「触らぬ神に祟りなし」とは
「触らぬ神に祟りなし」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。ビジネスシーンでも使われる、注意を促す際のたとえです。しかし、正しい意味や使い方を調べたことがある人は、それほどいないかもしれません。
昔から言い伝えられている言葉ですから、正しい意味を把握しておきたいですね。似ている言葉も一緒にチェックしましょう。
意味と読み方
「触らぬ神に祟りなし」を辞書で調べてみました。
▷触(さわ)らぬ神(かみ)に祟(たた)りなし
読み方:さわらぬかみにたたりなし
その物事にかかわりさえもたなければ、災いを招くことはない。めんどうなことによけいな手出しをするな、というたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
面倒なことに発展しそうなことがあっても、それにかかわることがなければ、トラブルに巻き込まれることはないということを表す言葉です。
揉め事の仲裁に入ったけれど、収拾がつかなくなって大きなトラブルに発展してしまうということは少なくありません。お節介な人や、頼まれていないのに口出しをしたがる人を戒める際に使われることもあります。
「触らぬ神に祟りなし」の使い方
「触らぬ神に祟りなし」は、日常だけでなくビジネスシーンなどでも使われる言葉です。どのような使い方をするかチェックしていきましょう。まずは使い方の特徴を紹介します。
使い方の特徴
「触らぬ神に祟りなし」は、「〜と言うように」「〜という言葉もあるように」のような表現をつけて使うことが多いでしょう。
この言葉が登場するのは、トラブル回避の時かもしれません。いざこざに巻き込まれそうになった時や、余計なトラブルに遭遇した時に、「かかわりを持つな」「手出しをするな」と言う意味で用います。
また、自戒の意味を込め、自らに言い聞かせる際に使うこともあるでしょう。いずれの場合も、トラブルや災いを避けるために使う言葉です。
例文を紹介
ここからは例文を紹介します。参考にしてくださいね。
《例文1》部長にプロジェクトの相談をしたいと思っていたが、別のトラブルが発生したようだね。「触らぬ神に祟りなし」で、相談は後日にしよう
ビジネスシーンに限らず、話を持ちかけるタイミングって重要ですよね。相手の状況をよく見極めることも、トラブル回避になるでしょう。
《例文2》親戚同士の揉め事に母が口出ししようとしたので、「触らぬ神に祟りなしだよ」と伝えた
家族や親戚に限らず、人間関係で揉めるというのは、よくあることでしょう。事情がわからないままかかわると、さらに揉めてしまうということも。状況によっては、あえて手出しをしないことも必要かもしれませんね。
「触らぬ神に祟りなし」と似ている言葉
ここからは、「触らぬ神に祟りなし」と似ている言葉を紹介します。
「君子危うきに近寄らず」
「君子(くんし)危うきに近寄らず」とは、君子(学識と人格ともにすぐれた立派な人)はいつも身を慎んでおり、危険なことはおかさないという意味の言葉。
慎重に行動することや、自ら危険に近づかないよう気をつけることを促す際に使うことが多いでしょう。最近では、自分が苦手とすることを避ける際に、冗談まじりで用いることもあります。
《例文》知人に儲け話を持ちかけられたが、「君子危うきに近寄らず」で断ることにした
「触り三百」
「触り三百」は、ちょっと触ったばかりで、銭三百文の損をすることという意。中途半端にかかわったばかりに、損害を受けることのたとえとして使われています。銭三百文とは、江戸時代のお金の単位。現在の貨幣価値だと数千円程度になるでしょう。「さわりさんびゃく」と読みます。
《例文》先輩が止めてくれたのに口出ししてしまい、やはりトラブルになった。「触り三百」とはこのことだ。
「寝た子を起こす」
「寝た子を起こす」とは、静かに収まっている物事に余計な手出しをして、問題を起こすことのたとえです。読み方は「ねたこをおこす」。いったん収束している問題を蒸し返し、再度問題をもつれさせるといった場合に使われています。
《例文》今のタイミングでその話に触れるのは、「寝た子を起こす」ようなものだよ
「神」を含むフレーズを紹介
ここからは「神」を含むフレーズを紹介します。5つピックアップしましたので、チェックしてくださいね。
「神の正面仏のま尻」
「神棚は正面の高い所に、仏壇は陰に設けよ」という意味の「神の正面仏のま尻」。「かみのしょうめんほとけのましり」と読みます。
「神は正直の頭に宿る」
神は、正直な人を守り助けてくれるということを表すのが「神は正直の頭に宿る」。「かみはしょうじきのこうべにやどる」と読みます。正直に生きることの大切さを説く言葉と言えるでしょう。「正直の頭(こうべ)に神宿る」と言うこともあります。
「神は人の敬うによって威を増す」
「神は人の敬うによって威を増す」とは、神は人が尊敬することによって、ますます威光を増すという意味。「かみはひとのうやまうによっていをます」と読みます。
威光とは、人をおそれさせ、従わせる力のこと。いかなる神様も、人々の敬う気持ちを受けてこそ、ご威光を輝かせることができるという意味です。
「神は非礼を受けず」
礼儀に外れたことを願って祭っても、神は受け入れないということを表す「神は非礼を受けず」。「かみはひれいをうけず」と読みます。
邪念のあるようなお願いをしても、神様はそれを叶えてくれないということを意味します。神様に願いを届けたい場合は、正しいやり方で真っ当なお願いをしなければならないということがわかりますね。
「神も仏もない」
慈悲深い神も仏も存在しないという意味の、「神も仏もない」。世の中の無情を嘆き悲しむ際に用いられます。不運や不幸が連続して生じた時や、予想もしない辛い出来事が起こった場合などに、つらさや嘆きの気持ちをたとえる言葉として使うことが多いでしょう。
最後に
「触らぬ神に祟りなし」について、意味や使い方、似ている言葉などを紹介しました。「触らぬ神に祟りなし」は、注意を促す戒めの言葉としてよく用いられています。昔からある言葉を調べると、新たに知ることがあるかもしれません。意味を再チェックしてみるのもいいですね。
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