皆さんの職場に、後輩への態度が高圧的だったり、見下した言い方をしている人はいませんか? 相手に一言忠告したいとは思っても、ストレートに伝えにくい… そんな風に思うこともあるのではないでしょうか。このようなケースでの、遠回しな表現として使えるのが「一寸の虫にも五分の魂」ということわざです。
そこで本記事では「一寸の虫にも五分の魂」の意味や使い方、類語を解説します。実際にどのように使えばいいのか、例文で確認していきましょう。
「一寸の虫にも五分の魂」の意味
「一寸(いっすん)の虫にも五分(ごぶ)の魂」の意味を、辞書で見ていきましょう。
どんな弱小なものにも、それ相応の意地や考えがあって、ばかにしてはいけないということのたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
どんなに小さく弱い者でも、意地や考えを持っているのだから、ばかにしてはいけないという意味のことわざです。自分より弱い立場の人間を見下してはいけないという戒めが込められていますね。ちなみに、「一寸」とは尺貫法の長さの単位のことで、約3cmのこと。「五分」は、一寸の半分である約1.5cmです。
どんな小さな虫にも生きているものには、それ相応の命があるということから転じて、どんなに弱く小さな者でも、その半分には、意地や誇りなどの精神が詰まっているのだから、決して侮ってはならないという教訓が込められています。
使い方を例文でチェック!
実際に、「一寸の虫にも五分の魂」はどのような場面で使われるのでしょうか? 主な使い方を例文で見ていきましょう。
1:一寸の虫にも五分の魂と言いますし、後輩だからといって侮っていると、痛い目を見るかもしれませんよ。
目下の人を馬鹿にしている人に対する忠告として、「一寸の虫にも五分の魂」を使っています。自分より後に入ってきた後輩だからといって油断していると、いつの間にか実力を追い越されるかもしれませんよ、という意味ですね。
2:一寸の虫にも五分の魂という言葉もありますし、自分のチームより格下の相手ではありますが、油断しないようにしましょう。
試合前の言葉として、このように使うこともできます。勝負の世界では何が起きるかわかりません。ランキング上では格下のチームであっても、相性や当日のコンディションなどによっては完敗してしまう可能性も。どんな相手であっても、気を抜かず試合に臨もうというメッセージですね。
使う時の注意点
「一寸の虫にも五分の魂」は、相手のことを「小さな虫」としてたとえるため、場合によっては失礼に当たることも。例えば、目上の人のことをたとえたり、特定の人物を指して使うことは避けた方が無難です。
「後輩であっても、見下してはいけない」とかばったつもりでも、言い方によっては相手が気を悪くすることもありえます。使う際は、相手に対して失礼になっていないかどうか注意しましょう。
類語や言い換え表現は?
「一寸の虫にも五分の魂」の他にも、小さく力の弱い者でも、意地や誇りがあるという意味を持つことわざがいくつかあります。言葉の豆知識として覚えてみてはいかがでしょうか?
1:蛞蝓にも角がある
「蛞蝓にも角がある」は「なめくじにもつのがある」と読みます。意味は以下の通りです。
小さくて弱い者でもそれ相応の威厳を示すものをもっている。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「蛞蝓にも角がある」は、どんなに小さく弱い者でも、それなりの威厳を持っているという意味。「一寸の虫にも五分の魂」とよく似ており、こちらでは虫の代わりに蛞蝓にたとえられていますね。角と呼ばれているものは、蛞蝓の頭についている触覚のことで、匂いを嗅いだり振動を感じるセンサーの役割をしているそうです。
(例文)
・蛞蝓にも角があるという言葉もあるし、年下を馬鹿にするのはよくないよ。
・蛞蝓にも角があると言いますが、私にもそれなりのポリシーがあります。
2:瘦せ腕にも骨
「瘦せ腕にも骨」は、「やせうでにもほね」と読みます。どのような意味なのでしょうか?
弱小で無力な者にもそれ相応の意地や誇りがあるというたとえ。弱いからといって一概には侮りがたいことのたとえ。一寸の虫にも五分の魂。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
見るからにか弱い者でも、それなりの意地や誇りがあるから、侮ってはいけないという意味ですね。痩せてか細い腕にも、硬い骨が通っていることから、このようなことわざとして用いられるようになったのかもしれませんね。
(例文)
・瘦せ腕にも骨というように、妹は意外と根性がある。
・弟のことを馬鹿にしていたら、テストの点数で負けてしまった。まさに瘦せ腕にも骨だ。
3:小糠にも根性
「小糠にも根性」は、「こぬかにもこんじょう」と読みます。「小糠のようなつまらないものでも根性はある」という意味です。「小糠」とは、玄米を精白するときに、表皮が細かく砕けてできる粉のことで、一般的には「ぬか」と言います。
飼料や肥料などに用いたり、江戸時代には布袋に入れて入浴や洗顔の際に利用したそう。捨ててしまうような、とるに足りないものでも、十分利用価値があるということで、このようなことわざができたのかもしれませんね。
(例文)
・小糠にも根性というし、後輩の力は馬鹿にできないよ。
・小糠にも根性というように粘り強さが取り柄です。
最後に
「一寸の虫にも五分の魂」とは、「どんな弱小なものにも、それ相応の意地や考えがあって、ばかにしてはいけないということのたとえ」。基本的には弱い立場のものを庇ったり、馬鹿にしている人に対して忠告として用いる言葉ではありますが、誤解を与えてしまいやすい表現でもあります。時と場合に応じて、紹介した言い換え表現などを使い分けてみてくださいね。
TOP画像/(c) Adobe Stock