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がんばったつもりが、「そこまではいらなかったかも…」と後から気づくことって、ありますよね。そんなやりすぎてしまった場面をぴたりと表すのが、「屋上屋を架す」という四字熟語です。
この記事では、「屋上屋を架す」の読み方や意味、語源から使い方まで、日常にも活かせるように紹介していきます。
「屋上屋を架す」の意味とは?
「屋」の字が二つ重なる「屋上屋を架す」。ちょっと不思議な字面の四文字熟語ですから、読み方に迷う人も多いのではないでしょうか? 最初に読み方を確認し、意味と由来を紹介していきます。

「屋上屋を架す」の読み方と意味
「屋上屋を架す」は、「おくじょうおくをかす」と読みます。辞書では、次のように説明されています。
屋上(おくじょう)屋(おく)を架(か)す
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
屋根の上にさらに屋根を架ける。無駄なことをするたとえ。屋下に屋を架す。
「屋上屋を架す」とは、よかれと思って加えたことが、かえって意味がなかったり、逆効果になってしまうことを意味する言葉です。
なお、「屋上、屋を架す」というように句読点を入れるかどうか迷う人もいるかもしれませんが、辞書では句読点を入れずに「屋上屋を架す」と表記されています。
「屋上屋を架す」の語源
「屋上屋を架す」という言葉は、文字通り「屋根の上にもうひとつ屋根をかける」という、現実離れした建築のイメージが基となっています。見た目も不格好で、建物としての意味もありませんよね。
そこから、「余計なことをして、かえって無駄になる」というたとえとして使われるようになりました。
例文でわかる「屋上屋を架す」の使い方
「屋上屋を架す」は、どんな場面で使えるのでしょうか? ここでは、やりすぎが裏目に出た瞬間をイメージしながら、実際の例文を通して使い方をつかんでいきましょう。
「その説明、くどすぎて屋上屋を架すようなものだよ」
伝えたい内容は十分言ったのに、さらに言葉を重ねてしまったことで、かえって聞き手に負担を与えてしまった、という例です。まじめで丁寧な人ほど、こうした「説明のしすぎ」に心当たりがあるかもしれませんね。
「この機能は既存のアプリにも備わっているから、あえて追加するのは屋上屋を架すような設計だよ」
すでに存在している機能を、あえて重ねて実装しようとすることの無意味さを表現しています。
「そんなに細かく注意するなんて、屋上屋を架すようなものじゃない?」
すでに十分注意されたのに、さらに細かく指摘することを無駄に感じている場面です。親しい会話の中で「やりすぎ感」や「過剰さ」をたしなめるニュアンスがあります。

「屋上屋を架す」の類語|過剰さを表現する言葉とは?
「屋上屋を架す」と似た表現はいくつかありますが、少しずつ意味や使いどころが違います。
どれも「やりすぎ」をたとえた言葉ですが、それぞれのニュアンスを知っておくと、言葉の選び方に深みが出ますよ。
「蛇足(だそく)」
「蛇足」という言葉は、中国の故事に由来しています。
昔、楚(そ)の国で、蛇の絵を描く速さを競ったときのこと。最初に描き終えた人が、勝ちを確信して足まで描き足してしまい、負けてしまったエピソードが基になっています。
この故事から、「すでに完成しているものに、余計なものを加えて台無しにしてしまう」ことを「蛇足」と呼ぶようになりました。
【例文】「説明はすでに十分だったので、最後のスライドは蛇足に感じられました」
「雪上霜を加える(せつじょうしもをくわえる)」
「雪上霜を加える」は、雪が積もった上にさらに霜が降りるように、すでに十分なものに、同じ性質のものを重ねて加える行為を指します。
【例文】「注意喚起のメールを3通も送るのは、雪上霜を加えるようなものだよ」
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
「屋上屋を架す」の対義語|的確さを表現する言葉
「屋上屋を架す」の反対にあるのは、本当に必要なものを見極めて、的確な行動をとる姿勢です。ここでは、そうした考え方を表す言葉を見ていきましょう。

「不可欠(ふかけつ)」
「不可欠」は、「なくてはならないこと」を指します。
「屋上屋を架す」が無駄を表すのに対し、「不可欠」は必要なものを示す言葉です。
【例文】「育児と仕事を両立するためには、周囲の理解が不可欠だと感じます」
「要を得る(ようをえる)」
「要を得る」は、重要な点を押さえていることを意味する言葉です。要領を得ていて、無駄のないさまは、ビジネスシーンでも必要なものでしょう。
【例文】「この本のタイトルは内容をよく表していて、要を得ている」
最後に
「屋上屋を架す」は、まじめさや丁寧さが裏目に出てしまったときに、ふと思い出したい言葉です。がんばったつもりなのに、かえって伝わりづらくなってしまった… そんな経験は、きっと誰にでもありますよね。できることなら、無駄は省いて、本当に意味のある仕事に力を注ぎたいものです。
大切なのは、ただ削ることではなく、必要なものを見極めることかもしれません。「屋上屋を架す」が教えてくれる“引き算の美学”を、日々の中に取り入れてみてくださいね。
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