「大義名分」とは?
日常会話の中で、四字熟語を使うことはあるでしょうか? あるとするなら、どのような場面なのだろうか?と改めて考えてみると直ぐには思い出せない。それほど、四字熟語は日常生活に溶け込んでいる言葉ということになりますが…。でも、とっさに「知ってる四字熟語を教えてください」と聞かれた時、あなたは、どれくらいの四字熟語を言えるでしょうか?
そんな身近でありながらも「聞き覚えはあるけが、正しく意味説明ができない四字熟語」を取り上げ紹介します。本記事では、「大義名分」の意味や使い方、関連する言葉などを解説いたします。
「大義名分」の意味
まずは、「大義名分」の意味を辞書で調べてみましょう。
たいぎ‐めいぶん【大義名分】
1 人として、また臣として守るべき道義と節度。「―にもとる」
2 行動のよりどころとなる道理。また、事を起こすにあたっての根拠。「―が立つ」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
少し分かりにくい説明のように思われます。そこで、「大義」と「名分」に分けて理解することにしましょう。改めて「大義」を辞書で調べてみます。
1 人として守るべき道義。国家・君主への忠義、親への孝行など。「―に殉じる」
2 重要な意義。大切な事柄。「自由平等の―を説く」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「名分」については、以下のように説明されています。
1 立場・身分に応じて守らなければならない道義上の分限。「―を立てる」「大義―」
2 事をするについての表向きの理由。名目。「機構改革を進めるには―に欠ける」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
こうして、辞書を引いて調べてみますと「大義」も「名分」も、深く大きな意味を持っていることがわかります。では「大義名分」を、どのように理解すればいいのでしょうか?
簡単に噛み砕いた理解をするならば「人として道理にかなった生き方」あるいは「人の言動における正義」のように解釈ができるのではないでしょうか?
「大義名分」の英語表現
英語で、「大義名分」を伝えたいときに使える表現を紹介します。「守るべき同義や節度」という意味を表したいのであれば、「moral law(人の道)」や「justice(正しさ・正義)」を使ってみてはいかがでしょうか。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
「大義名分」の使い方を例文を用いて紹介
ここからは、「大義名分」の使い方について紹介します。大義名分の意味を理解するうえでも、ぜひ参考にしてみてください。
1:「町に住む人々を助けるという大義名分を掲げ、彼は敵に立ち向かった」
「大義名分を掲げる」という表現は、しばしば用いられます。アニメや映画などのヒーロー・ヒロインもので、主人公キャラクターの大義名分は見どころポイント。例えば、地球に進攻しようとする宇宙人と戦うヒーローやヒロインにとっては、人々を守ることが役割であり、行動するうえでよりどころとなる道理になるわけです。
2:「食品廃棄を防ぐという大義名分を振りかざし、食品偽装を繰り返していた食品製造会社の社長が逮捕された」
この例文では、社会的な問題となっている「食品廃棄」を理由にして、違法行為を正当化しようとしている有様を表現しています。企業、団体、政治家などの不正が発覚すると、しばしば、彼らは実にエゴイスティックな「大義名分」を語るものです。
くれぐれも、誤った大義名分を振りかざすことはしたくないものです。
3:「彼女は“食事は美味しいのが一番”を大義名分にして、ダイエットを諦めてしまった」
「大義名分」は、どこか堅苦しさを感じさせる言葉です。しかし、この例文のようにお茶目でフランクな会話でも使うことができます。
4:「いくら喫煙が禁止されていない場所とはいえ、小さな子供の近くでタバコを吸うのは、大義名分にもとる」
「大義名分にもとる」という言い回しは、押さえておきたい言い回しです。「もとる」とは、「道義や自分の信念に反する」、「ゆがむ」という意味。漢字では「悖る」と書きます。この例文における「大義名分にもとる」は、「社会規範やマナー、一般的な常識に反する(子供にとって受動喫煙が害になるということ…)」という意味です。
「大義名分」に関連する言葉を紹介
「大義名分」は深い意味を持つだけに使い方が難しいですね。職場などの会話で「それって、大義名分にかなっているの?」なんて表現をしたら、雰囲気がかたくなってしまうかもしれません。
そこで、最後に「大義名分」と同じような意味を持っている言葉についても触れていきます。ぜひ言い換え表現として役立ててみてください。
1:道義
「道義」とは、「人が行くべき正しい道」のこと。道徳や道理とも言い換えられます。「彼女の行動は、彼の道義に反するものだった」のように用いることが可能です。
2:仁義
「仁義」という言葉もありますよ。「仁義」は、儒教道徳(中国の代表的な思想)の理念です。「仁義」の意味は、「道徳上の守るべき道」や「人として他者と関わるうえで欠かせない礼儀」。「これは私の仁義にもとるやり方です」のように使います。
3:口実
「口実」には、「言い逃れや言いがかりをするための材料」と「日常的に口にする言葉」という意味があります。
例えば、「風邪を口実に会社を休む」というように用いることが可能です。「風邪を大義名分に会社を休む」という言い回しは、ジョークのようなニュアンスを含みますが、「口実」は言い逃れや言い訳という点に重きが置かれる傾向にあります。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
最後に
堅苦しく難しそうな四字熟語「大義名分」。日常会話では、そうそう使う場面はなさそうですが、意味を正しく理解した上で使うならば「意外に使えるかも?」と思っていただけたのではないでしょうか?
あなたの職場において、先輩や上長へ意見を述べたり新しい提案をする場合には、しっかりとした「大義名分」を建てた上で申し出ることが必要でしょう。そうすれば、あなたの意見や提案が受け入れられる可能性が高まるだけでなく、きっと共感して応援もしてくれるのではないでしょうか?
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