目次Contents
お酒の席で、同じ話を何度も繰り返す人を見かけたことはありませんか? そんな場面でぴったりな表現「管を巻く」という言葉を紹介します。少し古い表現に感じるかもしれませんが、それだけ長く使い続けてきた表現であり、ちょっと苦笑しながらも共感してしまう場面があるかもしれません。
この記事では、「管を巻く」の意味や語源をたどりながら、今を生きる私たちにも通じる表現について紹介していきます。
「管を巻く」ってどういうこと? 読み方と意味をおさえよう
「管を巻く」という言葉は、お酒の席などでの状況が目に浮かぶかもしれませんね。実際にどういう意味なのか、あらためて確認しましょう。

「管を巻く」の読み方と意味
「管を巻く」は、「くだをまく」と読みます。辞書では、次のように説明されています。
くだを巻(ま)・く
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
とりとめのないことをしつこく言う。「酔って―・く」
[補説]管(くだ)3.の連想からとも、この管に糸を巻きつけるとき、ぶうぶう音を立てるところからともいわれる。
「管を巻く」とは、まとまりのない話をしつこく続けることを表します。特に、酔っているときに同じような話を繰り返したり、止まらなくなってしまう様子が当てはまります。
「管を巻く」の語源には諸説ある
「管を巻く」の由来には諸説あります。
一説によれば、「くだ(管)」という語から、管状のものを「巻く」動作を連想させたという説。また、酔っ払いが繰り返し同じ話をぐだぐだと続ける様子が、織機で行われる管巻(くだまき)作業や、機械がブーブーとうなる音と似ていることに由来するという見方もあります。
さらに「クダ」は「クダラノコト(百済の言葉)」を指すともされ、そこから「くだ=管」へと意味が転じ、「巻く」と結びついたという説もあります。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)
使いどころに注意?「管を巻く」の使い方と例文
「管を巻く」という言葉には、少し否定的な印象が含まれることがあります。特に、他人の話しぶりを指して使うときには、やや迷惑に感じる場面を描いている場合もあります。誤解されないためにも、使い方を把握しておきたいですね。
「昨夜の飲み会で、彼が延々と管を巻いていた」
「管を巻く」を上記の例文のように使うと、酔ってとりとめのない話を、しつこく続けていた様子が伝わります。話が終わる気配もなく、少し困った雰囲気だったのかもしれません。
「友人に会って飲んでいたら、つい失恋話で管を巻いてしまいました」
こちらは、自分自身が「管を巻いた」ことを振り返っている例です。お酒を飲むうちに感情が高まり、失恋の話を続けてしまったようです。あとから思い返して、反省と後悔をする気持ちが感じ取れますね。

「管を巻く」の使い方と注意点
「管を巻く」は、お酒の場面でよく使いますが、酔っていなくても、話が止まらず長引いてしまうときにも使うことがあります。どちらの場合でも、やや否定的な印象を与える言葉です。
本人に向かって直接言うと、気分を悪くさせてしまうこともあるので、親しい間柄であっても使い方には気をつけたいところです。そこにはいない第三者の様子を伝えるときや、自分の行動を振り返るような場面で使うのが無難かもしれませんね。
言い換え表現や、英語表現もチェック!
「管を巻く」に近い意味の言葉として、不満や弱音を口にする場面で使える表現を紹介します。意味を知っておくと、表現の幅が広がりますよ。似た表現の英語と共に、見ていきましょう。
言い換え表現|「愚痴(ぐち)をこぼす」
「愚痴をこぼす」は、言っても仕方のないことを人に話して、つらさや不満を吐き出すような場面で使います。「友人に愚痴をこぼす」などというように使いますね。
言い換え表現|「ぼやく」
「ぼやく」は、ぶつぶつと不平を言ったり、不満を口にしたりするときの表現です。「仕事がきついと、ぼやく」といった使い方をします。

英語表現|“blather”
“blather” は「無駄話」や「たわ言」という意味があり、「管を巻く」のように話が長くまとまりのない様子をよく表しています。
【例文】“Enough of your blather!”
(管を巻くのはもうよせ。)
“Enough of your blather!” は、「管を巻くのはもうやめて」と言いたい場面で使える表現です。“enough of your ~!” は慣用句で、「もうたくさんだ」という不満や制止の気持ちが込められていますよ。
酔って延々と話し続ける相手に、やんわりとストップをかけたいときに使えます。
参考:「プログレッシブ和英中辞典」(小学館)
「管を巻く」と紛らわしい言葉にも注意
「管を巻く」という表現には似た表記や、似た音を持つ言葉があります。間違った使い方をしないよう、ここで整理しておきましょう。
間違えやすい言葉|「撒く(まく)」
「管を巻く」と間違いやすい言葉に「撒く」があります。「撒く」は、広い範囲に「散らす」、「散布する」、「ばらまく」という意味の言葉です。
「とりとめなく話す」という意味の「管を巻く」とはまったく異なり、「管を撒く」と書くのは誤りですから、注意してください。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
間違えやすい言葉|「巻き管」
「巻き管」という言葉も別物です。こちらは楽器や配管に関する専門用語で、例えばフルートの部品や配管部材の名称として使います。
「管を巻く」とは意味も使い方も違うため、混同しないよう気をつけましょう。
「管を巻く」と「くだ巻いてる」は同じ意味
「管を巻く」は、「くだ巻いてる」といった形でくだけた言い方をされることもあります。いずれも、酔ってしつこく話すという意味に変わりはありません。
このように、話し言葉やSNSでは、省略形もよく見聞きしますよ。
最後に
「管を巻く」は、酔ったときに話が止まらなくなる様子を表す表現です。やや古い言い回しですが、今でも耳にすることがあります。言葉の引き出しが増えると、表現の幅もぐっと広がっていきますね。つい自分がしつこく愚痴ってしまったときには、「ちょっと管を巻いちゃったね、ごめんね」と伝えると、和やかな謝り方ができますね。
TOP画像/(c) Adobe Stock