「苦汁」という言葉は、「苦みのある汁」というだけの意味ではありません。文学やビジネスの場面で、過去の失敗を印象づける表現として使います。「苦汁をなめる」という慣用句とあわせて覚えておくと、つらい経験を表現するときに役立ちますよ。
この記事では、辞書の意味をもとに、「苦汁」の使い方や類語、英語での言い換え表現を紹介していきます。
「苦汁」の意味を読み解く
まずは、「苦汁」の読み方と意味から確認していきましょう。

「苦汁」の読み方と意味
「苦汁」の読み方は「くじゅう」です。辞書では、次のように説明されています。
く‐じゅう〔‐ジフ〕【苦汁】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
1 にがい汁。
2 つらい経験。「―を飲まされる」
「苦汁」は、「苦い汁」から派生して、つらい経験や苦しい思いを表す表現としても使います。
「苦汁をなめる」とはどういうこと?
つらい体験や悔しい思いを表現したいときに、ぴったりの「苦汁をなめる」という言葉。実際の例文を通して、その使い方をつかんでいきましょう。
「新人時代、何度も苦汁をなめた」
新人時代に、失敗が続いたり、上司から指導を受けたりと、苦い経験をしたことを、「苦汁をなめる」という言葉で表現しています。
例文には、くやしさや不安、戸惑いなど、当時のさまざまな感情がにじんでいるかのようですね。苦しかった様子が伝わる表現です。

「交渉で苦汁をなめる結果となった」
「苦汁をなめる」は、ビジネスシーンでも使える表現です。例えば、大きな契約を目前にして競合相手に奪われたときや、チームの提案が受け入れられずに却下されたときなどに、「苦汁をなめる」という表現を使います。「苦杯を喫する」ともいいますよ。
失敗に対しての悔しさだけでなく、痛恨の思いなど、複雑な感情を伝えることができます。
「苦汁」の言い換え表現をチェック|「苦汁」の類語
「苦汁」には、似た言葉がいくつかあります。ここでは、それぞれの言葉がどんな違いを持っているのか確認しながら、使い分けができるように整理していきましょう。
「辛酸(しんさん)」
「辛酸をなめる」も、苦労や苦難を表す表現です。「辛酸」は、文章の中で使われることが多いでしょう。
「苦境(くきょう)」
「苦境」は、困難な立場や状況そのものを指す言葉です。「苦境に立つ」「苦境に陥る」「苦境に直面する」などの形で使い、外的な環境の厳しさや追い込まれた状態に重点があります。
「試練(しれん)」
「試練」は、信念や力が試されるような困難を意味します。成長や、評価を受けるための過程で経験する困難として使う傾向があるといえるでしょう。

英語でも「苦い味」が通じる⁉「苦汁」の英語表現
英語にも「苦汁をなめる」に近い表現があります。つらい経験を「苦い味」に例える感覚は、文化が違っても共通するものがあるようです。
“taste the bitterness of life”
“taste the bitterness of life” は、「人生の苦さを味わう」「人生の苦しみを知る」という意味で使います。
ここで使われている “bitterness” は、「にがさ」だけでなく、「つらさ」や「苦しさ」など、心に残る痛みや負の感情を含みます。特に、努力が報われなかった経験や、悔いが残るような結果に対する苦しさを表現する際に使うことが多く、日本語の「苦汁」と重なる部分が多いといえるでしょう。
例文
“After the sudden failure of his business, he truly tasted the bitterness of life. ”
(突然の事業失敗のあと、彼はまさに人生の苦汁をなめることとなった。)
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
最後に
「苦汁」は、苦いものを味わうような、つらい経験を表す言葉です。つらい経験を「失敗」と呼ぶだけでは足りないとき、「苦汁をなめる」という言葉が補ってくれることがありますよ。日常で頻繁に使う言葉ではないかもしれませんが、知っておくことで言葉に表しにくい感情でも、表現ができるようになりますね。
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