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「立つ鳥、跡を濁さず」の意味とは?
「立つ鳥、跡を濁さず」は「立ち去る者は、自分のいた跡を見苦しくないようにきちんと始末しておくべきだ」というたとえ。また、引き際が潔く、さわやかであることのたとえでもあります。
「跡を濁す」という言葉は、立ち去ったあとに醜い痕跡を残すという意味。関係のなくなったあとに不名誉な過失や悪いうわさなどを残すことを言います。
読み方
「立つ鳥、跡を濁さず」は「たつとり、あとをにごさず」と読み、「立つ鳥、跡を汚さず(けがさず)」という言い方もあります。
言葉の由来
「立つ鳥、跡を濁さず」という言葉は、水鳥に由来。水鳥は、主に池や湖の水辺に生息しており、そこである程度生活すると、また違う湖や池に飛び立ちます。その際に、水面が濁っておらず、元のように美しかったことが「立つ鳥跡を濁さず」の由来とされているのです。
16世紀末から17世紀初めあたりに書かれた『北条氏直時分諺留』では、「鷺はたちての跡濁さぬ」との記載があり、水鳥の中でも鷺(さぎ)がモチーフにされたのではないかと考えられています。
使い方を例文でチェック
「立つ鳥、跡を濁さず」は、仕事や旅先、恋愛など幅広い場面で使うことができることわざです。以下では、シチュエーションごとに簡単な例文を載せています。ぜひチェックして使い分けられるようにしていきましょう。
1:小学生の頃、修学旅行で宿を借りる際には、必ず教員に立つ鳥、跡を濁さずの精神を説かれたものだ。
旅先での礼儀としてよく使われる「立つ鳥跡を濁さず」。滞在先での後始末をきちんとすることや、貸してもらったものを返す時に元通りにして戻すという意味を含んでいます。学生時代にこのことわざを学んだという人も多いのではないでしょうか。社会に出るようになってからもこの精神は大切にしていきたいですね。
2:彼は退職することになったが、最後まで業務や引き継ぎに丁寧に取り組む姿勢は、まさに立つ鳥、跡を濁さずである。
「立つ鳥、跡を濁さず」は、ビジネスシーンにおける退職や転勤の際にも使われます。職場が変わるからといって業務や引き継ぎをおろそかにするなど、人間関係でもめ事を残すことは、「立つ鳥、跡を濁しまくり」とも言われ迷惑行為にあたります。こころよく新たなスタートを切れるように、「去り際は美しく」を心がけましょう。
3:好きな人に振られたからといって、その子のことを悪く言うなんて、まさにあとは野となれ山となれだね。立つ鳥、跡を濁さずというように潔く切り替えるべきだよ。
こちらは恋愛における場面です。「立つ鳥、跡を濁さず」と「あとは野となれ山となれ」は対義語として使われます。「あとは野となれ山となれ」とは、自分のすべきことが全て終わればあとはどうなっても構わないという精神のこと。目先のことだけでなく、「立つ鳥、跡を濁さず」のように、後先まで考える余裕を持ちたいものです。
「立つ鳥跡を濁さず」を四字熟語で表すと?
「立つ鳥、跡を濁さず」は四字熟語で言い換えると「原状回復」となります。「原状回復」とは、契約解除などの多少法律的な意味が含まれていますが、大まかには現在の状態を元の状態に戻すという意味です。旅先の後始末という場面には、こちらの「原状回復」が同義で使えます。ただし、退職時や恋愛におけるシーンでは、少しずれた表現になってしまうので気をつけましょう。
類語にはどのようなものがある?
「立つ鳥、跡を濁さず」には以下のような類義語があります。こちらもチェックしてみて下さい。
1:大鳥たってあとを濁すな(おおとりたってあとをにごすな)
大物は身を引いた時に、その跡が見苦しいようではいけないという意味です。「あの俳優と電車で遭遇した時、席を譲っていた姿を見て、まさに大鳥たってあとを濁すなとはこのことだなと思った」というように使います。
2:後腐れがない(あとくされがない)
物事が終わったあとに、なんの問題も残らずすっきりとしている状態を指します。「立つ鳥、跡を濁さず」の引き際が潔いという点と同義です。「あの二人は、別れた後でも後腐れがない関係である」とすると、二人の間にもめ事もなく、さっぱりとした関係を表すことができます。
対義語にはどのようなものがある?
さて、類義語をいくつか挙げてみましたが、ここからは「立つ鳥、跡を濁さず」の対義語について解説していきます。迷惑行為を表す言葉もあるので、使い方に気を付けましょう。
1:あとは野となれ山となれ(あとはのとなれやまとなれ)
先ほどの例文でも取り上げたこの言葉。目先のことだけ済んでしまえば、そのあとはどうなっても良いという意味です。あの有名な近松門左衛門の浄瑠璃の作品が語源となったと言われています。
「もうこの職場を辞めるからといって、仕事を投げやりにする彼の、あとは野となれ山となれという態度は気に食わない」
このように同じ退職のシーンで使うにしても、「立つ鳥、跡を濁さず」とは全く反対の意味で使われます。
2:後足で砂をかける(あとあしですなをかける)
お世話になった人の恩を裏切り、さらに去り際に迷惑をかけてかえりみないたとえ。無礼な態度を非難する意味が含まれており、類義語には「飼い犬に手を噛まれる」が挙げられます。「三年間お世話になった先生に対して、後足で砂をかけるような態度を取るなんて考えられない」というように使います。
3:旅の恥はかき捨て(たびのはじはかきすて)
旅先では気が抜けて、いつもならしない恥さらしな行動をしてしまうという意味です。知り合いもいなければ、そこに長く居留まるわけでもないので、いつもなら自制していることも気にしなくなってしまいます。「旅の恥はかき捨てというように、今回の旅行は朝まで飲み明かした」というように使います。
4:大水の出たあとのよう(おおみずのでたあとのよう)
「大水の引いたあとのよう」や「大水のあとのよう」と言うこともあります。洪水が去ったあとのように、そこら中が破壊され荒らされている状態を表した言葉です。「兄弟喧嘩のあと部屋を見に行くとまさに大水の出たあとのようだった」のように、散らかった様子を表す際に使います。
最後に
「立つ鳥、跡を濁さず」は主に去り際に使われる言葉です。新たなスタートを気持ちよく切るためには、まず身の回りの物事を綺麗に片付けてしっかり区切りをつけること。このことわざを意識しなくとも、基本的な礼儀として当たり前に行動できるとよいですね。
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