目次Contents
この記事のサマリー
・「目が据わる」は「目が座る」ではなく、「据わる」が正解。
・目の焦点が動かない状態を表します。
・飲酒による酔いだけでなく、怒りから「目が据わる」状態になることがあります。
「目が据わる」とは、どんな状態を指す言葉なのでしょうか? 飲み会や会議で相手の視線が動かず、「怒っているのかな…?」と感じた経験がある人もいるかもしれません。
この記事では、「目が据わる」の正しい意味と漢字表記を辞書に基づいて整理。実務で使える例文や、使う場面での注意点もあわせて確認します。
「目が据わる」を辞書で確認
最初に、辞書に記載されている、「目が据わる」の意味を確認しましょう。
「目が据わる」の正しい意味
辞書では、以下のように説明されています。
目(め)が据(す)わ・る
酔ったり怒ったりして、瞳(ひとみ)がじっと一点を見つめたまま動かなくなる。「悪酔いして―・る」
[補説]「目が座る」と書くのは誤り。
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
体の状態や、感情によって視線が固定していることを指す表現が、「目が据わる」です。
「据わる」の定義
『デジタル大辞泉』(小学館)によると、「据わる」は「しっかりと定まる」という意味を持つ動詞です。したがって、「目が据わる」は、視線が動かず、一点を凝視した状態を示します。
会話などでは「酔いがまわり、目が据わっていた」などと用いますね。
「目が座る」は誤り? 混同ポイント
表記は「据わる」が正しく、「座る」ではありません。SNSやメールなどでは、変換ミスが起こりやすいため、注意したいポイントです。
「座る」は「腰を下ろす」「ある地位に就く」という意味の言葉で、視線や感情の状態を表す場面で用いるのは誤りです。

「目が据わる」の類語・対義語の整理
「目が据わる」に似た言葉はいくつかありますが、それぞれ意味が異なります。関連する言葉と反対の意味を持つ語をあわせて整理しましょう。
類語|「睨み据える(にらみすえる)」
「睨み据える」は、視線を動かさずに相手を強くにらむことを表します。怒りや威圧の感情を含むことが多く、「目が据わる」よりも意志的で攻撃的な表現です。
例文:「彼女は上司を睨み据えて、一歩も引かなかった」
類語|「酔眼(すいがん)」
酒に酔ったときの目のことを指します。ただし、こちらは、目の焦点が定まらないことを指す点が「目が据わる」とは異なります。
例文:「したたか酒を飲んで、酔眼朦朧(すいがんもうろう)としている」
類語|「虎になる」
酒に酔ったことで怖いもの知らずになることを「虎になる」といいます。視線のことは含みませんが、酒による変化を指します。
例文:「彼は酒を飲むと虎になるから、上司とは席を離しておこう」
対義語|「目が泳ぐ」
「目が据わる」と反対の意味を持つのが「目が泳ぐ」です。これは、動揺や不安、焦りや緊張から視線が定まらずに揺れ動く状態を指します。
例文:「恋人から昨夜の出来事について詰問され、目が泳いだ」

「目が据わる」の使い方と言い換え表現
「目が据わる」を使う際は、相手の感情を不用意に決めつけることは避け、状況を客観的に伝えることが大切です。例文と、言い換え表現を紹介します。
「疲れているのかな? 少し目が据わって見えるよ」
強い言葉にならないよう、相手を気づかうトーンで使えば、柔らかく伝えることができます。
相手への心配を伝えながらも、角の立たない言い回しにするには、「一点を見つめている」「視線が定まっている」など、状況をそのまま描写する表現が効果的です。
例文:「さっきから一点を見つめているけど、何か考えごと?」
「厳しい質問が続く中、彼の目が据わり、会議室の空気が一瞬張り詰めた」
ビジネスの場面では、相手の感情を推測して「怖い」「怒っている」などと主観的に判断せず、客観的な観察に徹することが大切です。
例えば、会議で緊張のあまり一点を見つめて固まってしまう場面に出くわしたとき、「怒っているのかな?」と思った経験がある人もいるのではないでしょうか? けれども、よく見ると単に質問に集中しているだけだった… そんなことも少なくありません。
状況を淡々と伝え、信頼性の高い記述にするのなら、「真剣に資料を見つめていた」などの表現に言い換えるといいでしょう。間違っても、からかうような表現は避けたいものです。
例文:「プレゼン中、彼女は真剣に資料を見つめていた」
「昨晩は飲みすぎて、目が据わっていたらしい。反省…!」
SNSでは、自分の体験をユーモラスに描くことで、親しみやすく伝わります。他人を評する形ではなく、軽い自虐や共感を誘うトーンなら、誰も傷つけませんね。
「目が据わる」の英語表現
「目が据わる」の英語表現では、「視線がどう見えるか」を描写する表現があります。ここでは、辞書に基づいた代表的な語を紹介します。
“glassy”
“glassy”は、「生気のない」「どんよりとした」という意味の形容詞です。目の焦点が合わず、動きのない様子を指すときに使い、「目が据わる」状態の英訳としてよく用います。
例文:“She got a glassy look in her eyes.”
(彼女の目が据わってきた。)
“fixed”
“fixed”は、「固定された」「動かない」という意味を持つ形容詞です。視線や表情が一点に止まって動かない状態を表すときに使います。
例文
“Her eyes took on a fixed stare.”
(彼女の目が据わってきた。)
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)

よくある質問(FAQ)
ここでは、「目が据わる」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「目が据わる」は怒っている合図ですか?
A. そうとは限りません。
怒っている場合もありますが、酔いなどの理由で視線が止まることがあります。相手の感情を決めつけることは避け、状況全体を見ながら判断するのがいいでしょう。
Q2. 「目が座る」と書いても通じますか?
A. 「目が座る」は誤用です。正しくは「目が据わる」と書きます。
Q3. 「目が据わる」はビジネスシーンや、人を形容するときに使えますか?
A. 注意が必要です。
「目が据わる」は酔いや怒りなどの状態を表すため、人の印象を評する言葉として使うと失礼に受け取られるおそれがあります。
最後に
「目が据わる」とは、どんな状態なのか理解できましたか? 「目が据わる」ことがない人からすれば、目つきが変わらず何かを凝視している姿は、少し不気味に感じるもの。何かに怒っている場合もあれば、酔っ払ってボーッとしているだけ、ということもありますので、心配な場合は相手に確認してみるといいでしょう。ただ眠かっただけ、という答えが返ってきて、ほっとするかもしれませんよ。
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