します。
例文で確認
《例文》
・明らかに人為的ミスであったが、彼女は一貫して自分の行為を正当化し続けた
・自分のしたことを正当化するのに必死な彼の姿を見て、幻滅した
・世の中には、自分を正当化するために平然と他人を攻撃する人もいる
明らかに自分が間違っているのに、自分を正当化してしまうというのは、誰にでもあることです。特に窮地に陥った際などは、やってしまいがち。
しかし、中には意地になって周囲を巻き込もうとしたり、言動がエスカレートしたりする人もいますから、注意しなければなりません。
「正当化」と似た言葉はある?
「正当化」と似た意味を持つ言葉を見ていきましょう。どのような言葉があるでしょうか?
「自己弁護」
自分をかばうために言い開くことや、弁明することを表す「自己弁護」は、「正当化」と同じような意味を持ちます。自分の立場をよくするために、自分の利益になることを主張するなども、「自己弁護」の一つです。
「保身」
自分の地位や名誉、安全などをも失わないように身を処すことを表します。義務や責任を果たさず、自分を守ることばかり優先する人に対して使われることが多いため、「正当化」と似ていると考えていいでしょう。
「正当化」と「肯定」は何が違う?
「肯定」と「正当化」も似たイメージがありませんか? しかしこの2つの言葉には大きな違いがあります。
「肯定」とは
積極的に意義を認めることや、その通りであると認めることが「肯定」の持つ意味です。自己啓発や心理分野では、「自己肯定感」のように使われていますが、これは自分のことを認めて受け入れるという意味。この場合は、短所や欠点、失敗したことなどもすべて肯定的に受け入れることを指します。
「自分を正当化する」と「自分を肯定する」との違い
「自分を正当化する」の場合、他人の意見を受け入れることはありません。他人の目や評価を気にすることはあっても、自分が正しいと思い込み、自分の意見だけを押し通そうとします。このような言動を取る際、その人は「自分が正しいかどうか」にこだわることが多いはずです。
一方の「自分を肯定する」は、自分が自分自身を受け入れることを重視します。そのため、自分の意見を持ちながらも、他人の意見にも耳を傾けることができるでしょう。また、他人の目や評価をあまり気にせず、自分が正しいかどうかにもこだわりません。この点が、「自分を正当化する」との大きな違いと言えます。
自分を正当化する人とのつきあい方
職場や友人、知り合いの中に「自分を正当化する人」はいませんか? 自分が劣勢だと感じた途端に言動が変わり、言い訳をする、相手を責め立てるなどする人がいると、ストレスですよね。このような人とはどのようにつきあえばいいか、ポイントを紹介します。
正論をぶつけるのは逆効果のことも
自分を正当化しようと躍起になる場合、自分を守りたい、傷つきたくないという自己防衛心が働いています。これを繰り返してしまう人は、傷つくことを極端に恐れる臆病な性質なのかもしれません。また、必要以上に自尊心が高く、他人より劣る自分を受け入れられないということもありそうです。
このような状態になると、周りや他人のことを考えることはできません。真正面から正論をぶつけたところで、相手の心は頑なになるだけでしょう。そうなると、自分も疲れてしまいますよね。
まずは否定せずに話を聞く
相手が自分を正当化しはじめたら、まずは否定せずに話を聞くのがいいですね。一通り主張を聞いたら、話を切り替えるのが賢明です。
この際、相手の意見に対しては、否定も肯定もしない方がいいでしょう。否定すると相手はますますヒートアップするかもしれません。また、その場しのぎで相手の意見を肯定すると、勘違いされたり、押し切られたりする可能性があります。
何かしらのジャッジが必要な場合は、第三者に判断をゆだねるのがいいですね。その際は事実を正確に伝えなければなりません。経緯を時系列で説明できるようにしておきましょう。
適度に距離を保つ
自分を正当化することに長けている人や、それを繰り返す人とは適度に距離を保つのがいいですね。他人がそれを指摘しても、彼らが言動を変えることは難しいでしょう。必要以上に距離を縮める、密にかかわるということは避け、適度に距離を保ちながら、接することをおすすめします。
自分を正当化してしまうのは、誰もがやることです。他人から指摘されたり、自分でそれに気づいたりしたら、素直に非を認めましょう。人は失敗しながら成長しますが、自分のミスや非には気づきにくいもの。だからこそ、他人の意見を大切にしたいですね。
最後に
「正当化」とは、自分の言動などを、道理にかなっているように見せることを表します。自分の非や失敗を認めず自分は正しいと主張するような場合に使われますので、ポジティブなイメージはないかもしれません。自分を正当化するのは、誰もがやることです。だからこそ、自戒することや、他人の意見に耳を傾けることを大切にしたいですね。
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