「致します」の意味とは?
「よろしくお願いいいたします」「確認いたします」など、ビジネスシーンでは頻出の「いたします」という言葉。「致します」と「いたします」、どちらがいいか迷ったことはありませんか? 今回は、「致します」と「いたします」のそれぞれの意味や違い、使い方を解説します。
意味
「致します」は「致す」と「ます」に分解できます。まずは、「致す」の意味を辞書で確認してみましょう。
[動サ五(四)]《「いたる」に対して「いたらせる」の意。敬語として用いられるのは中世以降》
1 届くようにする。至らせる。「遠い祖国に思いを―・す」
2 そのことがもとで、ある結果、特によくない結果を引き起こす。ある状態に立ち至らせる。「私の不明の―・すところ」
3 全力で事を行う。心を尽くす。
「遠く京師を離れていたので、玄機がために力を―・すことができなかった」〈鴎外・魚玄機〉
4
(ア)「する」の謙譲語。自己側の動作を低めて言ったり、改まった気持ちで言ったりすることで聞き手に対する敬意を表す。多く「いたします」の形で用いる。「努力を―・す所存です」「御指示どおりに―・します」「私から話を―・します」
(イ)「する」の丁寧語。多く「いたします」の形で用いる。「いい香りが―・します」「あと数分―・しますと重大発表が行われます」
「勢の良い扇の音が、はたはたと―・しますと」〈芥川・邪宗門〉
(ウ)「する」の尊大な言い方。話し手が相手の行為について、自分を高い位置に置いて言う。「何を―・しておる。早く―・せ」「無用の殺生を―・すでないぞ」
5 命を差し出す。身をささげる。
「危ふきを見て命を―・す処、兼ねて思ひ定め候ひけるかに依りて」〈太平記・二六〉
6 (補助動詞)動詞の連用形やこれに「お」を付けた形、または、漢語サ変動詞の語幹やこれに「御(ご)」を付けた形などに付く。
(ア)補助動詞「する」の謙譲語・丁寧語。多く「いたします」の形で用いる。「お静かにお願い―・します」「御一緒―・しましょう」
(イ)補助動詞「する」の尊大な言い方。「即刻、返答―・せ」
[補説]平安時代は、主として漢文訓読に用いられた。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「する」の謙譲語や丁寧語として使えることがわかりました。
他にも、「そこまで届くようにする、至らせる」という意味や「全力で事を行う。心を尽くす」という意味を持っていることがわかりました。単体でも動詞として使えるわけですね。
「致します」と「いたします」の違いとは?
「致します」は、ひらがなで「いたします」と書くことも多いですね。メール文書を作成する際に「これはどちらを使ったらいいのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか? 正解は、どちらを使っても間違いではありません。
ただし、公用文において「〜いたします」などの補助動詞は、基本的にひらがなで表記するよう示されています。ですから、官公庁や銀行などとお付き合いのある会社においては、補助動詞「〜いたします」を使うときはひらがなにすることをおすすめします。
「致します」の使い方を例文でチェック!
先述の通り、「致します」は「する」の丁寧語で、単体でも意味が伝わる動詞です。どのように使われるのか、例文で見ていきましょう。
こちらの書類の管理に関しては、私が致します。
「私がします」ということを丁寧に表現した言い方です。「私がいたします」とひらがなにしてもOKです。
会場の準備については、事前の打ち合わせ通りに致します。
あなたの言う通りにはできないと断る場合は、「おっしゃるようには致しかねます」と言いますので、合わせて覚えてみてください。
店内から、甘くていい香りが致します。
「致します」を語尾につけることで、相手への敬意が伝えられますね。
類語や言い換え表現とは?
「致します」「いたします」に類似した表現に「申し上げます」「させていただきます」などがあります。いずれも似た意味をもつ丁寧な表現なので、意味を混同している方も多いのではないでしょうか? 正しい意味を理解し、自信を持って使い分けてみましょう。
◆申し上げます
「申し上げます」は、「言う」の謙譲語「申し上げる」に丁寧語「ます」がついた言葉。「言わせていただきます」を丁寧に表現した言葉です。「お礼申し上げます」「感謝申し上げます」というように使われ、「いたします」よりさらにかしこまった響きがありますね。目上の相手やクライアントに「うやうやしく言う」ニュアンスが含まれているため、敬意を伝えたいときに最適な表現といえるでしょう。
〈例文〉
・お忙しい中ご協力いただき、感謝申し上げます。
・先日の発注ミスについて、深くお詫び申し上げます。
◆させていただきます
「させていただきます」は、「〜します」「〜しようと思っています」という意味で、相手が承諾してくれることを前提にした表現です。丁寧な言葉ではありますが、シチュエーションによっては、押し付けがましく受け取られてしまう可能性もあるため、注意が必要です。
〈例文〉
・私が司会を担当させていただきます。
・今週末はお休みさせていただきます。
最後に
「致します」と「いたします」の使い分け方から類語まで解説しました。どちらを使っても問題のないことがわかりましたね。
ビジネスパーソンとしては、類語や言い換え表現も覚えておき、シーンによって使い分けたいですね。
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